からくり海門 ―東西機巧綺譚―

嘉永六年、下田に来航したロシア艦隊。通詞見習の高瀬一郎は、町の地下に眠る巨大機構「機巧堤防」の存在を知る。それは百年前に造られた自動防災システムだった。失踪した父の影、廻船問屋の娘お由との出会い、そしてロシアの提督プチャーチンとの交流を通じ、一郎は日本の伝統技術と西洋の蒸気機関を融合させる道を探る。安政の大地震と津波の危機に、東西の叡智が結実する時、新しい時代の扉が開かれようとしていた―。

【登場人物】
高瀬一郎（26歳）- 幕府通詞見習
村上お由（20歳）- 下田の廻船問屋の娘
高瀬宗弘（52歳）- 一郎の父
エフィム・プチャーチン（51歳）- ロシア使節団長
村上源兵衛（48歳）- お由の父。廻船問屋当主
堀勘定奉行（45歳）- 幕府側交渉責任者
川路聖謨（43歳）- 開明派の幕閣
浅…続きを読む