第9話 飯を食うのは金を食ってることと同じ

「はい、パン三つで三百円ね。ありがとうございました」


 パンを受け取り店を出る。パン屋にて百円のパンを三つ購入。ああ。袋にパンが三つも入ってる。重い。重いなあ。


「……ふふふ。今日は一人一個と半分もパンを食べられますよ」

「ああ。昨日は二人で一個だったから大成功だな」


 ふふふ、あはははと乾いた笑みが溢れる。……ああ、どうも。一週間ぶりの俺ですよ。この一週間中々大変で、現在に至るわけだが、説明すんのも面倒くさい。と言う事で回想どうぞ。始まりは一週間前のミイナと友達になった、つまり前回の終わりからスタートだ。




「じゃあ、これからよろしくな。ミイナ」

「はい! よろしくお願いします!」

「おう! じゃあ、二人の旅の始まりを祝って、乾杯!」

「乾杯ー!」


 ミイナと友達になった後、夜二人でレストランへと来ていた。二人の出会いと旅の始まりを祝うということで。店は、いや、今はそんなことどうでもいいな。そんなことより俺とミイナの出会いと旅の始まりを祝ってはい、乾杯! 


「好きなだけ食って飲んでいいぞ! 遠慮せずに楽しもうぜ!」

「はい! いただきます!」


 今日は俺の奢りだ! ミイナ金持ってねえしな! 好きなだけ食って飲んで騒げよミイナ! 俺も久々の酒だ! 浴びるように飲んで明日は二日酔いだ!


「美味しいですね! これも頼んでいいですか?」

「ああ! 好きなだけ頼め! 金ならある! あー、久々の酒うめえ!」

「ありがとうございます! じゃあ、すいません。ここからここまで全部下さい」


 ああうめえ。酒も料理も最高だ。ちょっと奮発して少しだけグレードの高い店に入ったからな。料理もだしサービスも質が高い。値段も高いけどな。まあ、金ならある。これから先一週間分の生活費がある。まあ、半分ぐらいが飛んでもいいだろ。ゆっくり働けばいいだけだ。


「すいませーん。これもう一杯ー」

「あ、私もこの料理おかわりで!」


 ああ、いい気持ちだ。もう酔ってるな。いやいや、まだ酔ってなかんかいねえーよ。アーッハッハッハっ。zzz……。


「………し、……起き………シオンさん!」

「……あ?」


 あ? なんだ、ミイナか。ちょっとそんな揺らすな。なんか気持ち悪くなる。吐くぞ。


「シオンさん起きてください。もう閉店ですよ」


 閉店? いや、まだ店入って一時間ぐらい、……ああ、寝てたのか俺。


「お会計済ませて店を出ましょう。お店の人も待ってます」

「……ああ。分かった」


 あー、ちょっと気持ち悪いな。ちょっとじゃないな。大分だ。酒そんな強くないのに調子乗ったつけだな。まあ、もうしょうがないことだし、さっさと会計済まして宿で寝よう。


「はい。これ金。釣りはミイナに渡しといてくれ」


 俺は懐から全財産の入った財布を店主に渡し、ふらふらと店の出口に向かう。


「まいど。…………お客さんちょっと待ちな」

「あ? なんだよ?」


 せっかく人が店の中で吐くのは不味いと思って外で吐こうと思ってんのに止めんなよ。いいのか? 店の中で盛大に吐いてやろうか? 


「食い逃げは困るな」

「食い逃げ? おいおい、食い逃げなんてしてねえだろ? 店主殴ってもいねえし、チンピラが代金肩代わりもしてねえだろ」

「何を言っているか知らんが、金はしっかり払ってもらう」

「だから! 払ったろうが! てめえが手に持ってるそれはなんだ!? 俺の財布だ! 俺の全財産だ!」


 おい、マジでいい加減にしろよ。いい加減にしねえと、うっ。……いい加減にしても吐くぞ。


「その全財産が全然足りないから言ってるんだ」

「ああ!? 足りない? んなわけ……」


 ちょうどその時ミイナと目があった。目が合うなんてもしかして、俺のこと……。あっ。目逸らされた。結構なスピードで逸らされた。目逸らされたし、なんだその微妙な表情は?


「これ明細書」

「明細? …………十五万?」


 十五万って何これ? 十五万ってあれ? 日本なら諭吉さんが1五人? 十5人? 俺の財布には諭吉さん八人も居なかったと思うんだけど? 


「お客さん理解して頂けました? あと八万足りないんですよ。足りないのにお客さんは店を出ようとしてたんですよ」

「……ミイナ?」

「…………好きなだけ頼めって言われました」

「いや、お前、好きなだけって、いや、それも限度ってもんが……」

「お客さん。払えないなら体で払ってもらうしかないですね」

「え? いや、あっー!!」


 こうして次の日から四日間ミイナと二人で皿洗いをしていました。

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