第20話

2学期の終わり頃。


私はある決心をして、彰也の教室に向かった。




「彰也!一緒に帰ろ!」



「うん。」



彰也は何のためらいもなしに頷く。


それを見て周りは盛大にからかう。


いつものことだ。


いつものことだけど、今日はそれがとてもうるさく感じた。




そして、準備して出てきた彰也と並んで歩く。


「どこに向かってるの?」



「秘密。」



そう言って、彰也に内緒で連れてきた場所。


それは。



「え。文香。どうしていきなりこの砂浜…?」



よく2人で来た砂浜だった。


彰也から聞こえてくる戸惑いの声にぎゅっと拳を握り締める。


大丈夫。泣いたりしない。絶対。




「彰也…私のこと、好き…?」



「え…どうしてそんなこと?」




前までなら、即答してくれたはず。


いつからだっただろう。


好きだって言ってくれなくなったのは。


胸の痛みに気づかないフリをして、彰也に言った。

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