第16話 壁は破壊出来るものだと思ってました

「どうだ? かつての仲間達との感動の再開は!!?」


 フードを取り、あらわになった素顔。その顔はかつて共に戦った仲間達の顔だった。


「お前ら……。……フランシス、お前俺を怒らせて覚悟は出来てるのか?」


 こいつらは死んだ。四百年前に死んだ。死んだ仲間を俺の前に持ってきて楽しいか? やっぱり、クズだなお前は。


「ふっ。少しはいい顔になったが、ここでお別れだ。また次相見えるとき、貴様を殺す時を楽しみにしている」


 そう言い残し、魔王とかつての仲間三人は転移魔法によってどこかへと消えてしまった。その様子を俺はただ見ていることしか出来なかった。


「…………」


 あれは本物だったんだろうか? いや、そんなはずはない。だったら、何故攻撃しなかった? 何故何もせずに見逃した。…………。


「……あ、あの」

「ミイナ」

「は、はい!」

「ちょっと俺をバラバラにしてくれ」

「はい! ……ええ!?」


 ほら、早く。バラバラ事件再びだ。前回以上に細かく刻んでくれていいぞ。バラバラどころかミキサーにかけてくれてもいい。


「頼む」

「で、でも……」

「いいから。どうせ死なねえし。一旦リセットしたいんだ」


 集中出来ない時とか、顔に水かけたりして気分転換するだろ。あれだ。あれを俺の場合バラバラにされたほうが早いからな。気分転換どころじゃねえな。生まれ変わったような気分になる。


「頼む。やりたくねかもし……」

「分かりました。バラバラですね」

「え?」

「シオンさんの頼みなら。動かないで下さいよ」

「え、ちょっと?」

「いきます!」

「あ、うぬへぇ!」


 ……ミイナ、良い子っ!




「ふっー。素晴らしいバラバラ事件だったな」


 躊躇なくミイナに斬り刻まれ、綺麗にバラバラにされて、無事復活した俺。まるで生まれ変わったような気分だ。


「よし! サンクス、ミイナ!」

「ど、どういたしまして?」

「お礼に……、ミイナ乗れ!」

「え、ええ!? ド、ドラゴン!? どうしたんですかこれ!?」

「作った」

「作った!?」


 ミイナ、お前もさっき影魔法のエンターテイメント見てただろ。説明聞いてなかったな。あの勇者殺し君ばっか気にしてたな。およよよ、渾身のエンターテイメントが無視されててシオンさん悲しい。


「全く。どうでもいいから早く乗れ。出発するぞ」

「出発って、どこに行くんですか?」


 行きたくねえが行かねえといけねえ場所。あの魔王達のことをよく知る知り合いのところ。


「クサレゴミ野郎のとこだ」


 俺達を乗せたドラゴンは教会本部へと向けて飛び立った。





「交代の時間だ。何か異常は無かったか?」

「ああ、無いな。あとは頼む」

「了解。ご苦労だった。あとは……、あれはドラゴンか?」

「何? ……確かにドラゴンがこっちに向かっているな」

「面倒な。全員構えろ! こちらに向かって来るドラゴンを撃ち落とせ! 撃て!」


 ドラゴンへ向けて矢が放たれる。そして、その矢は全てドラゴンへと命中した。


「これで、何!? 全く効いていないだと!?」

「安心しろ。矢が効いてなくても、ここには教皇様が張られた結界がある。あんなドラゴン程度じゃどうにもならん」

「あ、ああ。そうだな」


 矢を喰らいながらもドラゴンはその速度を緩めない。そして、遂に、


「ぐへっ!! なんだよ! ここは通り抜けれる場面だろうが!」


 ドラゴンは結界に衝突し、衝突の衝撃が俺達を襲った。


「あいたっ! ちょっと、シオンさん! 結界あるって言ったじゃないですか!」

「いや、だって、それまでの流れからしてこの結界突破出来る流れだっただろうが!」

「一体何を言ってるんですか!?」


 いや、今の流れは絶対結界突破して、「何! 結界が突破されただと!?」、「え? ああ、結界破ってしまったのかすまんな」俺結界張る、「何!? 教皇様より強力な結界だと!?」て流れだろ。完全にその流れになってたのになんでこうなったんだよ。ご都合はどこに行った。


「ドラゴンの上に不審な男と、あれは、ミイナ様!? ぜ、全員に告ぐ! 不審な男にミイナが捕まっている! 全力でミイナを保護するのだ!」


 ご都合だって休みたいとか言ってんのか? ブラックは嫌とか、あれ? なんかものすごい数の兵士共が集まってきてない? あれ? ちょっと何? なんで囲まれてんの? 


「かかれ! ミイナ様を保護しろ!」


 浮遊魔法でドラゴンの周りを囲んでいた兵士共が襲いかかってくる。え、ちょい待ち、なんで襲われぐえっ。


「ミイナ様を確保! 男の拘束にも成功した!」


 襲いかかられ兵士に拘束される俺。ちょっとー。重いんですけど。


「よし、ミイナ様は教皇様の元へお連れしろ! その男は……、……何? 教皇様が? 了解。その男も厳重に拘束し教皇様の元へ連れて行け!」


 俺は更に魔法で身動きが取れなくなるほど拘束をされる。あれ? あいつの元に連れてってくれるんだろ? 拘束なんて要らなくね? って言うか動けない。俺今芋虫みたいに拘束されて動けない。これ誰か運んで、げっ。これ俺お姫様抱っこされる感じ? 嫌だわー。こんなごつい男にお姫様抱っことか。ミイナにしてもらいた、あっ、引きずっていく感じなのね。足を引きずって、痛て。頭地面に打ちまくってる。


「教皇様! ミイナ様と男をお連れ致しました!」

「ご苦労様です。では、再び警備に戻って下さい」

「はっ!」


 ……あ、着いた? 引きずられるのって寝る体勢みたいでちょっとウトウトしてたわ。


「お久しぶりですね。ミイナ」

「はいっ! お久しぶりです、教皇様!」


 教皇? ああ、お久しぶりですね。クサレゴミ野郎。とりあえず一発ぶん殴らせて……、まだ拘束されてんの? 俺。


「こっちも、お久しぶりですね。最後にあったのは三百五十年でしたか? 時が立ってもお変わり無いようで。」

「おい、この状態でお変わりねえってどういうことだ。お前は随分お変わりしたようだが」


 この世界の最高権利者、教皇。背中まで伸びる長い白い髪に、何も知らねえ人が見たなら慈愛に満ちていると言うであろう銀色の瞳。純白の衣の下に隠れる豊満な女の体。見た目は美人。素晴らしく美しい大人の女。だが、中身はあいつだ。


「見た目じゃなくて、中身ですよ。馬鹿は死んでも治らないようですね。シオン」


 人を馬鹿にするクサレゴミ野郎。教皇こと、ユリアスだ。

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