第30話

それから、3日経って同棲が始まって。


あっという間に1か月後。


結納をあげるのが明日までに迫った時。




桜路家の息子さん、浩也さんがいった。


「ごめん。杏香さん。


こればっかりは、僕の権限じゃどうにも出来なくて…。」



「ううん。これ、荻原の女の使命なんでしょ?


しょうがないよ。」




なんて、本当は嘘。


しょうがない、なんて割り切れてない。


柊の事が頭から離れないの。



でも、浩也さんはそんな私の気持ちを知ってて、せめて結婚するまでは。と手を出さないでいてくれる。


そんな浩也さんの優しさに申し訳なくなった。



と、その時。


かなり焦ったようにノックをする音が聞こえる。



「失礼しますっ」



「どうした、佐々木。そんなに慌てて。」



「それが…っ藤堂家が結婚を辞めるよう、通達して来たんですっ!」



…え?


「どういうことだ…?」



怪訝そうな顔で聞き返す、浩也さん。

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