第3話

「今日は訓練の為にダンジョンへ潜ってもらう!」

 朝、メイドに起こされた俺は用意されていた朝飯を食べ、訓練場へ来ていた。ほとんどの生徒が揃っており、生徒達が見る方には、図体がデカイ鎧を着た人が何か言っていた。

「すみません。ガルド隊長、質問いいですか」

「なんだ、少年よ」

「あ、大友と言います。えっとですね、なんで訓練場があるのにダンジョンへいきなり行くんですか?」

「今回のダンジョンはな王都の近くにあって上層付近は比較的簡単なんだ。ここの兵と戦うよりも魔物と戦った方が効率がいい。」

「はいはーいダンジョンってなんですか?」

 昨日聞けなかった人達が次々に質問する。

 てかあの筋肉ダルマ、ガルド隊長って言われてるってことは、隊長なのか、大凡騎士団隊長かなんかだろうか。

「待て待て、お前らにダンジョンと魔物はなにか説明する、ダンジョンと魔物はーー」

 ガルドがダンジョンと魔物について説明し終わった。だいたいこんな感じか


 ダンジョンとは、数百年前に出現した迷宮


 魔物は魔王がいることで無限に出現する


魔物の頭上にはHPが表示されている。


 ダンジョンの中は魔物がうようよいる。殺しても、魔力が集まった溜、通称魔力溜まりがある限りダンジョン内の魔物は減ることはない。一定の時間をすると魔力溜まりから魔物が生まれる


 魔物は殺すと、パル(この世界の金らしい)やアイテムを落とす。パルやアイテムは倒した人のステータスカードに入っていく。ステータスカードにはステータス提示や身分証明書だけでなく、店などでパルを払う時ステータスカードの中に入ってるパルから引き落とすことや、アイテムを無限に収納出来るらしい。便利なカードだな


 ダンジョンの中はダンジョンによって違うらしい


 ダンジョンは100層まである。


 ダンジョンは下層に行けば行くほど魔物が強くなる。


 ダンジョンの50階層ごとにボスがいる。


 ダンジョンは30層まで潜れたら超一流の冒険者と言われ20層まで潜れても一流と言われる


 今回行くダンジョンは36層までがこの付近にいる冒険者の限界らしい。俺達は10層まで潜る予定


「では各自準備をしろ。1時間後に出発する。」


50層まで潜った事ないのになんで知ってるの?ダンジョンが100層までってなんで知ってるの?と疑問を持つ人がいたが、聞くと古文書にのっていたらしい。


ガルドの話を聞いて、100層とっぱしてやらぁ!と意気込んでいる人が結構いた。


 皆自室へ戻って行ったので俺も戻ることにする。部屋に戻っても何もやることがないので、自分のスキルを見る。



 スキル:言語理解

 神鑑定

 神隠蔽

 偽装

 聖魔法LvMAX

暗黒魔法LvMAX

 空間魔法LvMAX

 創造魔法LvMAX

 召喚魔法LvMAX

 ・

 ・

 ・



 さて見たはいいものの、スキルまだまだあるよなこれ。表示されないほどに。

 まあいいか、創造魔法だけでこの世の理を覆せるんだからなフハハハハハ!!


 .......


 はぁ...心の中で馬鹿みたいだ


 でも創造魔法さえあれば実際何でもってわけにはいかないけどほとんど出来るんだよな。

 ラノべ読んでてよかったわぁ〜。読んでなかったらなんも分かってねーわ多分。

 じゃあさっそく創造魔法使おう。喉乾いたし、コーラでも飲むか。コーラの味などを頭で思い浮かべていく。そして手を前に出すと手から魔方陣が構築される。淡い輝きを放ち、光が弾けるとコーラがそこにはあった。

 液体だけで


「あ!しまった。コーラの味とかそういうのしか創造してなかったなぁ、勿体ないし飲もう」


 床にこぼれたコーラを四つん這いで舌を這わせて舐める。その行為はまるで犬のよう、ま、人いないから別に気にしないんだけどね


 ガチャリ


「石崎優汰様、そろそろダンジョ…何をしていらっしゃるのですか?」


 フラグってさ建てるもんじゃないな....汚い物を見るかの様な目で見るのはやめて!もう俺の体力はとっくに0よ!!


「あ、いや...えっと...その」


「ダンジョンにそろそろ出発致しますので広場へお集まりください」


 バタン


 行っちゃった....

 うわあああ恥ずかしい!、もうお婿に行けない!あ、お嫁になればいいのか。なんつって



「よし!全員揃ったな!ではダンジョンへ出発する」


 遂にダンジョンか、いやー楽しみだなぁ〜。



 ダンジョンまで、徒歩30分くらいでついた。元の世界の家から学校までの距離とほぼ同じでホントに近いんだな。


 ダンジョンの入り口は想像してたよりは大きく、高さ約5メートル、幅約10メートルくらいあり石で出来ていた。


 入り口には、兵士が1人と、受付窓口があった。制服を着たお姉さんが笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。なんで も、ここでステータスカードをチェックし 出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するのだとか。

「あ、ガルド隊長、今日はこんなに大勢を連れてダンジョンに潜るのですか?」


「あぁ、こいつらは勇者でな、実践訓練も兼ねてレベルを上げようとな」


「噂の勇者様ですか!?こんなにもいるとは…」


「あぁ、俺も最初はビックリしたけどな、これだけ勇者がいるなら俺達も心強いってもんだ」


「そうですね。では無事を祈っていますので頑張ってください!」


 お姉さんに送られて皆ダンジョンへ入っていく。

 入るとそこはあたり一面が木々で覆われている、つまり森だった。


「ここは、1階層の部屋だ。太陽が出ているようには見えるがあれは擬似的な物だ。このダンジョンは森がベースとなる。とりあえずは10階まで一気に降りるぞ」


 ガルドに説明されてふーんとみんな言いながらガルドに付いて行く。ガルドは階段の道を覚えているのだろう。さくさく進んでいき魔物を見かけることなく10階層についてしまった。途中で「冒険者も見かけないし、魔物もいないな。おかしい。」とガルドが言っていたが皆気にしていなかった。

 さくさくって行ったけどマッピングしてなかったら絶対迷うからね?部屋自体はクソ広かったぞ?多分端から端まで10キロはあるんじゃないか。




「10階層についたな。ではここで実践訓練を行う、まずはこの階層の魔物についてだ。この階層にいる魔物は3種類だ。1つはスライムだ。体中が液体で出来ている。まぁこいつにやられる奴はまずこのメンバーにはいない。次に緑色の体色で背が小さいゴブリン、コイツは棍棒を持っているが、防御力が50あれば痛くないので皆なら安全に倒せるだろう、そして最後にオークだ。こいつは豚の様な顔をしていて2m近くある魔物で石作りの槍を持っているから気をつけろ。防御力は100あればチクッとするくらいだ。まぁここの階の奴等はお前らなら余裕だな。

 では、これより2〜3人一組でチームを組んでもらう。200人近い人で進んでたらほとんど前衛しか、倒せないからな。作ったら自由に行動していいぞ。ただしこの階層より下は行くなよ。

 ステータスカードにクロックと言ったら今の時間が出てくるから3時間後くらいにここへ戻ってこい。」


 自由行動ってまるで遠足だな。

 おっと皆チームを組み始めて移動してるし、俺も行動を開始しますか。



 俺、石崎優汰は今対象者に見つからないように、隠滅魔法ステルスを使って完全に消えている。

 えっと太一は、っと...お、いた。対象者発見!対象者発見!支給援護班を要請する!

 おっとまた悪い癖が出ちまった。一人でネタに走っても虚しいだけだな...

 っとそんなことはどうでもいいか、とりあえず今目の前で起きてることを話すぜ。

 今俺の目の前では太一1人にゴブリンが3体周りを囲んでいる。太一が本来のステータスを持っていれば余裕すぎるだろう。多分10層でこれだったら100層行けちゃうんじゃね?ってくらいには。

 しかし、如何せん今の太一はステータスがここの世界の人達とあまり変わらない。つまりゴブリン1匹ですら相手にするのがキツいのだ。


「「「グギャギャギャ」」」


 ゴブリン3体が威嚇するように棍棒を振り回す。

 ピンチってとこだな。だが手は出さない!

 本来の力を覚まさせるには、色々精神的にも肉体的にも負担をかけまくって、もう死ぬって思うくらいにならないとダメだろうし。あ、これラノべ情報ね。

 太一は一人だからなのか無言だ。きっと色々考えてるのかもしれない。




 −−−−−−−−−−−−−−ー

 僕、鈴野太一は今危険な目に置かれている。


 今日はダンジョンに潜るとのことで、皆楽しみにしていた。けれど僕は余り、というより全く楽しみではなかった。

 僕は少しラノべとかを読んでいたので、こういうのは楽しみだったけど昨日の、ステータス開示のときに皆のステータスが強いのにもかかわらず僕だけステータスが低かった事で孤独感を感じていた。

 皆が部屋に行き僕も行こうとしたところで王女様に声をかけられた


「鈴野様、さきほど話した通り明日はダンジョンに潜ります。ダンジョンには危険が伴っておりいつ死ぬか分かりません。あなただけでも残っても構いませんよ?」


 心配そうに言う王女様に


「いえ、自分も行きます」


 と答えた。本当は行きたくなかったのだが同じ年くらいの女の子に心配されるのは男として嫌だったのだ。


「分かりました。しかし、何があっても一人にはならないでくださいね」


「はい。では自分もそろそろ部屋に。」


………………………………………………………


 そしてさっきガルド隊長は皆にチームを組めと言った。皆は次々に仲が良い人と組んでいった。

 僕はクラスで浮いている存在で更にステータスが低かったので、チームを組もうと言っても断られるのは目に見えていた。

 なのでチームは組めなくても、クラスの人達の目に入るところにいようと100メートルくらい後ろから1チームをつけた。

 コソコソつけているとその1チーム意外誰もいなくなっていて、これは見失ったらマズイと少し距離を縮めて歩いた。

 その時、左の方の草むらでガサガサと音がした。そして確認する前にソレは出てきた。

 ソレは緑色の体色で背が小さくグギャギャギャと鳴き声をあげている。ゴブリンだった。

 ゴブリンは3体いて僕を囲むと手に持っている棍棒で威嚇してきた。

 慌てて、前にいるチームに助けを乞おうと前方を見た。しかしそのチームはその場にはいなく、僕はただ一人となった。

 これが今の、現状だ。


「グギャ!!」


 と突然ゴブリンが、棍棒で殴りかかってきた。咄嗟に横に避けたけど、タイミングを測っていたかのように、もう一体のゴブリンが殴りかかってくる。避けるのが無理だと思った僕は右腕で棍棒の打撃を受けた。


 バキッ


「ッ!!」


 あまりの痛みに声にもならない声をあげる。

 痛みの中、打撃を受けた右腕を見ると、あらぬ方向に曲がっていた。

 どうすればいいか考えているが痛みのせいで思考が纏まらない。更には考える時間も与えないかというようにゴブリンが襲ってくる。咄嗟の思いで回避をするが、そう長く持つはずもなく


 バキッ


「ぐぁっ!」


 左足に強烈な痛みが走り、転げてしまう。立とうとするが、左足に力が入らなく、立つことができない。そこへまたゴブリンが棍棒を振り回し襲ってくる。横へ転がりすんでの所で避けるも、僕はもう終わりだと思っていた。

 そしてゴブリンが飛び掛かり棍棒を振り回し


 僕の意識は途絶えた。





「ここは...どこだ?」


 目が覚めると、四方八方鏡だらけの空間にいた。


「目が覚めましたか」


 声がする方を向くと、僕より頭3つほど小さい女の子がいた。


「力が欲しいですか?」


「え!あ、はい」


 その女の子が急に言ってきたもんだからマヌケな声で返事をしてしまった。


「あなたは力を本当は持っています。しかし何らかの影響で封印されてしまったのです」


「そうなんですか」


「はい。そして私はその封印を解くことができます。だから、貴方の本来の力を解放させましょう」


 そう言って女の子が僕の胸に手を置くと、僕の体が輝き始め、鏡に映っている僕の体に異変が起こった。

 髪の毛は黒から銀髮へ、目は黒眼から紅眼へと変わった。そして体中の奥底から力が溢れてくるのを感じた。


「さあ、行きなさい真の勇者よ!」


 そして僕の意識はまた途絶えた。

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