第9話

食堂へ向かうと、俺は腰を抜かした。

食堂は学校で見るような食堂ではなく、ハ◯ー・ポッターの世界の食堂と激似の大食堂だった。


「うわぁ、スゲェな」


俺より少し先に来た生徒も後からゾロゾロと来る生徒も、食堂の入り口に立ち止まって「綺麗」「美しい」などの感嘆の声を上げていた。


「勇者様方、何処でもいいので席にお着き下さい」


声のする方を向くと、昨日色々と説明をしてくれた賢そうな眼鏡がいた。

眼鏡に言われた通り、適当な位置に座る。


「優汰、隣いいか?」


背後から声をかけられ、後ろを向くと太一がいた。


「いいよー」


と声をあげたところで俺は周りが妙に静かな事に気がつく。

周りを見渡すと、全員が太一を困惑の目で見ていた。

無理もないだろう。姿や雰囲気が以前の太一とはまるで違うのだから。


これが、上位カーストの奴だったら、皆躊躇わずに何があったか聞けるだろう。しかし、太一だ。クラス内で空気の太一なのだ。だから、聞くにも聞けずただ見てるだけという状況になっているのだ。


皆ずっと太一を見るので、横にいる俺も当然視線を浴びる。

早くこの状況をどうにかしてくれと思っていると、大食堂の左右の扉が同時に開いた。

扉の開く音に皆一斉に振り向くと、そこにはメイドや執事達が料理が乗った皿を持っていた。

それを皆に配り終わると、メイド達は食堂の隅に並んだ。


料理は、皿の中心に肉があり、肉を囲むように色取り取りなソースが掛けられていて、フランス料理みたいだった。

見た目でモチモチしてて美味しそうなパンもあり、とても美味しそうだった。

食べてみると、肉はジューシーで噛むと肉汁が溢れてきて、周りのソースに付けるとサッパリ味になって魔法のようだった。パンも見た目を裏切らないモッチりさでとても美味しい。


そういえばスーって何も食べないのかなと思って、ポケットをそろっと見ると、物欲しそうな顔でこちらを見ていたのでパンを少しちぎって、サッとポケットに入れた。


あっという間に食べ終わり、他の生徒を見ると皆も美味しいと表情を綻ばせていた。


食事が終わり、皆部屋に帰ろうというところで


「鈴野太一様と石崎優汰様はそのままお待ちください」


と眼鏡に呼び止められた。

一瞬皆こちらを向くが、すぐに前を向き部屋へ帰って行った。


「もしかして、ていうか絶対昼のやつだよな」


「いや、今思えばおかしくね?みんなより遅れてきただけで疑われるのって」


「でもドラゴンいなくなったら当然、最後にドラゴンに会った俺達が疑われるだろ」


「演技完璧だったし、絶対違うと思うんだけどなー」


「いやいや、他の用で俺達2人が止められるって事はありえないだろ」


「それはそうだけどよ」


全員部屋に戻り、食堂に残ったのは俺と太一と眼鏡と王女とガルド率いる騎士達だ。つか王様どこ行ったの?


「お二人に残ってもらった理由を説明します」


そう言うと女王は真剣な眼差しでこちらを見た。マジって感じだ


「お二人がドラゴンに襲われて、ダンジョンから逃げてきたと言ってたとガルドから聞きました。その後でガルド達でドラゴン討伐に向かったそうなのですが、ドラゴンはいなくて、下層に降りたのかと思い15層まで降りたらしいのですがドラゴンの通った痕跡がなかったそうです」


あーやばい奴だ


「鈴野太一さん、石崎優汰さん。ドラゴンはあなた達が倒したのではないでしょうか?」


ほらもうアカン奴ー


「そんなわけないでしょう?いくら僕達が勇者だからと言っても、まだ剣も振ったことのなかった僕達にドラゴン何て倒せるわけ....」


俺がそう言った瞬間、女王が勝利を確信した目に変わった


「ではステータスカードをお見せください。ドラゴンを倒してないのであればレベルは低いはず」


「「はい」」


と言い俺達は普通に渡す。


「・・・なっ!お二人ともレベル1!?ドラゴンを倒したなら数十レベル上がるはずですのに...」


そうです。女王がステータスカードを見せろと言った瞬間に勝利を確信したのは俺達の方でした。てか勝利ってなんだよ..


「だから倒してませんって言ってるじゃないですか」


「....疑ってすみませんでした」


そう言って王女はお辞儀をしようとする、が


「王女様、ちょっと待ちな」


ガルドによって止められる。


「何ですか?ガルド」


「謝る前に俺もちょっと確認したいことがあるんだ」


そう言ってガルドは俺達の方、正確には太一を見た


「太一、昼に俺が何でその姿になったか聞いたよな?今聞こう。何で髪色や目の色が変わったんだ?」


流したと思ってたのに、ここで突いてくるとは。


「えっとですね、ドラゴンに対するストレスでーー」


「お前には聞いていない。俺は太一に聞いてるんだ」


ガルドさんなんか怖いです。つかどうしよう、太一じゃ、この場を凌げると思えない。


「あー...えっと....」


「お前、何か隠してるんじゃないか?そしてその何かでドラゴンを倒したんだろ?」


ヤバイよ太一君。さぁどうする!!


「うるせぇ!この姿になったのは突然で俺は何も知らねぇしさっきから倒してねえって言ってんだろ!」


あ、逆ギレした。太一は部屋を出て行こうとした。

急に太一が叫んだから王女もガルドもビクっとなったがすぐに取り戻すと


「待て!この部屋から出て行ったら、お前を追放するぞ!!」


ドラゴン倒したって認めてもそれは向こう側としてはプラスにしかならないのに、何で敵対視?そして太一を敵に回すとこの国滅ぶかもしれないってのが分かんないのかな?ま、太一が相手するか分からないけど。


「あぁ、良いとも!俺だってこんな城に隔離されたくないからな!!」


そう言って太一は部屋から出て行った。

まあ良いんじゃないか?あいつ元々出て行くって言ってたし。


「へ?あ、ちょっと待て!太一!冗談だ!!」


城を追放すると言えば止まるとでも思ったのだろうが、太一が本気にしたので慌てるガルド

太一が嘘を付いてようと無かろうと勇者なので手放す訳には行かないし、もし太一がドラゴンを倒したならドラゴンを1人で倒せる最強戦力を手放すなんてバカのすることだろう。


ガルドは出て行った太一を全速力で追いかけて行った。


「俺帰って良いっすか?」


「あ、どうぞ」

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