第28話

「柊…。別れよう。」



「はっ?」



本気で困惑した声を出す柊。


ごめんね。私、今から最低なこと言います。




「なんでだよ?」



「…柊のことがっ…き…らいになったのっ」




涙を滲ませながら言う。


俯いているのは、涙を見られたら信じて貰えないから。


だって、嫌いになったなんてあり得ないもの。


愛してるのにね。





事の発端は昨日だった。


昨日の私の誕生日に告げられた事実は、私の視界を真っ暗にした。



お母さんの話によると。


私の家は"あの"藤堂家の分家の分家らしくて。



そんな遠い縁なのに。


うちの家と九条という家は、女の子が産まれたら、

藤堂の分家の桜路と藤堂に順番に嫁ぐことが決まってるらしい。


で、今年はうちの家の荻原が桜路に嫁ぐ順番だって。



お母さんはそう言った。


もちろん、私は柊と付き合ってる訳だから断ったのに。





「お母さんも知ってるよね?


私に付き合ってる人がいること。」




「知ってるわ。酷いようだけど、早いうちに。


そうね、出来れば明日別れてきなさい。今週の土曜日から相手方との同棲が始まるから。」




「なんでそんな…っ急に…っ!」




「急じゃないわ。


貴女が産まれた時から決まってた事。16歳の誕生日に全てを打ち明けるってこともね。」

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