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〈ロゴス〉や〈
「本来なら、天使は
「なるほど、やる気がないってことか」
「ちがう。やる気とかの問題じゃないから」
七彩が芙蓉にジト目を向ける。
「でも、まあ……ある意味間違ってないのかも。わかりやすく言うとね、わたしは命をねらわれてる。理由は多分、芙蓉の言う『やる気のない天使』だから。使えない天使は
ポテトをごくりと飲み込んだ芙蓉が、「そうなんだ」と
「虚像天使はわたしを殺すために出現する。今まではたまたま大丈夫だったけど、これが駅前とかに出てきたら大変なことになっちゃうでしょ? だから、早いうちになんとかしなきゃいけないの」
そこまで説明すると、七彩もドリアを口に運んだ。芙蓉は別のポテトにフォークを
「……なに?」
七彩が手を止めて芙蓉の方を見た。
「じゃあ、
「わかってくれた?」
「言われてみれば見た目もちょっと天使っぽい。何もないところからSFロボを呼び出せるのも普通じゃない。でも……」
そこまで言うと、芙蓉は背もたれに身体を預けた。
「しゃべってる限りは普通の女子と変わんない気がする。めっちゃおいしそうにドリア食べてるし。天使ってそうなの? ファミレスとか普通に行く系? もっとこう……ディナーはパンとワインです、みたいな感じじゃないの?」
「別にドリア食べる天使がいたっていいでしょ。ほっといてよ」
顔を赤らめた七彩が、口を
けれど、芙蓉の言いたいこともわかる。七彩は
天使と人間は何が違うのか。
七彩はスプーンを机に置き、説明を始めた。
「本当はね、天使にはいろんなタイプがいて、それぞれ特別なかたちをしているの。一番メジャーなのは人型だけど、それもさっきの虚像天使みたいな、芙蓉の言う『エイリアン』的な見た目をしてる」
天使とは
七彩は以前、人間が天使をどう
「でもね、天使は人間と同じ見た目にもなれる。もっとちゃんと言うと、人間型の『
「人間型ドローンってこと?」
「そう言うと急によわそうになるね……まあでも、だいたいあってる」
七彩は少し笑ってから、説明を続けた。
「その『人間型ドローン』は、人間と同じ身体機能を使うことだってできる。そうすることで、人間に共感して、よりそうことができるからね」
「だとしたら、白羽さんの本体はロゴスとかいうロボットの方で、白羽さん自身は『人間型ドローン』ってこと?」
「ううん、わたしはちがう」
芙蓉の質問に、七彩が首をふった。
「わたしからは、天使としての使命が
「じゃあ、どっちかといえば人間なんだ」
「そうかもね」
「でもなんで女子高生?」
ポテトをケチャップにつけながら、芙蓉がもっともな疑問を口にする。
「知らない。発生したときからこうだったんだもん」
七彩が答えると、芙蓉がさらに質問を重ねてきた。
「最初から女子高生だったってこと?」
「そ、そうだけど……」
「白羽さん、何歳?」
なんとなくその質問に答えたくなくて、七彩は残っていたドリアを口に運んだ。芙蓉はじっとその様子を見守っている。ついに食べ終わってしまい、七彩が口を
七彩はその
「……三ヶ月」
白羽七彩という天使が発生したのは、たったの三ヶ月前だ。気付いたら彼女は高校生くらいの少女の身体でこの街に存在していたのである。
しばらく
「赤ちゃんじゃん。おもしろ」
「うるさいっ。天使に年齢は関係ないのっ」
確かに人間の
顔を赤くしてぷるぷる
「大変だね。あんなふうに戦わなきゃいけないなんて」
そう言った彼の表情はほとんど動かない。しかし、それは彼なりの同情なのだと七彩は受け取った。
「……うん」
「普通の高校生には、ちょっと
顔を上げた七彩が見たのは、
『わたし以外の天使を殺してほしい』
芙蓉にそれを
だから、七彩はあせっていた。
もう他人を頼るしかなくて、
しかし、彼も『普通の高校生』だ。七彩が
――だとしたら、わたしはどうすればいいんだろう。
「今日は帰ろう」
そんな芙蓉の言葉が、七彩の思考をさえぎった。
「続きは明日の
「……わかった」
七彩が
「なに、これ?」
「ごめん。最近うちに
両手を合わせて頭を下げた芙蓉を見て、七彩は思わずため息をついた。
「いいけど、早く言ってよ……」
なお、七彩は『
レジ打ちをしていた店員に
――お金ないって言ってたくせに、色々頼みすぎじゃない?
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