第36話

苦痛で仕方ないのに、辛くて仕方ないのに。


好きな人の彼女についての相談を聞いて。


惚気られたりして。




そして結局ひとりで泣くくせに、話すことが嬉しくて。


教室に2人っきりっていうのが嬉しくて。


相談を持ち掛けられたら断れない。




そのくせ、勝手に傷ついて。


胸が張り裂けそうなほど、苦しくなって。


覚悟が決めれてないから苦痛を被って。


本当に無防備…




諦めた方が早い事は分かってる。


だけど、でも。


諦められる程度の想いではないから。


その親友を見るたびに、モヤモヤしてしまう。


こんな思いをするなら、最初から好きになんてならなければ良かった。




すると、生田くんが去った方向から、風が微かに彼の残り香を運んできて。


ほのかに香る、優しいオレンジの香りにギューっと胸が締め付けられて。


誰もいない教室でひとり、長い時間電気も点けずに泣いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る