4-6
「よーし、私たちもいこっか」
彼女は破壊された〈アーヴィン〉の
「待って、理亜さん」
「どしたの?」
「ギメルに……」
そこまで言いかけて、芙蓉は重大なことを思い出した。
身体中から
「ギメルって、あの制圧躯体の?」
「そうです」
「んで、なんかあった?」
「天の
目を点にした理亜が「えっ……」と声をあげ、続いて何かを言いかけたとき――
「その件ですが」
ぎゅむ、ぎゅむ、という音がした。
背後から聞こえてきたその音に、芙蓉と理亜が振り返った。
「お伝えしなければならないことがあります」
そう言ったのは、セーラー服で素足にレインシューズを
「ちょ――待って! あれって……」
理亜が目を丸くして声をあげる。彼女にも
「あれは七彩じゃなくてギメルです」
芙蓉が
「はじめまして、リア・エバンスさん。わたしは天使ギメルと申します」
「あ、うん。よろしく?」
混乱した様子の理亜が返答する。
「こんな感じなんだ。てっきりモンスターみたいな天使かと思ってた」
「もんすたー……ですか」
「ほんとに可愛いね。私が男の子だったら絶対
そう言った理亜に、ギメルは困ったような笑みを返した。
「ギメル、天の
「あ! そーだよ! ごめんね、芙蓉くんは私が連れてくから!」
言いかけた芙蓉の言葉を
「はい。わたしはそれも許します。心配せずとも大丈夫ですよ」
ギメルが
「あの時、芙蓉さんの
初めてだった。
ギメルが、天使らしい
「実は、天使ベートが
「天使ギメル。探しました」
突然、別の誰かの声が聞こえた。ギメルがため息でもつきそうな表情で目を
「うっそぉ……」
理亜が
それは人だった。
いや、天使だった。
どちらであろうと、驚くべきはその容姿であった。
「……芙蓉くんの2Pカラーじゃん」
その天使は、
ただ、髪色はギメルと同じ銀で、目の色が
「ご紹介します。天使ダレットです」
そう言ったギメルが
「ご命令いただければ、ここまで運んだのですが」
「大丈夫です。わたしも歩けますから」
「そもそも、こんなところに来る必要はありません。戻りましょう」
「やっ……やめてください。もういいので、あっちに行っててくださいっ」
「いいえ、戻りましょう」
ダレットと紹介された芙蓉とそっくりの天使は、ギメルを連れ帰ろうとして彼女に
「あれ、誰?」
理亜が芙蓉に聞く。
「知らない」
「めっちゃ
「そうですね」
「ちょっとしつこくない?」
「同感です」
そんな話をしていると、天使ダレットはそこで初めて二人に気付いたかのように振り向いた。
「
「天使のくせに口悪いな……」
理亜の言葉を
「お前は
「ダレット! やめてくださいっ」
ギメルが初めて声を
しかし、赤い目の天使の言うとおりだった。エンドロールは
「天使ギメル、戻りましょう。ここにもう用はない」
「待って――」
ギメルが制止するのも
「来い、“ミュトス”」
そして、その名を呼んだ。灰色の空が
〈制圧躯体ミュトス〉。
それは、
静かに〈ミュトス〉が着地する。
翼を折りたたんだ巨大な天使は、燃えるような赤い視線で理亜と芙蓉を
『そこの人間』
理亜の方を見て、ダレットの声が言った。
『お前の仲間にも伝えておけ。何をしても無駄だ。じきに
理亜が白い騎士を
「天使のくせにめちゃくちゃ
『僕は事実を言っているだけだ』
「決めた。私は死んでもあなたの
『
〈ミュトス〉がぎしりと
『“
「ダレットっ!」
ギメルが
「理亜さん――」
「どうしたの? 今殺しとけばあとでやり返されずに済むよ?」
止めに入ろうとした芙蓉の言葉を
「いけません、ダレット」
ギメルが大声で制止する。
〈ミュトス〉が少し腕を動かせば、理亜は本当に死んでしまう。しばらくは
そして理亜と芙蓉に左手を向け、
「えっ、なに!?」
その手から発生した強い
『これが最後の
ダレットはそう言い残すと、
「きゃっ!? ダレット――!」
そして、銀髪の少女を胸の前で大事そうに抱きかかえた。
「わたし自分で移動できますから! おろしてくださいっ」
「……あの金色の制圧躯体は?」
理亜が
「ダレットにとられて、ミュトスに改造されちゃいました……」
『天使ギメル。あなたが戦場に出る必要はありません。これからは僕がやる』
「わたしはそれも許しましょう……」
〈ミュトス〉が
「は……」
それを
「はへぁあぁ~~……」
「大丈夫ですか?」
「
芙蓉も彼女の
ギメルたちが
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