タイトルで書く遊び
投げられたタイトルでなんか……書く。
お題:日本の給料と統計学、及び魂の実在について
……統計的に見る間でもなく、私の給料は平均賃金を大きく下回るのだろう。
笑顔を貼り付け、心をすり潰し、コミュニケーションと並列処理と医学的観点を重点的に求められる仕事。その報酬はきっと、今つけっぱなしになっているテレビが垂れ流す議会風景の隅で、特に発言もせずに眠りこけている政治家たちの10分の1にも満たないのだ。
ゆっくりと手を動かし、スプーンで掬う"食事"はどろどろに溶かされている。粘度の高い"それ"は元が麺類であることすら忘れたようで。
……それを嘆くつもりはない。
あるいは統計的に見れば、より劣悪な環境で心を賃金と引き換えている職種だってある。
あるいは統計的に見れば、より過酷なコミュニケーションと引き換えに対価を得ている職種だってある。
あるいは、統計的に見れば――。
……そう、上など見て生きていけはしない。あるいは神なる存在があれば、「来世のために徳を積む」などと自分を殺せるのだろうか。
咀嚼を終えた口に、そっとスプーンを運ぶ。どろりとした"それ"でなければ、きっと死神は一足飛びに歩み寄ってくるだろうから。
……下を見て生きていては、努力も向上心も生まれはしないのだと誰かが言っていた。努力が報われるなら、私だって――!
「すまないねぇ」
ふと、風景が戻る。嫉妬の炎か、単なる自己憐憫か……いずれにせよ自分の視野を狭くする思考を取り除く、かすれたような声。
「もうちょっと元気だったら、私だってあなたの手を煩わせることもないのにね」
言葉が、少し震えている。ああ、その台詞はやめてくれ。好きでこうなったわけではないのだろうに。誰に許しを乞う必要があるのか。それとも、考えている表情から嫌な気持ちが伝わってしまったのかもしれない。
黙って首を振って微笑むと、安心したように彼女はそっと笑顔を返してくれた。
……思うに、私が私でいられるのは給料に悩む時と、誰かの言葉に心が揺れるとき。つまり、私が存在しているのは誰かとの相対関係に思いをはせている時なのだろう。独りぼっちじゃいられないもんな、なんて考えている間に、今日も1日の"仕事"は続いていくわけで……。
あ、またそれは別の話。たまにはこうやって真剣に考えてるんだよ、なんてただのアピールだよ。小難しいことは横に置いて、剝き出しの魂をぶつける仕事。
ま、社会人なんてそんなものだろうなんて。私は今日も世界の隅っこで溜め息をつくのだ。
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