第31話

◆タコマリウス王都北部

世界神教会併設孤児院



ドガガガーンッ


激しい衝撃音が響き渡り、ラーラさんが残っていた孤児院併設の教会?に衝突。

その瓦礫が彼女に覆い被さった!



「そんな!?ラーラさん!!」

「「「「「ラーラおねぇちゃん!」」」」」



なんてこった。

ラーラさんが吹き飛ばされ、そして瓦礫に埋まってしまった。

しかもオレを救う為に!



((馬鹿め。上位とはいえ、たかが勇者候補に過ぎない人間がグララに敵う訳がないだろう。まぬけな奴だ))



コイツ、まぬけだと?

勇敢に戦ったラーラさんを《まぬけ》と言ったのか!?


キッ

「ゆるさない……」


「ミコおねぇちゃん??!だめだよ!!」

「「「「「ミコおねぇちゃん!?」」」」」



ガランッ


オレは近くの瓦礫から木材の棒を握りしめ、振り絞る怒りでグララのヒゲを睨みつけた。


そしてグララに向かっていくオレ。

背後でミーナちゃんや他の子供達が制止するが、その声はオレには届かない。

何故ならオレの怒りは、髪の毛が逆立つくらい頂点まで達しているからだ。

許さんぞノーロイ、そしてグララ!!



ザッ

オレは棒を構えると、グララのヒゲに対峙した。

地面から伸びるグララのヒゲは全部で三本。

そのどれもが直径は30センチで黒光りする極太のヒゲだ。



((巫女、何をするつもりだ?))

「ノーロイ!お前はラーラさんの仇、許さない。オレと戦えノーロイ!」

((ピャッピャッピャッピャッ、今回の巫女は随分と勇敢なんだ?笑えるなぁ))



ムカッ

「でやああああっ!!」

ガキンッ、カンッ、ガカンッ



オレは奴の言葉の最中、ヒゲに棒を振り下ろした。


許せなかった。

自分が馬鹿にされてる事じゃない。

本来は勇者として召喚されラーラさんを守る立場に成るハズだった、オレの今の立ち位置に無性に腹が立ったからだ。



「くそ、くそ、くそ、くそ、こなくそぉ!」

((面白い。今回の巫女は好戦的なんだ。いいよ、グララのヒゲをはね除けられたら俺様が戦ってヤル。さあ、やってみろ巫女))



くっそう!!

グララのヒゲは動きを止め、オレに打たれるままになっている。


なのに!

オレがいくら棒で殴っても跳ね返されるだけ。

まるで固い金属棒に打ち込んでるみたいだ。

ラーラさんはこれをはね除けていたのか!?



「はあはあはあはあっ」

((息切れが酷いな巫女。大丈夫か?まだグララのヒゲはピクリとも動いてないぞ?))

「う、うるさい!姿を見せない卑怯者!」

((卑怯者?ハハハ、何を言い出すのかと思えば俺を卑怯だと?笑わせる。巫女の力を借りねば我々に対抗出来ない勇者ども。自分の力でない借り物の力を振るう奴らは、我らから見ればもっと卑怯だぞ))

「お前らが人間を襲うからだ!人間の生活を脅かすからだ!だから勇者は勝たなければならない。どんな力を使っても!」

((ふん、所詮お前は魔王様の贄。それでこの世界は我らの物だ))

「魔王なんか糞食らえだ。オレはお前らを許さない!」

((巫女!?今、魔王様を侮辱したか?))

「ああ、何度でも言ってやる。魔王なんか糞食らえだ!」

((いいだろう。巫女は生け捕りだが《生きていればいい》な。グララ、やれ!))



ビュンッ、バシンッ


「がっ?!」


な、何だ?

グララのヒゲが弓なりにしなったと思えば、オレの背中に激しい痛み?

くそ、何が起こっている?!



ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンッ



「がっ!、くそっ、ぐっ、あが!?」


グララのヒゲが見えない?

そして前後左右から痛みが続く!

うぐお!!



ドサッ

「あ?あぐあああ!???」



オレは連続する攻撃に堪えきれず尻餅をついた。な、情けない!



((巫女、さっきまでの威勢はどうした?打たれてばかりじゃどうにもならないぞ))


「「「「「ミコおねぇちゃん!!」」」」」

「だ、大丈夫だ。皆は逃げるんだ!」



子供達はオレを気にして全く逃げようとしない。

失敗した。

オレが怒りで我を忘れた為に子供達を巻き込んでしまった。

もう、負けるわけにはいかない!


だが!

ちくしょう。

まったく歯が立たないどころか完全に遊ばれている。

オレは勇者に力を授けられる巫女だぞ!?

その力はオレの中にあるはずだ。

その力を、何故にオレが使えない??



ヒュンッ

バキッ

カランッ

「が!?うわあああああ!!!」


「「「「「「「きゃああ!?」」」」」」」

「「「ミコおねぇちゃん、嫌あぁ!!」」」



棒を落とした。

激しい痛みが右手を襲う。

右手が変な方向に曲がってる?

うぐっ、折れた、のか。



ザザッ

「………………」

((終わりか、巫女?もう、喋る事も出来ないようだな))



膝を地面についたオレ。

痛みを堪えて動きが取れない。

オレを拘束するべく迫るグララのヒゲ。

万事休す、か。




「ミコ!何やってんのさ!」

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