第17話 お茶は日本茶が一番

「さて、折角ミイナが訪ねてきてくれたのです。お茶をお出ししましょう」

「おい、その前にこの拘束解けよ。いつまで俺は芋虫でいりゃいいんだよ」


 教会本部にこいつに会いに来たのはいいが、いつまで俺は拘束されなきゃいけねえんだよ。とっとと解け、クソ野郎。お茶の用意なんかしてんじゃねえよ。


「あなたは地面に這いつくばっているのがお似合いでは?」

「お似合いじゃねえよ! いいのか!? 自分でこの拘束解くぞ? 当たり一面真っ赤な血の海になるけどな!」


 わざわざこいつに解いてもらわなくても、この程度の拘束なんか簡単に解ける。体をバラバラにすればいい。拘束なんて手足と胴体を結ぶ程度の拘束だから、体をバラバラにすれば解ける。汚すのは悪いと思って言ってやってんだぞ。人の肉片なんか掃除したくねえだろ?


「まったく、うるさいですね。少しは大人になられては?」

「お前よりも二百も年上だっての! それに俺は永遠の十七歳なんだよ!」

「知力の上昇は望めないと」

「誰がそんなこと言った!?」


 このボケ、解く気がねえなら、あ、やっとかよ。ふう。まったく、客人に対してこんな拘束するとかあり得ねえだろうが。


「どうぞ。お座りなさい、ミイナ」

「はい、失礼します」


 はっー、やっと座れるのかよ。誰かさんのせいで体バキバキ……、おい。俺の椅子は? 


「座れと言ったのはミイナだけです。あなたは立ってなさい」

「客を立たす? てめえが立てよ」

「わ、私立ってますのでどうぞ!」

「ミイナは座ってなさい」


 客人に椅子さえも出せねえのか? 客はミイナだけってか? 俺は不審者か? 確かに不審者と言われれば否定しにくい格好してるが。


「ちっ。まあ、そんなことより、……あいつらと魔王が復活した」

「……ええ。知っています」


 ユリアスがついと指を降ると、俺の前へ椅子とお茶が用意された。始めからそうしとけよとか思いながらも、その椅子に腰掛ける。


「お前のとこにも来たのか?」

「来ましたよ。ここにね。驚きすぎて彼らとお茶をしてしまいました」

「余裕じゃねえか」


 その余裕っぷり腹立つな。俺なんて頭回らなくて何も出来なかったのに。


「余裕なんて全く無かったですよ。パニックになり、自分を落ち着かせようと思い行ったのですよ。まさか乗ってくるとは思いませんでしたが」


 あの魔王がお茶ねえ。デカイ図体で小さなティーカップ持ってるのなんて想像すると笑えるな。ぶっ殺したくなる。


「あいつらは全員本物か?」

「さあ。そこまでは分かりません。魔王フランシス以外は一言も発しませんでしたし、お茶にも手を付けませんでしたね」

「何かしらで縛られてるか、お前の出す不味い茶なんて飲みたくなかっただけか。……後者か」

「彼らは幼稚なあなたとは違いますよ」


 誰が幼稚なんだか。ずずーっ。うーん、デリシャス。


「見なさい、ミイナ。これがマナーのなっていない大人ですよ」

「うるせぇ。マナーなんて俺より年下だろうが。年下は年上に従え」


 マナーなんてまだ生まれて百年もいってねえだろ。俺なんてもう千年、ってそんなことはどうでもいいんだよ。


「それより、あいつらはどうやって生き返った? 死者蘇生の魔法なんてねえだろ?」


 死者蘇生の魔法は存在しない。それは分かってることだ。なぜなら、出来なかったからな。


「分かりません。私達が無いと思ってただけで、誰かは出来たのかもしれないですね」

「誰か? アリーとエミリアですら出来なかったんだぞ?」

「アリー、エミリア……、もしかしてあの大戦の英雄ですか!?」


 ミイナが驚きの声を上げる。最近驚いてばっかだな、ミイナ。まあ、無理もないか。四百年前の大戦の英雄様だもんな。


「そうだ。ミイナも会っただろ? 魔王と一緒にいたあの三人。あれが、四百年前にあった人魔大戦の英雄、アリーにエミリアに、ルーカスだ」


 ちょうどいい。ここで新たに出てきた用語の説明をしておこうか。

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