EP3: sanctum.
3-1
七月十七日、金曜日。
『
「そんなに私に会いたかったの? もー、芙蓉くんったら――」
「全然違います」
「せめて最後まで言わせてよお~」
そうして理亜と合流した後、近くのファミレスで昼食をとってから、約束通りに『聖域地区』へと向かった。
「今日も暑いねー」
理亜は昨日と同じく
「好きなんですか、それ」
「うん、好き。でも全然当たんないんだよね」
言いながら、おさげの女子高生がアイスをかじる。これから戦場に
芙蓉と理亜は、昨日と同じように
コンテナの奥には、理亜の
ラックに収められた武器は、右手用に三十ミリ対装甲ライフル砲。左手用にはBAW-66グレネードランチャー――六十六ミリの
機体の両腕には長い円柱が二本ずつ装備されている。BSR-5九十五ミリロケットランチャーだ。両肩にはM807アサルトライフル砲が固定されており、背中の左右には
「すごいですね、今日のアーヴィン」
芙蓉が言うと、理亜は得意げな顔をした。
「だろー。
「じゃあなんでこんなにしちゃったんですか? かっこいいから?」
「ちがいますー。私のは余分なパーツをとっぱらって軽量化してるし、ガスタービン仕様でハイパワーだからギリギリなんとかなるの!……あっ、外れた! これほんとに当たり入ってるの?」
今回もハズレだったらしく、理亜がアイスの棒に文句をつける。このゆるい
しばらくすると、トレーラーが
「……うん……うん、りょうかい!」
耳に引っ
「ここで降りて、あとは機体の足で移動するよ。いけるよね?」
「大丈夫です」
「おっけー……ストラーニさん、止めてー……えっ、平気だよ……うん……大丈夫ですって。この辺で待ってて……はーい、じゃ、交信終わり」
セーラー服に引っ掛けた
トレーラーが停止し、モーター音とともにコンテナのリアウイングが開いていく。そこに広がっていたのは、一年以上
「芙蓉くん、これつけといてね」
昨日と同じイヤホンを芙蓉に渡した理亜は、
芙蓉は一足先にコンテナから出て、道路に降り立った。周囲は林と田畑に囲まれており、
「来い、“ロゴス”」
そう命じると、アスファルトの地面が
〈
アスリートのような引き
「おぉ~」
そんな声が聞こえて、芙蓉が振り返った。そこには、黒いスーツを着こなした長身の男性が立っていた。ブラウンのクセ毛を後ろに流した
「えー、アイキャントスピークイングリッシュ」
芙蓉がそう言うと、その男はタバコを
「それがサプレッシブ・フレームってやつか? すごいな、本物は初めて見たぜ」
「誰ですか?」
「オスカル・ストラーニ。リアと同じ、
「それはそれは、どうもお世話になりました」
そんな会話をしていると、
「悪い、
ストラーニと名乗った人物が〈ロゴス〉を指してそう言った。
「まるで着ぐるみだな……」
昨日聞いたのと同じような感想を耳にしながら、芙蓉は〈ロゴス〉の背に空いた空間に自分の身体を差し込んだ。すぐに全身が
感覚が
――同期完了。
〈ロゴス〉が立ち上がる。そこに、ストラーニが声をかけた。
『おい』
黒い騎士が振り向くと、長身の男がにやと笑って口を開く。
『お前、
「いやあ、それほどでも」
『いいか。俺たちはお前のガールフレンド探しに手を貸すワケじゃあない。クソ
「バイト代はいくら出ますか」
『おいおい、お前の高校はバイト禁止だろ? だったら金は出せ……いや』
『俺個人としては、お前のガールフレンドが気になる。すっげえカワイイんだろ? もし見つけたら俺にも紹介して――』
「結構です」
芙蓉が
その入れ替わりで、〈アーヴィン〉が地面へと降り立った。
『お待たせ―。じゃあ、いこっか!』
「お願いします」
モスグリーンの二脚兵装が
『芙蓉くん、さっきストラーニさんとなんか話してた?』
思い出したように、理亜が芙蓉に問いかけた。
「七彩を紹介して欲しいって言われたから断った」
『……一体どんな話してたの?』
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