第5話

そう言った実果はニヤッと笑って、私の背後に声を掛ける。




「だってよ?春樹くん?」



実果のセリフに自分の耳を疑いそうになった。


…なるほど。さっき企んだ顔をしてたのは、これか。


背後に居るのが分かってたのね…



なんて、会いたくてたまらなかったはずなのに、何故かとても冷静な私。


だけどそれも、春樹に後ろから抱き締められた途端に崩れた。




「は、るき…っ」



懐かしすぎる、温もり。


私の大好きな人の温もりだった。




「やけに可愛いこと、言ってくれるじゃん?


…そんなこと言われたら、離す気無くなるんだけど?」




そう言われ、思わず言った。



「やだっ…離さないで…っ」



普段はそんなこと言わない私なのに。


ずっと離れてたせいかな。


やけにスラスラと素直に言葉が出てくる。




そう言うと、春樹が何故か溜息をついて。



「花菜…お前さ、わざとやってる?」

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