第22話

「おぉ、こりゃまたデカイな」


あれから2日経ち、俺とスーは入学試験を受ける為にセブニス魔法学園の後ろに立っている、体育館に来ていた。


学園があの大きさなら体育館もそりゃデカイわけで、縦横500メートル以上はありそうだ。


体育館の中に入ると、これから入学試験を受ける人達が列を作って並んでいたので、俺とスーも並ぶ。


「これから諸君には入学試験を受けてもらう!」


いつ始まるのかなーと待っていると、中年くらいの男の人が、前の台の上に上がって話し始めたのでさっきまで騒がしかった体育館内から声がピタリと止んだ。


「試験は2つあり、まず1つはここに魔力で覆った壁がある。この壁に向かって全力で得意な魔法を打ってくれ。壁に当たるとその魔力の量が数値化されて表示される。試験者の年齢での規定の魔力量を超えたら1次試験は合格だ。落ちた者はそこで失格。帰ってもらう。2次試験は午後から開始予定なので、その時に説明する」


男が台から降りると、並んでいる者から試験が始まった。

1度に20人が受けて、魔法を打つだけなので1分くらいで未来が決まる。怖いね。


試験をする所の上にはモニターが設置されている為、誰が強い魔力を持っているかなど比較できる。今見てた中で最高魔力は330だった。出した人は俺より歳下っぽい男の子で審査員も驚いた表情をしていた。


表情から察するに、結構凄かったんだなーくらいしか分からないので、どうやってギリギリ合格出来るだろうか悩んでいると近くで男2人が話していたので耳を向ける。


「これって合格基準って魔力何点で合格なん?」


「僕達は15歳ですから、50くらい取れば合格は出来ますね。Kクラスにですけど」


なんて偶然!ありがとう!同い年の人.....め、眼鏡!この人眼鏡をかけてる!やっぱり眼鏡をかけてる人は凄いよ!てかどこで知ったよ、その情報


と何てことを思っていると、突然周りの人達が騒ぎ出した。

何事かと思いモニターを見ると、銀髪の美少女がいてその美少女が叩き出した魔力の数字は1600だった。


「お、あの子絶対ヒロインだわ」


モニターを見た男性陣はほとんどが目を奪われていた。

いや分かるわ。超可愛いし。


「グフフフッあいつはおでの物だ」


あかんっ!デブで貴族っぽい奴が下卑た目で見てやがる


「次の方どうぞー」


「グフフフッおでの出番か」


落ちろー落ちろー落ち....やったぁあ!落ちたぁあ!


デブの数字は23だった。デブの見た目から考えて、高等部であることは間違いないので落ちたはずだ。


「な、なんでだ!この壁壊れてるんだっ!そうに違いない!」


と壁を蹴り出すデブ。そこへ学園の関係者が数人出てきて、デブをどこかへ連れて行ってしまった。


「ゆーたー」


デブが連れて行かれるのを見ているとスーから声がかかった。


「ん?どうした」


「スーはどうすればいーのー?」


「えっとな、あの人いるだろ?あの人くらいの火を出せばいいよ」


ちょうど20人の中に火を使う魔力値50くらいの人がいたのでその人を参考に説明する。


「わかったー!」


スーがそう言ったところで、ちょうど俺達の番になった。


「あ!スー!ちゃんと昨日言った通り詠唱しろよー」


「うん!」


無詠唱だったら1発で、Aクラスになるらしいからな


試験場....まあ体育館の中なのだが、布みたいなもので仕切られており中へ入ると男の採点者が椅子に座っており、前にはペンと紙が机の上にあった。


「では、どの魔法でも構いません。そこの位置から全力で魔法を打ってください」


「えーっと闇夜を照らす炎よ、えっと...この手に集い力を示せ火球ファイアーボール


危なげな感じで詠唱をしてからスキルで威力をコントロールして火球を撃つ。

魔力約50のへなちょこ火球は真っ直ぐ壁に向かって飛んでいく。そのまま壁に当たると、ボッと音がなり消えてしまった。


魔力数値を見ると53だった。


「合格です。では一次試験合格の印を刻みますので、ステータスカードをお渡しください」


カードを渡すと、採点者の人はペンを取り出してカードに字を書くと、字が消えていった。


ステータスカードを受け取り確認すると称号に《一次試験合格者》と追加してあった


「次は午後1時からになりますので遅れないようにお願いします」


試験場を出て、モニターを見るとちょうどスーも終わったみたいで、魔力数値は49とちゃんと調節出来ていた。


そしてスーを見る男達の目は相変わらずだった。


「スーお疲れ。よくできたな」


試験場から出てきて、キョロキョロと辺りを見渡すスーに声をかける。


「ゆーたー!」


俺を見つけるとすぐに飛び込んでくるスー。


「そういえばスー、カード持ってないけどどうしたんだ?」


「えーっとねー、スーのかおみればわかるから1じにここにきてだってー!」


ま、スーみたいな美少女だったら中々忘れられないから一々合格の紙とか作る必要がなかったんだろうか?


「そかそか。じゃ、ちょっと早いけど昼飯食いに行こうか」


「うん!」


学園を出て昼飯を、と商業区に向かう。

昨日行ったところなので、道は覚えている。


迷うことなく、商業区の飲食店が立ち並ぶ場所へついた俺達。


「今日は何を食おうか」


「スーきのーのメンラーたべたい!」


メンラーとは、出汁を取ったスープに麺が絡んであるラーメンみたいなやつだ。

値段は300パルと安い割にめっちゃうまくて、スーも少食なのにお代わりをするほど気に入ってしまった。


「美味しかったしなぁ。じゃあそこにしようか」


俺も気に入ったので、多くある飲食店から2回目もメンラーの店にする事にした。


ここからだとメンラーの店....名前は確か、コーヤンだったかな。そのコーヤンまで10分くらいかかるので歩き始める。


半分くらいまで歩くと、何やら前で人だかりが出来ていたので、近くまで行ってみると筋肉の塊と言ってもいい程ムキムキな男とその横で二ヒヒと笑っている小柄な男。そしてムキムキ男の前で倒れている青年がいた。


3人を囲んでる群衆の1人に声をかけると、どうやらあのムキムキ男を倒せば大金貨1枚が手に入るという。参加費は大銀貨1枚で怪我を負っても責任を負わないらしい。


ムキムキ男のステータスを見るとステータスが全て400超えでAランク並みの強さだった。因みに倒れている青年は50ちょっと.....何故挑もうと思ったのか。ステータスなんぞ見なくても雰囲気で勝てないとか思わなかったのか。


「金が30万切ったし、ちょっと稼いでこようかな」


やっぱりお金は多く持っとかないとな。


「参加する奴はいないかぁ!倒せば大金貨!大金貨だよ!こいつを倒してリッチになろう!」


「はいはーい!参加しまーす」


「おいおい、ガキかよ。一瞬で終わるんじゃねぇの?」


「ははは、こりゃ見ものだ。がんばれよ〜!」


無謀だと呆れる奴や俺がボッコボコにされると分かっていて応援する奴が大半を占めていた。


「スーちょっとここで待っとけよ〜。すーぐに終わらせてくるからな」


「はやくもどってきてね」


「おうとも」


群衆が道を作ってくれたのでそこを通って、小柄な男の前へ行き、大銀貨を払う。


「へへっまいどあり〜」


それからムキムキ男と向き合うといかにも余裕と言いたげな表情を向けてきた。


「それではレディィィィィッ...ゴ.....は!?」


小柄な男の合図と共に、ムキムキ男を手加減した威力で殴る。ムキムキ男は数メートル飛び群衆を巻き込んで地面に激突した。そのままピクリとも動かない。


周りはさっきまで騒がしかったのに急に静かになった。


「ほい。大金貨もらうよ」


驚きで硬直している小柄な男の手から大金貨を取るとスーのところに戻る。


「さっ、行こうか」


「メンラー!」


俺達が歩き始めて数秒後、背後で大音声が上がった。


因みに今俺は偽装を発動中だ。いや、常に偽装は使っているが、いえば偽装の二重掛けといったところか。今の俺はムキムキを倒した子供として有名になるだろうけど、学園に通うレン・ブレイザーは何ともない。


「今日は昨日よりいっぱい食べていいからな〜」


「うん!」

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