第13話 テケテケですが、何か?

「貴様何者だ!」

「あ? ああ、外にいた奴か。面倒いからお前らもこの下の奴らのとこ連れてってやるよ」

「貴様……! 死ねえ!」


 崩れ落ちた教会の上にいた男が地へと降りてくる。その男に門番の男が挑みかかる。止めろ! お前絶対かませだから瞬殺されるオチが待ってるだけだ!


「死ね、ぐはあ!」


 そらみろ! 本当に瞬殺じゃねえか! もう大人しく逃げとけよ!


「うっぜぇゴミが。雑魚のくせに噛み付いてくんじゃねえよ。で、お前らはど……」


 斬り殺され真っ二つになった門番の体を蹴り飛ばし、男は俺達の方へ。おいおい、絶対やばいやつだぜ、こいつ。こんなやつと関わらずに逃げようぜミイナ。……ミイナ?


「……その星のあざに、さっきの切れ味。あなた、もしかして……」

「クックック。ハーハッハッ! そのあざ! 女、次の勇者獲物はお前かあ!」

「あなたが、勇者殺し!」


 え、こいつが勇者殺しなの? 何か想像したのと違うな。ヒョロいな。いや、人のこと言えねえし、俺の方がヒョロいかもしれんけど。想像したのはもっとムキマッチョのゴリラみたいな奴だったのに。実物は細マッチョ?の性格の悪さが顔に出てるどことなく蛇っポイ感じがするやつだな。


「師匠の仇取らせてもらいます!!」

「どいつか知らねえがその師匠の元にお前も送ってやるよお! 地獄で感動の再開でもしてな!!」

「はい、ストッープ」


 はいはい、ごめんねえ。白熱してこれからまさに死闘が繰り広げられる寸前だけど、ごめんねえ。間に割って入っちゃってごめんねえ。死闘開始はまた今度ねえ。


「てめえに用はねぇんだよ。どけ、ゴミが」

「そうですよ! 邪魔しないでください! シオンさん!」


 おいおい、なんだよ、何二人で意気投合しちゃってんの? 俺だけ除け者なんて寂しいだろ? 俺ちゃんも混ぜろよ。


「落ち着けミイナ。お前この町破壊する気か?」


 ミイナ、お前前科あるだろ。俺が受け止めなきゃお前が放った魔法でこの町吹っ飛んでたことあるだろ。またあれやるのか? もう俺防がないからな。


「そんな気はありません! 勇者殺しをころすだけです!!」

「はいはい、落ち着いて。お前絶対またやるから。魔法ぶっぱで町ぶっ飛ぶから。それにヒロインが殺す!とか言っちゃ駄目だぞ」


 ヤンデレでもないんだから、そう簡単に「殺す」なんて言っちゃ駄目だろ? せめて「倒す」にしとけ。まだ可愛らしげがある。落ち着け落ち着け。前だって落ち着かずに俺の話し無視してぶっぱしただろ。絶対今回もやる。


「じゅあ逃げろって言うんですか!」

「別にそんなこと言ってない。ミイナ落ち着けって言ってるだけだ」

「私は冷静です!!」

「冷静な人間は『!』を多用しねえっての。とりあえず落ち着いて、下がってろ。俺がやる」


 はい、ミイナもっと下がって。こいつは俺がやる。と言うより殺りたい。殺ってこいつが勇者から強奪した祝福を強奪したい。……なんてことは考えてない。そうだ! 町の平和だ! 町の平和を守るため、俺が戦う!


「いいな。下がってろ。町のためだ」

「…………はい」


 しぶしぶ数歩後ろに下がるミイナ。はあ、ヒロインがそんなぶすっとした顔してたら駄目だろ。笑って笑って。


「……じゃ、そういう訳だ。まずは俺と遊ぼうじゃねえか。待っててくれてせんきゅー」

「……チッ。クソ雑魚がっ……」

 

 あんなにグダグダしてたのに待っててくれるなんてこいつイイヤツなんじゃね。やばいやつとか思ってごめんね。それとも、足すくんでた?


「よし、あれだ。待っててくれたお礼に一発殴っていいぞ。さあ、こい」


 律儀に待っててくれたんだからお礼しねえとな。ほら、殴ってこいよ。完全無防備だぞ。今は。


「……じゃあ、遠慮なく行かせてもらうぜ。後悔してももう遅え!」

「ダメ! 避けて、シオンさん!」


 安心しろミイナ。はい、防御ー! 残念でし、……あれ? 俺斬られてない? 腹を綺麗に横に斬られちゃってない? 完全無防備から、斬られる一瞬前に完全防備にしたのに? あっ、俺の下半身と上半身が分離しちゃってる。グッバイ、下半身。俺はこれからテケテケとして生きていくよ。


「はっ! んだよ、クソ雑魚じゃねえか! ビビらせやがって!」

「シオンさん……」


 はい、テケテケテケテケ。テケテケとして生きてくけど何か質問ある? 無い? あっそう。むしろこっちが聞きたいしな。腹なくなったのにこれから消化とかどうしたらいいんだよ。はっ! 下半身なくなったってことはミイナとの毎晩のお楽しみが出来ねえじゃねえか! おいおい、俺のマグナムぶち込めねえじゃねえか。ミイナも悲しそうな顔してるぜ? あっ、違った。「何こいつ舐めプして死んでの」みたいな顔してんな。おぶっ。ちょっと、顔踏んでますよ? 俺の顔踏んでますよ、名前を貰えない勇者殺しさん?


「この祝福の前には敵なんて居ねえ! 全てを斬り裂く絶対切断の前にはな!」


 ああ、なるほど。こいつの持ってる祝福が絶対切断っていうのか。それで完全防御俺もテケテケ俺にされちゃったわけね。絶対切断ねえ。何でも斬れるってことを示したかったんだろうが、もうちょっとひねれよ。安直過ぎだろ。凝れよ。他作品との差別化を図れよ。それでなくてもテンプレばっかなのによお。主人公が二回も男に顔を踏まれてることで差別化を? どこにそんな需要があるんだよ。美少女に踏ませろよ。それなら需要あるから。ここに。


「これで邪魔は居なくなった! 次はてめえだ、勇者よお!」

「私、テケテケ。今あなたの後ろにいるの」

「なあっ!!?」


 勇者殺しはようやく俺の顔から足をどけ、ミイナへと迫ろうとする。そうはさせないわ。電話はなくたって私いけるの。だって、私はテケテケだから。あっ、足生えてきたわ。


「て、てめえ! なんで生きてやがる!?」

「この展開はもう何度もやったし、これからも何度もやることになるだろうし、割愛する。おうけえー?」

「な、何を言ってやがる!」


 もうその反応も飽きたわけよ。説明も面倒いし、語彙の無さのせいで同じ反応しか返ってこねえし、もう割愛な。


「そんなことよりご注目! クイズ、これは何でしょう?」


 今の気分はエンターテイナー。さあ、みんな大好きクイズの時間です! 司会はこの俺、シオンさん。回答者は名無しの勇者殺しさん。テレフォンの先にはミイナさんがいるぞ。さて、問題。今俺が持っているこの黒い人型のペラペラしたものは何でしょうか? ヒントは第四話。では、シンキングタイムスタート! チッチッチ終了ー!


「答えは勇者殺しさんの影でしたー! 残念ながら勇者殺しさん不正解! 一千万円の夢は潰えました!」


 正解は勇者殺しの影でした。正解の賞品はあげれませんが、不正解の罰はあげましょう。ではでは、レディースあんどジェントルメン! 楽しい罰ゲームの始まりです!!

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