第10話

部屋に戻った途端、ポケットからスーが飛び出した。

スーにかけてあった大小魔法を解くと同時に、ボンッとスーを囲むように煙が立ち込め、煙が晴れると同時に幼女姿になったスーが俺の胸元に飛び込んできた。


「なんで擬人化使ったんだ?」


別に嫌という訳ではない。むしろ最高です!

でも擬人化って一応スキルだしMPとか消費して疲れるんじゃないか?

て、いってもスーのMP10万あるからどんなに高い魔法を連発しても大して疲れないとは思うが。


「だってこっちの方がゆーたをギュってできるもん!」


「スーちゃ〜ん!」


スーがあまりにも可愛かったのでギューっと抱きしめた。娘を持つ父とかが娘にこんな感じの事言われたらたまらなく嬉しいんだろうな。


立ったまま抱きしめていたので、ベッドに腰掛けスーを膝下に座らせて頭を撫でながら、スーのMPが減っていないか確認をした。


MP:100000/100000


あんれぇ?スキルなのに全く減ってないぞ〜?

まあ減ってないならそれでいいんだけど。


スーの頭を撫でていると、スーが「ふわぁ」と可愛い欠伸をした。もう遅い時間だし眠いのだろう。俺は夕方に寝たので全然眠くなかった。


「もう寝よっか」


「うん...寝る.....」


スーを横にさせて布団を被せる。


「ゆーたも一緒に寝ようよー」


「うーん、俺はもうちょっと後で寝る」


「お願い」


俺の服の裾を握って上目遣いでお願いだと?


「しょうがないな!」


即答である。


スーの横に入ると、スーが抱き付いてきた。甘い匂いが漂ってくる。なんでスーって召喚されて、しかもスライムなのに良い匂いがするんだろう。

そんな事を考えているとスーの寝息が聞こえてきた。首をスーの方に向けると、やはりもう寝ていた。


起き上がりたいのだが、スーが抱き付いたままなので動けない。抱き付いている手を退けるとすぐに抱き付き直してきてそれを数十回繰り返して無理だという事が分かり諦めた。


あれから数時間はたったであろう。今思ったがと俺風呂入ってないよな。昨日は突然の事で全く考えてなかったが、今考えると色々な事を思い出す。


太一は城を出たのだろうか、それともガルドに説得されて部屋に戻ったのだろうか。


俺も早く城を出て美少女と冒険したいなぁ。

しかしどうやって城を出ようか。全く考えてなかったな。

普通に出させてくれるとは思えないし、事故に合う振りをするしかないか。ラノベを読んだ限りじゃ大体そういう系ばかりだったし。

などとそんな事を考えていると瞼が重くなってきた。窓を見ると日が昇り始めていた。


夕方寝たとはいえ、さすがに眠くなってきたが今寝たら起きれない気がするので、目を擦り眠らないようにする。


動けないし眠いのに寝れないという地獄の時間が続いて1時間はたったかな?と時計を見るとちょうど1時間たっていた。


「スー朝だぞー」


そろそろメイドが来るから、スーを起こそうと体を揺さぶりながら声をかける。


「んぅ...」


目を擦りながら半分寝ている顔をこちらへ向けた。


「おはよーゆーた」


「おう、おはよー」


挨拶をした後、スーに擬人化を解いてもらい大小魔法で体を小さくした後ポケットに入ってもらうと、部屋がノックされメイドが入ってきた。


「石崎様朝食の時間になりましたので食堂の方へおいでください」


とそれだけを言うといつものようにすぐに何処かへ行ってしまった。


俺もすぐに準備を済ませ、食堂へ行くと生徒がほとんど揃っていた。適当な席に座って待っていると、いつの間にか生徒が揃ったみたいで、ガルドはそれを確認した後話し始めた。


「皆、2つ伝えたい事がある。昨日太一が城を出て行った。大事な仲間が出て行った事を悲しく思う。俺がそうなんだから俺よりずっと長く太一といたお前らはもっと悲しいんだろうなーー」


あ、太一城を出れたのか。俺も早く出たいなー。

皆を見るが、たいして悲しんでいる人はいなかった。


「ーーそしてもう1つは昨日はダンジョンに訓練をしに行ったが、ドラゴンがいたせいで、訓練にならず更には皆に恐怖を与えたかもしれない。俺達も想定外だった。しかしみんな安心してほしい。あの後、見に行ったらドラゴンは倒されていた!」


ドラゴンへの恐怖で皆怯えるが、それは一瞬でドラゴンが倒されたという事実に驚く皆。


「え!?あんなにでかい奴が!?」


「やばいわぁ!倒した人凄すぎだろ!」


「倒した人ばけもんだろ」


「俺もいつか倒してやる!」


と口々に言う生徒達、俺としてはトラウマって聞いてたからもっと怯えてると思ったんだが、勇者という職業がメンタル面を強くしてるんだろうか。


「いつかお前らにはドラゴンを倒せるようになってほしい。だから今日もダンジョンに潜ってもらう!」


生徒達は皆ヤル気を見せる。ダンジョンに始めて行く前みたいだ。


「では朝食を食べたらすぐに出発だ!」


「「「「「はい!」」」」」


ーーーーーーーーーーーーーーーー

再びダンジョンの10階層に来てから、昨日と同じ事を説明された俺達は各チームを組んで散らばった。俺は拓也や他の友達に誘われたが、断っておいた。


なぜかって?今日城を抜けるつもりだからな!


1人になった後、ステルスを使って地上を目指す。途中、生徒と魔物が戦っている姿を見たが生徒が圧倒的だった。剣なんて今日含めて二日しか持ってないのに、慣れた手つきで魔物を斬っていた。


ダンジョンから出た後、城下町に戻る。城は南側端にありダンジョンは南側にあるので城の北側にある町を俺達は一切見れなかった。

城の南側の門から入った後、城の中を通って城の北側の門から外へと出る。ステルスはまだ解いていないの誰にも見つかることはない。


「おーすげー」


町を見た俺の感想はこれだった。どこを見ても屋台だらけで、冒険者達や商売をする人達で大変賑わっていて、日本のお祭り以上にすごかった。


俺は木の裏側に回り、誰も見ていない事を確認すると、『偽装』でそこら辺にいる人の格好をする。スーだけには幻をかけないでおいた。


『偽装』を使ってるから絶対バレないし、この町に暫くいようかな。出たくなったら出ればいいし。っても近くに町はあるんだろうか?

見かけた親切そうな冒険者に聞いてみる事にした。


「すみません。この城の近くに町ってありますかね?」


「うーん、町はないけどこの城から北に数キロ歩くとナラシャっていう名前の村があるよ?君冒険者だよね?冒険者なら誰でも知ってると思ってたんだけど」


「まだ冒険者になりたてで。」


「そうなんだ!冒険者の道は厳しいよ!是非頑張ってね!」


「はい!ありがとうございます!」


いいなぁ。こういうのに憧れてたんだよ〜。

ていうか今言われて気づいたがまだ冒険者登録してなかったな。


てことでギルド探すか。

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