魔女の井戸殺人事件

　売れない純文学作家・鳴瀬光彦は、三軒茶屋にあるボロアパートに住んでいる。その隣室にある日、大学院で化学を専攻する伊勢谷恭介が引っ越してくる。熱狂的な推理小説マニアである伊勢谷に感化され、鳴瀬は推理小説に魅了される。
　ある日、鳴瀬はオカルト雑誌の編集部員・中島から、直径10メートルを超える巨大井戸にまつわる魔女伝説を取材して来て欲しい、との依頼を受ける。
　Ｉ県の山間にある朝霧村では、毎年五月の満月の夜、豊作を願う祭りが行なわれる。大昔、その祭りの最中に村の子どもたちが次々と発狂。井戸の中へ飛び込んで溺死するという事件が起きた。その直後に村中に魔女の笑い声のような不気味な音が響き渡った、というのが魔女伝説の謂れ。高額な報酬に釣られた鳴瀬は、依頼を承諾する