お題:可算無限集合

「終わったァ?」

「終わるかよ、馬鹿」


 背中に感じる温もり、まだ相方が生きているという証。

小さい溜め息と、銃弾の装填音。数えきれないほど繰り返した動作ではあるが、まだ永遠には至らないだろう。ぼろぼろになったコンクリート作りの部屋の中、紫煙か銃煙かもわからなくなった臭いに、ただ溜め息をつく。


 ――大丈夫、まだ戦える。


 近づく緩やかな足音。怠慢な死神の気配。今度は背中で小さく、溜め息が聞こえた。咥えていた煙草を吐き捨て、抱えていた銃を大げさにリロードする……数えきれないほど繰り返した動作。援軍はない。上限もない。ただ、死ぬまで繰り返す最小限の無限。


 声にならない叫びが、ドアの向こうで響いた。飽きるほどループされている、数えきれないほどの繰り返し。ログアウトできなくなったオンラインゲームで、死に戻りを確かめる勇気のない二人は、ただ際限なく再現する。


 ――永遠を信じてはいないけれど、終焉が生きているうちに訪れるとも限らない。

これは、私と彼女の、円環の記憶。

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