お題【相転移】【旗あげゲーム】【不特定多数】【見知らぬ天井】

 幸福の最小公倍数 : ホラー暗め

 社会は、その他大勢でできているの。

私とあなたの物語は、基本的にはその他大勢に分類される。

ねぇ、君だってそう思ってるでしょ。

 

 誰とも知らない烏合の集団の中で、支持された通りに機械的に、同じ旗を掲げた人が正解で勝者で、正義マジョリティなんだって。

それが世界の最大公約数。

ああ、皮肉だね。

眩しいほどの現実セカイが、当たり前って呼ばれるんだね。

 

 だから、私とあなたの物語は祝福なんてされない。

3人の賢者も現れないし、8人の仙女の席が足りないこともない。

生まれ落ちる前に、死んでいるんだもの。

 

 ……ねえ、でも、君だけは祝福してくれてるって信じてたんだよ。

例えどんな壁だって乗り越えてやる、なんて。

嬉しかった、うれしかった、うれしかったの。

他の数なんて要らない、あなたと私の最小公倍数が幸せだって。

 

 ……そのまま、嘘で私を塗り固めて、いっそ凍えさせてくれたらよかったのに。

それとも、そのまま溶かした嘘で、飲みこんで溺れさせてくれたらよかったのに。

 

 

 ああ、そうそう。

もう見えてないだろうから言っておくね。

六畳一間、私が執着した君の流刑地だよ。

終着点にするには、ちょっと質素すぎるかも。

 

 ……ん。もう声も出ないかな?

代弁してあげよっか。

「どこ?」かな?

んー、違う?

じゃあ、「やっぱり愛してる」とか……。

そんな強く否定しないでよ。

傷つくじゃん。


 ……へへへ。

綺麗な赤色。

 



















 最期に言わせて。

大好きだよ。

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