第12話 危機から救ってくれってクエスト受けたらもう終わってたりするよね
「シオンさん? 大丈夫ですか?」
「ああ、もう大丈夫。すまんな。心配かけて」
昨日のかませ先輩に絡まれてから、俺は錯乱状態になっていたらしい。なんでなったのかは知らん。何らかの病気だろ。不死でも病気にはなる。末期状態の病でも死ぬことはないが。
「いえ。私の方こそごめんなさい。私がずっとシオンさんの分のパンを食べてたから……」
「気にすんな。多分それが原因だろうけど、俺が望んでやったことだ」
空腹極限状態で錯乱しちゃったんだろ。パン食べて寝たら治ったんだし、もういいじゃねえか。もう触れるな。医学的にどうこうとか分からねえんだから、もう触れるな。パン食べて寝たら治るのかよとか言うな。すべてはご都合主義だ。
「それより何かいいクエスト来たか? 魔物襲来とか、町の危機を救えとか」
また錯乱状態にならないために働かないとな。働いて金得て健康でいねえと。ちょうど、いい感じのクエスト来てるだろ。なんたってご都合主義だ。
「……それが何も来てないんです」
「なん、……だと…!?」
そんな……。ご都合主義なのにご都合が悪いだと!? 「ご都合が悪ければお日にちの変更が出来ますが?」なんて言われて別の日言ったら「その日は無理です」って言われただと!? どうなってやがる……。ご都合主義だろ? ご都合って一体何なんだ!?
「受けられるクエストは変わらず薬草採取だけです……」
「…………しょうがない。最終手段だな」
もう薬草採取なんてしてたところで無駄だ。次はミイナが錯乱状態になるかもしれん。錯乱状態になって出会った時のミイナになってもらったら困る。それを防ぐためにはもうこの手しかない。これをするのは非常に嫌だが。
「ミイナ。教会に行くぞ」
教会行ってミイナが金をもらってくる。ミイナは勇者だ。勇者は教会から金銭面での援助も受けられる。よって、勇者であるミイナに教会から金を貰ってきてもらって、その金で生活する。あのクソ野郎に金を借りるようで非常に気が進まないが。
「教会……。そうですよね。もう一週間も我慢しましたしね。もう貰いに行ってもいいですよね!」
「いい! 一週間前に一ヶ月以上分貰った直後に落として、一銭も使うことなく消えたけどいい!」
ミイナは俺と出会った日の朝に教会から大金を貰い、その日の昼にはもう落していた。何たるドジっ娘。ドジというかただの馬鹿に近い。バカっ娘。
そんなこともあって教会から金を貰うのに気が進まなかったらしい。教会の金は信者からのお布施だからって気にしてたらしい。そんなこと気にしなくても、お布施なんて金持ちが教会にいい顔したくてしてるだけなんだから、幾らでも貰えばいいのに。まあ、俺もクソ野郎に借りを作るみたいで気が進まなかったが、背に腹は変えられない。
「教会から金貰ってパンだけ生活からもおさらばだ! よし、金貰ったら貧乏脱却おめでとうパーティをやろう!」
「それまた元に戻ることになりますよ!」
ははは! 何を馬鹿な。これからはもう教会に週十で金貰いに行くから金のない元の状態に戻ることなんてない。教会の金を毟り取れるだけ毟り取る! 全ては俺達の生活の為に!
「決まったら善は急げだ。早速この町の教会支部に行くぞ」
教会は色んなところに支部を持っている。町にはもちろんだし、何もない草原にぽつんとあったりもする。至る所に支部があるからどこに行っても金を補充できる訳だ。素晴らしきかな、ATM!
「じゃあ、ミイナ任せた。毟り取れるだけ取ってきてくれ」
「ええ……。まあ、貰えるだけ貰ってきます。行ってきます」
教会には身分が確認された人しか中には入れない。俺は多分無理だ。無理だし、入りたくもない。入れたとしても手続きやら、何やらが大量にあるだろう。その点ミイナは簡単ワンステップだ。普段は勇者だとバレないようにしている手袋を外して、星のあざを見せて名前言えばいいだけ。この町の支部ならもう一回行ってるし、それすら要らないかもしれない。憧れの顔パスだ。
ミイナが手袋を取って教会の門番この所へ行こうとした時、突如轟音が響いた。
「……は?」
「え? あ、あの、私何もしてませんよ!」
「いや、うん。それは分かってる」
ミイナが近づいていき、門番に話しかけようとした時、教会の支部が突如として崩れ落ちた。立派な支部の建物が瓦礫とかし、地面に転がる。そして、その瓦礫の山の上に一人立っているのが見えた。
「チッ。ここもハズレかよ。一体どこにいるんだぁ? 次の
崩れ落ちた建物、その瓦礫の山の上に現れた人物。その人物の左手には星型のあざがあった。……ATMが……。
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