第6話

6話

ドラゴンの首を斬り飛ばすと、ドラゴンは粒子になって消えた。


「お、パル大量に増えたしレベルも結構上がったな。」


「え、マジで〜見せて見せて〜」


今鑑定で見ると怪しまれるので、太一のステータスカードを見る。


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鈴野 太一 15歳 レベル48


職業:ヒューマン


職業:勇者


HP:310


MP:200


攻撃力:180


防御力:150


素早さ:170


命中率:130


魔法攻撃力:160


スキル

言語理解

火魔法Lv1

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太一のステータスカードを見た瞬間に俺と太一は、ハッ!と思い出す。


「「本当のステータス見れねぇじゃん........」」


「何でお前が忘れてるんだよ」


「だって俺が見たら、本来のステータス表示されるんだよ!自分には見えてるから、本当は他人には見えなくても見えるって思ってしまうだろ」


「成る程な。じゃあ本来のステータス教えて〜」


「えっとな、レベル48に上がってーー」


レベルは隠蔽にも作用されるのか。隠蔽時のステータスも48だったことを思い出す。


「オール57000だったわー」


うわー末恐ろしいわぁこの勇者。魔王も瞬殺じゃないっすかねー


「へー」


「あれ?驚くかと思ったんだが」


「たかっ!?ヤバいな!!もう絶対世界一だろ!!」


あぶねぇ、自分のステータス見慣れて全然驚けないからヤバかった。


「お、おう」


急に大声で褒め称えたから、太一が若干引いている。


「そろそろここ出て王国へ戻ろうか......ん?」


「そうだな.....ん?」


「「学校の連中がいねぇ!!」」


本日二度目のハモりだ。どうでもいいけど。


「これあれじゃないか?ドラゴンにビビって皆逃げたか、食われたか」


「前者の場合だったらヤバいぞ。皆が王国へ報告しに行って冒険者達が一斉に来るかもしれない。そこで俺達が出たらどうする?誤魔化せると思うか?俺のレベルが48まで上がってること。そして何より俺達は勇者だ。ステータスカードには表示されない何かがありその力でドラゴンを倒したと思われるだろう」


確かにヤバい。秘密にしてる力の詳細がバレることは無いにしても、力があるとバレてしまったら色々と厄介なことになりかねない。


「後者の確立は超低いしな」


後者の場合、ドラゴンの周りに血やら贓物やら巻き散らかっているはずだ。しかし血はあったものの約200名もの大量の血の量はなかったし贓物もなかった。。つまり前者が正解だろう。その事は太一も気づいてる。


「被害者面してダンジョン出るっていうのは?」


恐怖で猛ダッシュで走ってきた人とかを演じれば、何とかなると思った。


「ダンジョンに潜るっていう手もあったんだが、それだと優汰が死ぬかもしれないしな。だがさっきも言った通り、被害者面しても、レベル48まで上がってることはすぐにバレる」


つか今更だが、隠蔽ってステータスの偽造だから弄れるんじゃないの?という疑問が浮かんできたからそれを伝えてみた。


「お前のスキルでステータス変えれないのか?」


「あ......」


太一はマヌケだった。


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太一がステータスを弄ってレベル1にして、さて行くか、となった時俺はまた、ある疑問が浮かぶ。


こいつの容姿の説明はどうするんだ?


「おい太一、念の為聞くけど、自分の容姿についての説明をどうするかは決めてるよな?」


「え!?........お、おう!!決めてるぞ!」


ん?一瞬驚いてた気がするが....まあ大丈夫か。


「よし、じゃあ1階層まで取り敢えず上がるか。」


「そ、そうだな........ヤベェ説明何も考えてねぇよどうすりゃいいんだ」


最後の方はボソボソ言ってて聞こえなかったけど、気にしないことにした。


一階層に上がるまでに多くの魔物と対峙した。行きの時は、何もいなかったがそれは恐らくあのドラゴンのせいだろう。


「一回層に着いたな。よし太一、恐怖に怯える少年を演じろ。」


「う、うわー、た、たすけてくれー」


うわぁ、何っつう棒な......


「おい真面目にやれ」


「うわー助けてーくれー!」


ダメだこいつ.......いや待てよ、怯えるってことは別に喋らなくてもいいんじゃないか?


「よし、太一、お前は喋らなくていいから、ずっと何かに怯えた顔をしとけ」


「おう!それなら楽だな!」


「じゃあ行くぞ」


そう言って俺達は全速力で逃げて来た感を出しながらダンジョンを出た。


そこにはやはり予想通り、ガルドや王国の騎士や強者の雰囲気を醸し出している冒険者達で溢れかえっていた。数人だが生徒達もいる」


「大丈夫かっ!お前達!ドラゴンはどうした!?」


皆を代表してガルドが声を掛けてくる。


「.....知らな...い。ドラゴン..が急に襲いかかってきて.....攻撃したけど....全く通用しなくて、全速力で逃げて来ました....」


見よ!俺の名演技を!途切れ途切れに話しながら怯えた顔をすることで完全な被害者面をしてるぜ!太一も俺に言われた通り、怯えた顔をして、震えている。


「そうか。勇者の人数を数えても2人いない事に気付いて、ドラゴン討伐と一緒に救出に行こうと考えていたところだが、よかった」


心配してたのだろう。ガルドは安堵の息を漏らしている。


「ところで太一だったかな。その髪と目はどうした?」


俺は太一の方を向き、目で合図した。すると太一は何故かビクッと体を震わせていた。


「えっと....その.........」


嘘だろ......まさか考えてない、とかじゃないよな?


「...........」


嘘だろォォォオ!?


「おい太一どうした?何故そんな髪と目になったか聞いている。」


「えっとガルド隊長、こいつまだ怯えてて話せないと思うので、少し休ませたほうがいいんじゃないですか?」


「それもそうだな。あのドラゴンがいたんだ。怯えるのも無理はない。」


そういって俺達は木影に行き休ませてもらう事にした。慌ててフォローしたが、何とか上手くいったようで安心した。


「悪い。どう説明すればいいか思いつかなかった」


「やっぱりか!ま、いいけど。終わりよければ全て良しって奴だな」


休憩していると、太一を知っている騎士の連中や生徒達が太一の方をチラチラ見てコソコソと話している。普段空気だった奴がこんな目立つ容姿になったら皆見るよなぁ....


「お前初めてじゃないか?こんなに見られるの」


「あぁ、嫌な気分だな。まあ容姿が変わればそうなるのは目に見えてたんだけどな」


「多分、容姿だけじゃないぞ?お前の雰囲気そのものが変わったからな」


今の太一は前の穏やかな雰囲気は無く、太一の事を知らない人に太一を見せたら第一印象は色々と凄そうって思うくらい持っている雰囲気が変わっている。


「お前らよく聞け!これからドラゴン討伐に向かう!お前らも知ってるだろう!ドラゴンの脅威を! 数十年前の悲劇を!あの悲劇を繰り返さない為にここで何がなんでもドラゴンを倒す!」


「「「「「「「オォォオオオオオオッ!!」」」」」」」


ガルドの掛け声に、冒険者達が答える。もうドラゴンいません!とは言えないな。


にしても、数十年前に何かあったのか?数人の生徒達の中に友達がいるから何か聞いてみるか。


「なあなあ三河、数十年前にドラゴンのせいでなんかあったのか?」


「数十年前にドラゴンが王国を破壊し尽くして、その時王国に滞在していたS級冒険者12人とA級冒険者50人で挑んだけど、勝てなかったらしいよ。」


「S級とA級の強さが分かんないな」


「A級は助谷君のステータスの3倍はあるらしいよ。S級に関してはステータス2000近くだそうだ。」


話を聞きながら鑑定で冒険者達を見てたけど確かに1000近くあるやつばかりだな。その中で数人は2000超えてるし。


「あー、なら負けるのも無理ないかぁ」


「?ドラゴンの強さ知ってるみたいな言い方だね」


あ、やっべ口に出してたか。


「いやぁ!?強いなぁ!冒険者達は!その冒険者達を倒すドラゴンは強すぎだよな!?」


「そうだね。とても強かったよ。僕達が戦う前にドラゴンの咆哮だけでほとんど戦意を喪失してね。皆少しのトラウマになってるっぽいんだよ。」


やっぱり、ドラゴンに会ってたのか。


「じゃあなんでお前らがいるんだ?お前らは怖くなかったのか?」


「怖かった。怖かったけど友達が置いてかれてるのに助けに行かないってわけには行かないだろう?」


「ありがとな」


「他の連中は俺知らないんだけど、まさか友達でもなんでもない俺を助けに来てくれたのか!優しい奴らだな!こんな俺を助けに来てくれるなんーー」


「いや、彼らはドラゴンを倒して強くなりたいだけだよ」


「ハハハ....さいですか....」


思い込みが激しかったようだ。恥ずかしい...


「石崎君を助けに来たつもりだけど、無事だったようだし王国に帰ろうか」


「そうだな。帰ろうか」


ドラゴンもういないけどガルドさん!!頑張ってください!!

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