第32話

そして、1か月暮らした部屋を出て。


その足で藤堂家に向かった。


藤堂家で私は信じられないものを目にすることになった。



通された、藤堂家の息子の部屋。


「はじめまして。藤堂です。」


そう深く綺麗に頭を下げた人を見て、頭が真っ白になって。


涙が溢れ出てきた。



だって部屋にいたその人は、会いたくて仕方がなかった、蓮田柊その人だったから。





「どうして…え…?」



軽くパニックを起こしている私に、私の涙を拭いながら言った。




そして、


「俺、元々藤堂の生まれだし。」と、衝撃発言。



「え。だって名字…。」



「蓮田っていうのは、お手伝いさんの名字。


うちの藤堂は、双子だからどっちが継ぐとか決まってなくて、とりあえず蓮田って名乗ってたの。


で、親父に頭下げて頼んで、俺が継ぐことになった。」




実は、萩原の女である私がここに嫁ぐことになったのは、身元がハッキリしている方が良いからじゃなくて。


柊がお父さんを説得した結果らしい。




「だから、改めて言うよ。愛してる。


結婚してくれ。まぁ反論は受け付けねぇけどな?」



そう言って悪戯に笑った柊は、今までで一番カッコよくて。


一生忘れられないプロポーズになった。

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