学園編

第21話

王都には王城区、中央区、学園区、商業区、居住区という5つの区画があるらしく、王城区には王城が、中央区には冒険者ギルドや宿、この王都における様々な手続き関係の施設が集まっていて、学園区には学園があり、商業区にはあらゆる業種の店が並んでいて、居住区には貴族と平民が住んでおり、区内で貴族と平民とで分断されている……ということを王都についてルシファスから説明されながら俺達は王城へ来ていた。来る途中、ルシファスを見た人々が万歳コールを上げたのは言わずもがなだ。


「改めて礼を言うぞレン君。お主のおかげで助かったわい。馬車の中で言った通り、入学試験まではあと2日ある。それまでは城の中で過ごして良いぞ。なんせ命の恩人じゃからの」


フォッフォと笑うルシファス。


「いえ、少し見て回りたいので遠慮しておきます」


2日も城の中って暇だしな。


「別に2日間城の中にいろと言ってるわけじゃないぞい。寝泊まりはここでして、他の時間は何処へ行ってくれても構わんよ」


なんだ....俺の勘違いかよ....


「そうなんですか。ではお言葉に甘えさせていただきます」





さて、俺達の行く事になる学園がどんなのか見に来たわけだが


「おっきーねー」


でかい。とにかくでかい。俺のいた中学校の5倍近くありそうだ。


「それに比べてこの門は....」


学園や学校になら絶対ある門。その門は学園に見合ったものだと思ったのだが、2メートルない高さで普通に乗り越えられるじゃん....と思ったが触れてみると、見えない何かに当たった。


バリアじゃないか!なんとも魔法学園らしい。


「おぉ!スー!このバリア凄いぞ!俺が軽くデコピンしたのに、ミシッて音しかしてないぞ!」


「おー!ばりあつよーい!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その頃、学園の管理室では、


▲警報▲


「なんだ!?」


「この学園に張ってある魔力障壁の耐久力が一気に減りました!」


「なんだと!?あの魔力障壁の強度は並大抵の者の攻撃ではビクともしないはずだ!魔法か!?」


「........どうやら魔法ではないようです!」


「まさか物理攻撃でヒビを入れたというのか!?しかしあの魔力障壁にヒビを入れるのはSSランクの冒険者でも不可能なはず...SSSランクの冒険者はこの王都にはいないはずだが.....一体どういう事だ!」


「きっと魔力障壁の強度が一番低い設定になってたんでしょう」


「設定を見ろ!強度は一番強く設定してあるぞ!」


「じゃあ壊れてるんですよ!」


「防犯キャメラがあればハッキリするのに」


「この障壁は絶対に安全だから、いらないって言ったのはメルガさんじゃないですか」


「むっ........少し見てくる」


「大丈夫だと思いますけどねぇ......絶対壊れてるんですって」


「その為に確認に行くんだ。少し俺が衝撃を与えるからそれで耐久力が減ったら壊れているんだろう」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「さてと、バリア壊して中入ったら誰かに怒られそうだし、どっか違うとこ行こうか」


「うん!」


スーと手を繋いで、学園に背を向けて歩き出す。


「おいそこのお前!止まれ!」


なんか横から子供の声がするけど俺の事じゃないだろう。


「おい!お前!ヴォルト君を無視すんな!」


声かけられてるやつ反応してやれよ。ヴォルト君が可哀想だろう


「お前許さないぞっ! 闇夜を照らす炎よ、この手に集い力を示せ火球ファイアーボール!」


さすがに魔法はやりすぎだろうと、声のした方を向くと俺の方角に火球が飛んできた。


「死ね!俺様を無視した罰だ!」


「俺だったのかよ!?」


自分だった事に驚き、それと同時にヴォルト君に心の中で謝りながら火球を体を横に捻り、避ける。


「で、俺になんか用?」


俺なんかしたっけなぁ。

絡まれる節が思い当たらない。


「チッ避けやがったか。俺様の名前はヴォルト。12歳でこの学園の最強の魔法士だ!」


「へ、へぇ」


え、だから何?


「しかもヴォルト君は貴族で超お金持ちなんだぞ!」


「しかもヴォルト君は魔物を倒した事もあるんだぞ!」


「すごいだろ!」


ヴォルトの取り巻きっぽい奴ら3人がヴォルトの自慢をするが正直どうでもいいな。てかまず俺の質問の答えになってないだろ。


「すごいねー」


だが話に乗る。


「フンッ!だからそこの女、今すぐ俺の嫁にな「スーそろそろ腹が減っただろ」


「おなかすいたー」


嫉妬の目線だけなら良いんだが、手を出してくるとなると別だ。もう無視です。


「お前!俺様が話してる途中なのに話しやがって!死にたいのか!」


「王都には美味しい物があるかな〜」


「たのしみ〜」


「そうか〜じゃあ早速行こうか」


「うん!」


再度スーと歩き出す。


「ヴォルト君を怒らせるとヴォルト君の親が黙っちゃいないぞ!」


「そうだそうだ!」


「パパに言ってやる!」


はいはい無視無視。


「おい!お前ら!ここらで怪しいやつを見かけなかったか?」


はいはい無視無...え?おっさんの声?


流石に気になって後ろを向くと、門の内側からおっさんが出てきた。


「いや見てないですよー!」


「俺様も見てない」


「「「俺(僕)も」」」


スー以外の全員が答えると、おっさんは頬をぽりぽりとかいた。


「やっぱり魔法障壁が壊れたか?」


ん?


「あのどうかしたんですか?」


「学園を覆う魔力障壁の耐久力が一気に減ってな。理論上ではSSS級でもなければ、この障壁には傷一つ付けることが出来ないから壊れてないか調べに来たんだ」


「そ、そうなんですか」


うん。面倒い事してしまった。


「フンッ!俺様もそれくらい出来るけどな!」


あ、そうだ


「さっき、この子が火球打ったらヒビが入ったので、多分壊れてるんじゃないですか?」


「え?」


ヴォルトを指差すと、ヴォルトは気の抜けた声を出した。


「そうか。やはり壊れているのだな。それと君、学園の外で魔法は使ってはいけないだろう!」


「俺様は貴族だから良いんだよ!」


取り巻きが、そうだそうだと合わせる。


「貴族でもダメなもんはダメだ!」


「お前!パパに言いつけるぞ!」


とおっさんとヴォルト組が言い合いを始め出したので、スーとこっそりその場を離れた。


そこから昼飯を食べて適当にぶらついて、日が落ちてきた頃に城に戻った。


「戻ってきたか。どうじゃったよ?ここは」


「学園の子供って全員貴族じゃないですよね?」


「そうじゃよ。だいたい平民が7割、貴族3割ってとこじゃな」


「貴族って全員あんなのなのかなぁ」


「何かあったのか?」


心配そうな顔で聞いてきた王様にヴォルトに絡まれた事だけを話す


「ほぅ。ヴォルトとと言う少年か....知らんのぅ」


覚えられてないってことは、結構弱いんだな。

いやまああの程度の火球しか出せない時点で、最強どころか上位にも入ってないだろって思ってたんだけど。


「そうですか。ところで明後日の事なんですけど俺たちの事何も言ってませんよね?」


「言ってないぞ。貴族はプライドが高いのでの。お主が強いと分かるとすぐに絡んでくるじゃろう。まぁ入学試験でお主が上のクラスに飛んだら変わらないんじゃがの」


「じゃあ手加減していいですかね?」


ま、常に手加減してるんだけど。


「お主らが学園にいてくれれば、別にどこのクラスでも構わんよ。ただ、低いクラスの者は学食の割引きがされない他、上位クラスから馬鹿にされたりしてデメリットしかないぞ?」


「大丈夫です」


「そうか。では詳細も兼ねて学園について話しおこうかの」


聞いた話だと


学園の名前はセブニス魔法学園。


学園には初等部、中等部、高等部あって、初等部は7歳から12歳の生徒が通うところで、6年通うと中等部に上がれる。中等部では3年間通い、卒業の日にテストを行い受かった者だけが高等部に上がれる。高等部でも3年間通い、卒業の日になるとテストを受け、合格した者にはS級の資格を貰えるそうだ。


1学年220人いて、AからKまでの11クラスあり、1クラス20人の構成だ。


このクラス分けは成績が左右されて、成績上位者からAクラスになり、その後B、C......と続いていく。


本来はその年齢に合った学年にいくのが普通なのだが、その学年のAクラスの平均を大幅に上回っている場合のみ、学年を上げることが出来る。

これは例えば、スーは本当は初等部の4年生だけど、魔法の威力などが4年生のAランクのソレを遥かに超えているので、高等部3年のAクラスにも行けちゃうというわけだ。まあ本人次第らしいのだが。

因みに高等部の者が魔法の威力などが低いからといって、中等部に戻れるわけではない。


学園は4階建てで、学園の右側が初等部で真ん中が中等部、左側が高等部となる。



・・・らしい。


俺は15なので中等部ので3年か高等部の1年から始まるだろう。スーは俺とセットなので中3か高1の学年になるはずだ。

もしなれなかったら学園を出て行く予定。


「まぁこんな感じじゃ」


「はい。分かりました」


「そうかそうか。ではそろそろ夕飯にするかの」

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