第18話 その時歴史が止まった
「ミイナ、四百年前に人魔大戦が起こったことは知ってるな?」
「もちろんです!」
今から四百年前、人魔大戦と呼ばれる戦争が起こった。魔王フランシスが魔物達を率いて人間達を滅ぼそうとして起こった戦争。
「人間達が魔王フランシスを討つことで勝利を納めて、その時人々を導き勝利に多大な貢献をした四人の英雄、聖女アリー、大魔導士エミリア、鬼神ルーカス、初代教皇様ですよね」
「ああ、そうだ」
勝利に貢献した四人の英雄。アリー、エミリア、ルーカス、ユリアス。その四人の活躍と、人間軍の奮闘により、勝利に終わった人魔大戦。
「あれ? そう言えば、シオンさんもこの戦争に参加していたんですよね? 魔王を殺したとか」
「そうだな。参加していたし、魔王を殺したのは俺だ」
「じゃあ、なんでシオンさんは英雄と呼ばれてないんですか?」
「ミイナ、察してあげなさい」
「察しなくていいっての」
人のことを問題児みたいに言うな。確かに単独行動多い、と言うか単独行動しかしてねえし、拠点に入ろうとするたびに面倒ごとになったりしたが、俺は問題児じゃない。
「単に英雄なんて呼ばれるのが嫌だったからだ。戦争が終わっても生き続けるのに英雄扱いなんてされたら生きにくいだろ」
そうだぞ。俺は英雄の中の英雄と呼ばれるだけの資格はあった。しかし、それを辞退した。どこぞの胡散臭い宗教野郎みたいに見栄っ張りじゃなくて、謙虚だからな。あー、目立ちたくないわー。
「へえー。そうだったんですか。確かにシオンさん英雄って感じじゃないですしね!」
「悪意がないからこそ突き刺さる!」
ユリアスみたいに悪意がないからこそ深く突き刺さる……。完全に本音。心の底から俺は英雄の器じゃないと言われてしまった。
「ともかく! その戦争で魔王フランシスは確実に殺した。そして、英雄達もユリアス以外は全員死んでいる」
「ユリアス以外? 初代教皇様はお亡くなりになりましたよね?」
「今目の前にいるだろ」
「? 今いらっしゃる教皇様は九代目ですよね?」
「初代から今も全部こいつだ」
「どう言うことですか?」
ユリアス、説明してねえのかよ。何呑気にお茶飲んでんだよ。自分語りはしませんってか。私、ミステリアスでしょ?ってか。ミステリアスなんてめんどい奴に対して言う言葉だからな。
「ミイナ、私も不死なのです」
「で、でも、今までの教皇様はお亡くなりになりましよね?」
「ええ。肉体は滅びました。しかし、記憶や知識、肉体以外で私を形成するもの、いわゆる魂。それはずっと私のものです」
「魂、ですか?」
「そう。シオンが不変の不死ならば、私は変わり続ける不死。肉体はもう十八度死にました。しかし、魂は死なず新たな肉体へと宿るのです」
ユリアスも不死だ。俺のように不変の不死ではなく、変わり続ける、体の老いがある不死だ。体が老い、死ねば、新たな体で生まれる。何度も転生を繰り返す不死だ。その証拠に今は若い女だが、人魔大戦の時には男だった。体は違うが、今も俺のことも知っている。
「俺とユリアスは不死だから今生きていても問題無いが、あいつらは違う。あいつらは不死じゃねえし、全員死んだ。生きているのはおかしい。しかし、あいつらは生き返った。魔王もアリーも、エミリアもルーカスも。しかも、敵としてだ」
過去には人魔大戦という戦争があった。そこで活躍した英雄と魔王が敵として生き返った。これにて過去と現状の説明終わり。
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