第20話 ゴミだって大切な資源
「号外ー! 号外だよー! あの魔王が復活!? 教皇様が戦争について発言なされたぞー!」
新聞の号外を配る声が大きく響く。その声に引かれて多くの人が彼のもとへ。ミイナもおっちゃんから一部貰ってた。
「へえー。魔王復活に戦争は三年後。その為に人間は結束しよう、ということらしいですよ」
ミイナが号外を読む。魔王復活。戦争三年後。頑張ろうぜお前ら。みたいな内容らしい。
「早いですねー。もう新聞が出てくるなんて」
俺達が魔王と会ったのが、昨日の午前。その後、ユリアスに会いに行って、昨日の夜この町に着いた。そして、今。正午。ユリアスが声明出してたのが昨日の午後俺達と別れた後なのに、もう号外か。早いねー。日本の様な印刷技術でもあるのかね。魔法は素晴らしい。
「それにしても、こんなこと書かれて大丈夫なんですか? 魔王とか戦争とか知った人が暴動起こしたりしないですかね?」
「まあ、大丈夫だろ。むしろ、新聞とか出さないほうがやばい」
あの勇者殺しが教会支部ぶっ潰した時、既に多くの人に見られていたからな。あれである程度逃げたとは言え、その後の魔王登場も見てる奴は居た。これで何も言わなかったら変に不安を煽るだけだろ。
「そういうものですかねぇ」
「そういうものじゃねえの」
そーそー。多分そんなもんだって。……チッ。ねぇな。
「……あの、シオンさん」
「なんだ?」
「ゴミ箱漁るのは止めましょうよ」
ゴミ箱漁るの止めろだって? 止められるかよ。止めたら、あっ。俺今ゴミ箱漁ってます。食べる物求めてゴミ箱漁ってます。ミイナは新聞読んで他人の振りするかしないか迷ってる感じです。
「しょうがねえだろ。金ねえんだし、今食い物得るにはこれしかない」
「それはそうですけど、我慢して働きに行きましょうよ」
働きに行くって言ってもなあ。腹は減っては戦は出来ぬっていうだろ? 腹減ってんだよ、俺。ミイナみたいに茶菓子大量に食ってた訳じゃねえし、茶菓子以前に最後に食べたのはあの錯乱した時に食べたパンだし。腹減ってんだよ。
「教会が金ちょっとでも寄越しやがったらこんなことせずでも済むってのによ。全てはあのクサレクソ野郎のせいだ」
ミイナ勇者なんだから金寄越せっての。今日の午前に教会に金をたかりにもとい、頂戴しに行ったわけだが、何があったかは回想でな。じゃあ、回想スタートだ。俺はゴミ箱漁り続けます。
「金がねえ。食い物もねえ。なら、教会から金ぶんどって来ればいい!」
「ですね!」
行け! ミイナ! 教会から金ぶんどって来い! 商業都市じゃ貰えてねえし、ユリアスと会った時も忘れててたし、俺達は今無一文だ! 無一文ならどうする? 教会にたかる! グッドラックミイナ! 教会支部に俺は入らねえから頼んだぞ!
……あっ、ミイナ帰って来た。さてさて、幾らぶんどって来たのか。額によっては今日、いや、毎日パーティーだな。
「ミイナどうだった?」
「シオンさん実はかくかくしかじかで……」
「何!? かくかくしかじかだっただと!?」
かくかくしかじか!? ちゃんと言うと、ユリアスから俺達に金をやらないように教会支部へ伝令があっただと!?
「教会からは貰えないみたいです。これから、と言うより今日どうし……、あれ? シオンさん、どこ?」
「教会ぶっ潰させるか俺に金よこすかどっちがいい!!?」
「シオンさん!? 何やってるんですか!?」
ほら、死ぬ? それとも金よこす? 命か金か。どっちが大事? 俺は金だと思います。
「シオンさん! 止めてください! 支部に入ったと思ったら、何脅してるんですか!」
「脅してるんじゃない。選択を迫ってるんだ」
「同じです!」
同じな訳ねえだろ。どっちがいい?って聞いてるだけだ。それにちょっとナイフがついてるだけだ。
「シ、シオン様ですね。教皇様からお手紙を預かっております!」
「あ? 手紙?」
手紙ー? あいつから? どうせろくな事書いてねえだろ。
『この手紙を読んでいるということは、教会にたかりに来たのですね。なんと浅ましい。己の浅ましさを恥じて自害してみてはいかがですか?』
ビリィ。
「何破ってるんですか!」
「手紙を読んでるだけであいつの嘲笑う顔が浮かんできてつい」
「ついじゃないですよ! 貸してください! 私が読みますから」
ああ、すまんな。半分に破れたけどつなげて読んで、内容を要約してくれ。三行で。
「えーと……、手紙には戦争準備の為にお金が要るので与える余裕はない。クエストをこなしてお金を稼ぐとともに人間界にいる魔物を排除しなさい。ギルドから信頼を得るには冒険者ランクを上げる必要があるのでクエストをこなしなさい。とのことです」
ふんふんなるほど。で、金は?
「お金はクエストをこなして稼ぐんですよ」
ああ、そうだ。で、今、今日の金は?
「もらえませんよ」
「どうしろと!? 俺は無一文だぞ! クエストなんて一日で終われるのなんて薬草採取ぐらいだろ! またあの苦行をやれと!?」
「し、しかたないじゃないですか」
あんなことやってたらまた発狂するぞ。いいのか? 発狂してこの支部ぶっ潰すかもしれねえぞ? ほら、どうする? 破壊される? それとも金よこす? 俺はやっぱり金が大事だと思います。
「シオン様、お止めください。ナイフを、ナイフをおしまい下さい!」
「シオンさん、止めて下さい!」
チッ。これだけ脅しても金は寄越さねえのか。やるな。いい根性してぜ、この職員。だからって、止めない。
「シオンさん!」
「なんじゃ? お主ら腹が減っておるのか?」
君がッ金出すまで脅すのを……、あ? 何このジジイ。人が回想してんのに入ってくる? なんか混じったじゃん。ゴミ漁りしてる俺に声かけたのに、脅してる時の俺に声かけたみたいに勘違いされるだろ。
「そんなに腹が減っておるなら儂が少し食わしてやる」
勘違いされたら、何!? 飯食わしてくれるだと!? だったら、回想なんてやってる場合じゃねえ! 回想終わり! ジジイ、ご馳走様です!
はい、回想終わりね。もう閉店だから帰った帰った。どうせ、この後結局金貰えず無一文で、ゴミ漁りへと続くだけだし、ゴミ漁りと回想を止めて、このジジイに飯をおごって貰うとしよう。ゴチになります!
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