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正面、十五メートル先。剣と大盾を持った〈ガナン・タイプ〉の
「芙蓉……っ」
『なんとかなるよ、きっと』
〈ロゴス〉がぐっと
地面を
どかん、と大きな音がして、〈ロゴス〉が急発進した。純白の騎士はアスファルトの路地をイナズマのように
虚像天使が停止し、その場で大盾をかまえる。
インパクト――
ほとんど飛ぶようにして放たれた〈ロゴス〉の
『すご……』
地面を
「左見て! 左!」
七彩が
ばがん、と大きな音がこだました。
そうして動けないでいる芙蓉を、遠くから弓を持った虚像天使――〈トルカン・タイプ〉がねらう。
「よけてっ! 早く!」
七彩が
「立って、次が来る!」
『うわ!』
『ごめん、やっぱダメだこれ。多分普通に死ぬ』
「だから言ったのに!」
『僕にもすごい力が眠ってるのかと思ってた』
「ちがう、芙蓉はただの人間で……」
『なんかないの? めちゃくちゃ強い秘密兵器とか――うわ!?』
一瞬、赤い光が見えた。〈ロゴス〉が急停止すると、〈トルカン・タイプ〉の光矢がすぐそばに着弾してアスファルトを
秘密兵器――芙蓉を勝たせる
「あと十五秒、
『無理かも。もし死んだらお金返さなくていい?』
「あ! そういえば昨日のお金返してもらってない!」
そんな会話をしながらも、七彩は集中してシステムを
「……できた!」
七彩が言った。
それと同時に、白い騎士は両足で地面を
「ロゴスを最適化したの。芙蓉の専用躯体として」
宙を舞った純白の騎士が、夜の闇に溶け込んでいく。
いや、違う。
躯体の色が変わったのだ。白から黒へ。じわりと染み出るように黒色が広がり、〈ロゴス〉は
「――芙蓉には、その色の方が似合ってる」
漆黒の騎士は屋根の上へと着地した。紫の
『いいね、黒。かっこいい』
〈ロゴス〉が自分の躯体を
「専用のコードを書き込んだから、芙蓉は強力な
『多分』
「試してみて」
『わかった』
〈ロゴス〉がものすごい勢いで空中へとはじき出された。
「いい、芙蓉。見たいものをイメージして、集中して“
七彩が言うと、〈ロゴス〉は
それは、アクションゲームにおける『ポーズ画面』のようなものだった。
それが
その
弓を持った〈トルカン・タイプ〉が、
――そして、時が動き出す。
遠くの住宅街の一点が、ちか、ときらめき、赤いレーザービームのような光が
しかし、黒い騎士は身体をひねり、その攻撃をなんなく
「よかった……ちゃんとできたね」
ほっとした七彩が言う間にも、黒い騎士は地面へと自由落下していく。
「それが芙蓉にあげた力――“
これこそ、七彩が芙蓉を選んだ理由の一つだった。彼の身体はハードウェアとしてその能力に
「次は武器だね」
〈ロゴス〉がひらりと
「すっごい武器があるんだけど、わかる?」
『なんとなく』
「呼んでみて」
〈ロゴス〉はソーラーパネルを叩き割りながら屋根上に着地し、そこで停止した。
そして、芙蓉がその武器の名前を呼ぶ。
『来い、“シェキナー・セヴディス”』
すると、〈ロゴス〉が突き出した左手が
〈光弓シェキナー・セヴディス〉。
本来は
ボディと同じ漆黒の大弓を携え、〈ロゴス〉が
足場にされた住宅がばらばらにはじけ飛ぶ。漆黒の騎士がすさまじい速度で空中へとおどり出た。高度は三十メートルに
〈ロゴス〉が空中で弓を引く。燃えるような光の矢がバレルに
『まず一体』
発射。
ぶん、という重低音がして、金色に輝く光矢がレーザービームのようないきおいで解き放たれた。
そこへ、もう一体の〈ガナン・タイプ〉が
あっという間に〈ロゴス〉に接近した〈ガナン・タイプ〉は、アスファルトの地面を
そこで、〈ロゴス〉は
次の瞬間、虚像天使がふりおろした大盾が、アスファルトの路地を
時間にして一秒以下。
すばやく
その
「芙蓉、後ろっ」
七彩が
『やば』
振り返らず、芙蓉が言った。百メートル
黒い騎士が
『二体目』
〈ロゴス〉が
漆黒の騎士の背後で、乗用車や電柱が落下する。がん、がらがらと激しい音をたて、それらが地面にぶちまけられた。
光弓シェキナー、そして
芙蓉はその二つをうまく使いこなし、次々と敵を
「フレア形態を使ってみて! 最後の一体は正面からぶっとばそう」
遠くで〈ロゴス〉の戦いを
『わかった』
芙蓉が返事をする。彼が先ほど
『“
芙蓉が命じると、構えた大弓が変形した。バレルが展開し、各部がスライドして
〈ロゴス〉が大弓を引いた。
『――これで、三体』
発射。
地をゆらす
爆風が吹き荒れる。
〈ガナン・タイプ〉は構えた盾ごと『蒸発』していた。アスファルトの地面はめくれ上がり、焼け
くずれおちる家屋、ばらばらと落下する
「すごい……やっぱり、芙蓉にお願いして正解だったんだ」
そうつぶやきながら、七彩は〈ロゴス〉の方へと歩いて行く。三体の虚像天使は、芙蓉と〈ロゴス〉によってあっという間に
七彩が近づくと、〈ロゴス〉は少しだけこちらを見た。さすがに芙蓉も疲れている様子で、
「ちょっと疲れた?」
そう聞くと、芙蓉はぜえはあ言っていた息を少しだけ整えてから、
『……ぜんぜん大丈夫』
と強がった。それがひどく
「そっか」
何百年、何千年たっても、どこにいたって何をしていたって、この胸の高鳴りを忘れることはないだろう。そんなふうに思いながら、白羽七彩は再び歩き出した。
〈エンゼリックエンドロール おわり〉
・ノート:https://kakuyomu.jp/users/kopaka/news/16818093090371586447
エンゼリックエンドロール こぱか @kopaka
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