第4話 幽霊って現世にいる霊のことを言うらしい

 俺、怒ります。悪しき町長に正義の鉄槌を! 正義って個人によって違うし、この場合の正義は俺の気分です。


「では、金以外でどう……、なんだ? 急に暗く……」



「なあ。あんたは幽霊って信じるか?」


「この声は……。シオン=スクートか! どこにいる、姿を見せろ! これはお前の仕業か! なにをやった! 他の者はどうした!」

「他の奴らには退場してもらったさ。いや、俺たちが退場したが正しいな」

 

 明るい断頭台のある世界から、暗い何も無い世界へ。いきなりの場面転換に戸惑っている町長の前に呼ばれたし登場してやる。


「貴様! ここはどこだ! 何をした!」

「どこで何をしたってそりゃ、あ。あらあら、町長ったらもうお友達作っちゃってまあ」

「友達? 貴様何を言っておる!」

「なにって、いるじゃん。町長の隣にお友達が」

「何をっ、うわあああ! な、なんだ!? こいつはあぁ!?」


 まるでお化け屋敷でお化けに会ったような反応しちゃって。それ失礼だぞ。そのお友達だって昔は生きてたんだから。


「おお、町長大人気。次から次へと新しいお友達来てんじゃん。おっと、俺はもう戻らしてもらうから、遊ぶならあっちに行ってくれ。そうそう。じゃ、町長。お先に失礼」

「ま、待て貴様! くそ! 離せ馬鹿ども! この、あ、ああ? な、なんだ、これは……、」

「ああ、言い忘れてたけどここに長居はしないほうがいいぜ。ここにいるやつらに食われちまうからな」

「ぐっ! うぐ、く、食われるだと……?」

「そっ。ここは影世界。肉体が死した魂が集う世界。まっ、ちょっとちがうかもしれねえが幽霊の世界みたいなもんだ。でっ、その幽霊どもはあんたと俺みたいな生きてるやつから生気を奪い取るわけよ。だから、長居しないほうがいいぜ。わかったか? そっ、まっ、でっ、だ」


 影世界。霊魂たちが集まる影の世界。冥界って呼ばれたり、黄泉だのあの世だの、地獄とかいろいろ呼ばれる死した者の世界。その世界に俺が唯一使える魔法の影魔法を使って町長をご招待。因みに使える魔法は影魔法一種類だが、影魔法にも色々種類はある。魔法が一種類しか使えないというのは嘘ではない。俺はもう帰るから、町長はそいつらと仲良く遊んでてくれ。


「待て! ぐあ、ま、待ってくれ! 助けて、儂を助けてくれぇ!」

「ああ、うん、わかった。行けたら行くー」

「は、待て、行くな! 儂を助けろぉ!!」

「うんうん。気が向いたら連絡するねー。じゃあねー」

「たす、あ、ああ、あああ……」


 ……ふう。おおう、太陽が眩しいねえ。影世界から帰ってくると毎回太陽って偉大だなって思うわ。俺も太陽になりたいもんだ。


「町長!? 町長が倒れた!? お、おい! 誰か医者を呼んでこい!」


 ああ、町長まだ帰ってきてないんだ。こっちとあっちじゃ時間の流れ全然違うし、こっちじゃまだ数秒ぐらいだけど、あっちじゃどれだけ時間が経っているのやら。最後なんか断末魔みたいなの聞こえた気がするけど大丈夫かね?


「はいはい、ちょっとごめんよ。医者です。医者です。すべての怪我をつばで治す奇跡の腕を持つ医者です。おっ。ご機嫌いかが? 町長。ぎりぎりこっちに戻ってこれてよかったな。もう少しであそこの仲間入りだったぜ?」


 医者のふりして兵士達に囲まれている町長の元へ。ちょうど町長も目を覚ました。ちょうど町長って言い難くない?


「……あ。あ、あ、うあああああ! ああああ! 助けてくれぇ!!」


 目を覚ました町長は叫びだし、どこかへと走り出した。あーあ。あの様子じゃあの世界に片足突っ込んで抜けなくなったな。ご愁傷さま。まあどうせ、突っ込んでなくてもあと十年もたてばあっちにいくことになるんだから予習できてよかったってことで。


「町長意外と足早えなぁ。……何? おまえら町長追わなくていいの? それとこいつ処刑しなくていいの? 断頭台ならスタッフがきれいに平らげといたからきれいだぜ。ほら、やることいっぱいあるだろ。俺なんか囲ってる場合じゃないよな。はい、じゃどいたどいた」


 町長を追わずに何故か俺を囲っていた兵どもを押しのけ輪の外へ。なんで俺を囲ってたんだか。あ、俺が医者じゃないってバレた? 何故だ? 白衣か? 白衣を着てないからか? そう言えば言ってなかったが俺はちゃんと服を着ている。決して全裸じゃない。なんか動きやすそうな男性服だ。細部やデザインはご想像にお任せする。色は黒とだけ言っておこう。因みに手ぶらで武器は持ってない。


「待て! 貴様町長に何をした!」


 ああ、もう。何も言わずに俺の旅立ちを見送ってくれよ。俺、この町出てここから一週間ぐらい歩いた先にある商業都市に行こうと思ってるんだよ。もうこの町にはお前らが生きてる間には戻ってこないから黙って見送ってくれよ。


「答えろ! 返事次第では容赦はしない!」

「……さっき首ちょんぱされても死なないの見てたろ。もうほっといてくれよ。ほっとかないって言うんなら、……町長と同じ道を辿ることになるぜ?」


 少し脅してやったらすぐに黙って俺のことをもう見て見ぬ振りだ。なんだよ。なんでお前突っかかってきたんだよ。文字数か? 文字数稼ぎか? せっこいな。


「まあいいや。次は商業都市だな。これから一週間歩くわけだが、多分全部カットになるな」


 野郎一人が只々歩いてる画なんて誰も見たくねえしな。要らねえものはカットだな。それじゃあ、次会うときは一週間後に! 商業都市で!!

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