第15話 三日会わざれば刮目して見よ。四百年会わざれば適当に見よ
「久しいな。黒の人間よ」
「魔王フランシス……」
上空に佇む四つの影。その一つが魔王フランシスだった。
「ま、魔王!? 魔王フランシスってあの!?」
ミイナが驚きの声を上げる。そりゃ、驚くか。とか言いつつ俺も驚いてる。何たって四百年前に死んだ、俺が殺したはずだから。
「ふっ。そう構えるな。今日は何も戦いに来たのではない。この人間を回収しに、ついでに挨拶をしに来ただけだ」
何故生き返った? どうやって? 何が目的で? こいつは本物なのか? いや、今はそんなことを考えている時じゃねえな。こいつが本物だろうが偽物だろうがどうでもいい。とりあえず、落ち着こう。落ち着いて、対処しようか。
「……へえー。それはどうも。死んだくせにわざわざ俺に挨拶しに来てくれるとは愛されてるねえ、俺」
「ふっ、愛か。確かに我はお前に会えるのを恋い焦がれていた」
ワオ! 突然のカミングアウト! 私、あなたのことが好きなんです! 同性愛者なんです!ってか!
「我を殺したお前に復讐出来る時が来るのをな」
まさかのヤンデレヒロイン登場!? ミイナにヤンデレとか言ったあれはフラグだった!? そもそも女じゃねえけどな。まったく、生き返るなら女になってこいよ。そんな角生やして怖い顔していかにも魔王ですっ!って面してねえで、美少女になって来いよ。そしたら、相手してやるってのに。
「俺に復讐するためにわざわざ土の下からやって来たのか? ご苦労なこった。またすぐに土に還るってのにな」
「ほう。お前一人で我を土に還すと?」
「そう聞こえなかったか? あっ、すまんすまん。もっと分かりやすく言うべきだったな。俺は、あなたを、殺す。これでいいか?」
「相変わらず口の減らない奴だ」
そっちこそ相変わらずじゃねえか。えーと、その、……お変わり無いようで。
「白の人間も居ない今、貴様を消してしまっても良いが、それでは面白くない。だから、そう構えるな。時間稼ぎをして白の人間が来るのを待っているのか?」
「ああ!? あんなクソ野郎を待つなんてあり得ねえだろうが!? ちょっと頭大丈夫ー? もしかけてボケてるー? 俺は一人でお前を殺すって言ったんだけど理解できてなかった?」
誰があんなクソ野郎が来るための時間稼ぎをしているだと!? 寝言は寝て言え。白の人間っていうのは教皇とかいうクサレゴミ野郎ね!
「ふっ。そういうことにしておいてやろう」
「あ? ……そっちこそお仲間連れてこねえと俺の前には来れなかったんだろ? 分かるぜ。何たって、俺様最強だからな。あっ、それともあれか? 今までぼっちだったのに三人もお仲間出来て嬉しくて見せに来たのか?」
そんな三人もお仲間連れてきちゃって。しかも、全員フードで顔隠して謎の強キャラ感だしてんじゃん。自慢のお友達ですっ!ってか? それとも、お仲間について来てもらわないと怖くて俺の前に出てこれなかったのか? 分かるぜ。一人で俺の前に立つなんてヒザがダンシングしちゃうもんな。
「でも、付き合う友達は選べっていうぜ? そんな弱っちいクソ雑魚と付き合うのは止めとけよ」
転移魔法で転移させられた勇者殺しは魔王のお仲間の一人に担がれていた。あらあら、気絶しちゃって。このプリティな俺がそんなに怖かったか?
「これも大切な駒の一つだ。今は弱くとも、次会うときには貴様の首を狩るかもな」
「へえー。そりゃ楽しみだ。でも、そいつもう俺真っ二つまでやらかしてくれたからもうよくね? 置いてってくれない?」
とりあえず、そいつくれれば見逃してやらんこともない。さあ、勇者殺しプリーズ。チートプリーズ。チート手に入れて、お前のお仲間切断してやるよ。
「言ったであろう。これも大切な駒だ。貴様にやりはせん」
「いや、いいだろ? そいつくれればお前ら見逃してやるから。まだ死にたくねえだろ?」
生き返ったのって多分最近だろ? 生き返ってまたすぐ墓へ戻らないといけないなんて嫌だろ? 四百年後の世界をちょっとぐらいは観光させてやるから、そいつ置いて消えろ。
「……ふっ。貴様に我等が殺せるのか?」
「あん? さっきも言っただろ? 俺は、あなたを、殺す。あなただけじゃなく、お仲間も全員だけどな」
おいおい、ついさっき言われたことも忘れちゃったんですかー? まあ、しょうがないか。もうおじいちゃんだもんな。ほらほら、おじいさん。もうおやすみする時間ですよ。
「ふん。そう言えば、我の仲間を紹介していなかったな」
「いやいや、お仲間の紹介なんて要らねえし。最近のテンポ良すぎの怒涛の展開で訳分かんねえことになってんだよ。そんなとこに登場人物増やすなよ。謎にしとけ」
前回からの怒涛の展開よ。テンポ良すぎと言うより省き過ぎで訳わかんねえよな。この魔王とか言う奴誰よ? 勇者殺しとの戦闘はいつの間に終わってんだ? 戦闘描写あった? ヒロイン放ったらかしでいいのかよ、みたいな。
「そう言うな。わざわざ我が感動の再開をさせてやろうと言っているのだ。遠慮するな」
「はあ? 感動の再開? 捨てた犬でも戻ってきましたか?」
色んな事情で飼えなくなって捨てた犬が帰ってきたりしますか? 帰ってきて感動だけど、やっぱり飼えないし、どうしようみたいな展開ですか?
「顔を見せてやれ。英雄共よ」
魔王のフードを被って強キャラ感を出していたお仲間達がフードを取る。え、フード取っちゃったらただのローブ着た普通のキャラに……
「……お前らっ……」
「ふははは! どうだ? かつての仲間達との感動の再開は!!?」
フードを取り、隠されていた素顔があらわになる。そこには四百年前、共に戦った仲間達の顔があった。
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