Epilogue
エピローグ
八月十七日。夏休みだった。
その横では、セーラー服を着たおさげの少女――
「また外れた……」
理亜がアイス棒を見て
「あーあ。
芙蓉の
今は午前十時くらいだったが、すでに気温は三十度を超えており、じりじりと肌を焼かれるような暑さになっていた。芙蓉はペットボトルのフタを開け、麦茶を飲んだ――ぬるい。少し前までキンキンに冷えていたのに。
「まさかここまで長引くとはねー。こうなったらもう、私も立派な
アイスを食べ終わった理亜が芙蓉に話しかけた。
「まあ、一連の案件も今日でおしまいかな」
「……ですかね」
ぼんやりと青空を眺めながら、芙蓉が
「いつまで引きずってんだよー。アンニュイな感じ出しやがって」
「出してない」
「出してますう」
「出してない」
「だったらつまんなそうに空見んのやめろ! 隣にいる先輩をもっとかまえよー!」
おさげ女子が芙蓉の肩を
天の
もちろん、
「今、どこにいるんだろうねえ」
芙蓉を
「さあ……情報部の人はなんか言ってました?」
「ううん、何も」
「どうしてるのかなあ。七彩ちゃんて、めっちゃ弱いんだよね?」
もうXEDAに捕まってどこかに
見た目は
しかし芙蓉は、彼女が今も自由に過ごしているだろうと思っていた。
「なんとかしてますよ、きっと」
彼女には彼女なりの事情があって、なんとか
「そうだといいけど――」
『こちら“スケアクロウ”。出番だ“ルキフェル”、降りて来い』
理亜の言葉をさえぎるように、二人のインカムに通信が入った。
「えー……こちら、『ルキフェル』。すぐ行きます」
慣れないコールサインを口にしながら、芙蓉が屋上の柵から下を
『“トーチ”は待機。引き続き“宅配便”の到着を待て』
「『トーチ』了解」
理亜が短く返事をすると、インカムから別の声が聞こえてきた。
『ヘイ、“トーチ”。お前のかわいいボーイフレンドは
「うっせー」
うんざりした顔で理亜が返事をする。理亜と芙蓉は
「じゃあ、お先に」
「芙蓉くんもなんか反応して!」
「なんでいつもそんな無表情なの? もっと
振り返った芙蓉が眉をひそめた。
「おいそこ! めんどくさそうな顔しない! そろそろ泣くよ? 泣くからね?」
「いってきます」
「逃げんなー!」
アイスの棒を振り回してわめく先輩をおいて、芙蓉は柵を飛び越え、校舎の外へと身を
重力に引かれ、風を切り、彼の身体は下へと落ちていく。そこに地面はなく、一面を白い雲が
雲を突き抜けると、眼下には青空が広がっていた。ばさばさと制服を揺らした芙蓉は、青い空を真っ逆さまに飛んでいく。
「来い、“ガナンキャリバー”」
その呼び声で、黒い
芙蓉はそれに同期すると、青一色の夏空へとどこまでも落ちていった。
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・ノート:https://kakuyomu.jp/users/kopaka/news/16818093089826344349
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