第11話 手負いより飢餓状態のが怖い
「ほら、ミイナの分だ……」
「ありがとうございます……。あれ? 三つもありますよ」
「いいんだよ。俺不死だし食わなくても死にはしない。それに成長期なんだからちゃんと食え。パン三つだけだけどな」
「シオンさん……。ありがとうございます……!」
ああ、気にするな。成長期なんだから食え食え。もうかれこれ六日間パンしかミイナ食えてねえだろ。タダ働きの時は一日パン一人二個。ミイナに俺の分あげてたし、四個か。昨日はパン一つ。今日は三個。ひもじい……。もう一回タダ飯食らいに行こうかな。
「……明日はいいクエスト入ってきますよね?」
「……大丈夫だ」
ここらで出来るクエストは薬草採取しか現状ない。しかし、大丈夫だろう。なんたってこの物語はご都合主義なんだから。明日には魔物の大軍がこの町に押し寄せ、それを俺達が退治し町の救世主となり金を得る。これが物語のお約束だろ。
よくあるじゃねえか。冒険者登録してもランク低いから難しいクエスト受けれず、薬草採取とか弱い魔物退治とかしてたら、ドラゴンが町にやって来て、それ退治していきなり最高ランクにって。それだ。それのランクとか賞賛より金寄越せバージョンだ。きっとご都合主義になってくれるさ。
「おっ、いたいた。よう、新入りの貧乏嬢ちゃん。今日も薬草集めご苦労だな」
ミイナよく噛んで食、なんだこいつ? 何いきなり入ってきてんだよ。おい、ミイナに触んな。バラバラにされんぞ。
「ちょっ、なんですか?」
「嬢ちゃん今日も薬草集めてそんなパンしか買えなかったんだろ? 可愛そうだから、俺達が恵んでやろうと思ってよ」
なんだと、このチンピラども! いったいいくら恵んでくれるんだ! この図体だけデカくていかにもよくあるギルドで主人公に絡んでくる先輩チンピラかませ冒険者なんて思ったことは全力で謝るからいっぱいお恵み下さい!
「恵んでやるかわりに俺達と一晩寝てもらうけどな。なに、安心していい。一晩だけじゃ嫌って言わせてやるからよ」
……いや、駄目だ! 駄目だ、駄目だ! そう、駄目ったら駄目だ! そう、俺はNoと言える元日本人だ。決してミイナに売春なんかさせない。……ま、まあ、でも? もし、もしね! もし、ミイナが? ミイナが……、したいって言うんなら? ……本人の意志を尊重したり? したり、しなかったり? もしね! もし! Ifの話しだからね?
「……嫌です。恵んでなんか要らないです。離れて下さい」
そうだ! 恵んでなんか要らねえよ! お前らの恵みなんかこっちから願い下げだ! ミイナと一晩寝るだと? ふざけんな! お前らなんかにミイナとヤラせる訳ねえだろ!!
「チッ。下手に出てりゃ調子に乗りやがって。新米のくせに先輩の言うこと聞けねえのか?」
おい! お前がいつ下手に出たんだよ! 下手に出るっていうのは、「俺はゴミだからあなたに俺の全財産あげます」っていうこと言うんだよ! 分かったか! 分かったら、さっさと全財産寄越せ!
「先輩だからって言うことを聞く必要は無いです」
「ああ!? こいつふざけやがって! 大人しく言うこと聞いてりゃいいのによ! 後悔させてやるよ!」
「そんなことよりさっさと全財産寄越せや!」
「はあ!?」
何が「はあ!?」だ! さっさと全財産寄越せや! お前さっき言っただろうが!
「てめえ何言ってやがる!」
「お前が言ったんだろうが! 『俺はリサイクル出来るゴミだから、あなたに全財産渡して、これからずっとあなたに財産をあげ続けます』って!」
「んなこと言ってねえ!」
おいおい、頭大丈夫? ついさっき言ったこともう忘れてんの? 病院行くか? それともゴミ集積場か? 次はペットボトルに生まれ変わるか?
「はっ! 生きたペットボトルなんて絶対高く売れんだろ!」
「何言ってんだこいつ!」
そもそもペットボトル自体無いんだから、生きてなくても高く売れんな! 特許だ! 特許取れば、印税ウハウハだ! 特許権出版して夢の印税生活だ!
「特許で税金払って一攫千金じゃねえか! 印税開発しねえと!」
「な、なんだ、こいつ?」
「兄貴、なんかやべよ……。行こうぜ」
「あ、ああ……」
ふははは! 一攫千金薬草採取だ! 金が地面から生えている!
「はあ。ありがとうございます。追い払ってくれて」
「ああ! 一攫千金トレジャーハントだ!」
「シオンさん、もうそんなことしなくていいですよ。どこかへ行きましたし。……あの、シ、シオンさん? どうたんですか? 大丈夫ですか!?」
「ミイナ安心しろ! 売春は俺がやる!」
「は、ええ!? ば、売春!? シオンさん売春って、シオンさん大丈夫ですか!? 顔真っ白ですよ!」
「はははは! ギルドの受付ってなんでお姉さんだけなんだろうな! オネェさんはいねえよな!」
「大丈夫じゃない! とりあえず寝てください!」
この後パン食べて寝たら治りました。
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