TS転生巫女は今日もてんやわんや。それでも勇者を助けて世界を救います。

無限飛行

第1話 ついにオレの時代だぜ!あれ?

◆敬 視点


はぁ、今日もしんどい。

やっと自宅アパートに帰ったオレは、背広の上着を脱ぐと、そのままベッドにダイブした。


オレの名は山白 敬、27歳。

中堅商社勤めの、しがないサラリーマンだ。


上京して中堅商社に就職し、さあこれから楽しいオフィスライフと思いきや、14日間の連続連勤。

正社員は名ばかりのサービス残業盛り盛りの真っ黒企業。

睡眠時間3時間で直ぐに出社。

これを4年も続けてた。


「ついてないオレの人生。これまでか」


将来に何の展望も見出だせない今の現状。

待っているのは、くだらない上司のパワハラと過労死だけだ。


くそっ、どうせなら異世界召喚されて、勇者になって魔王を倒し、悠々自適なハーレムライフを満喫したい。


ラノベ宜しく、どこぞの神様が迎えに来るとか。


「って、あるわきゃねーよな」


はぁ、もう早く寝ないといかんのに、何やってんだオレ?

睡眠時間3時間なのに?


「アホな事考えてないで、サッサッと寝よ寝よ。何せ3時間だから」


オレは、部屋の電気を消灯した。



◆◇◇◇






『パンパかパーン、おめでとうございます!副賞、勇者召喚が当たりました。貴方が今日から勇者でーす』



んん?

急に騒がしくて目が覚める??

ありゃ、ラジオをつけっぱなしか?

ラジオ、ラジオ、ラジオと、ん?枕の後ろ辺りをまさぐったがラジオはない。


あれ?オレ、考えてみたらラジオ持ってないよな。

じゃ、机の上に置いたスマホが電源入ってんのか?


うう、この2月のくそ寒い時期に、せっかく温めた布団から出なけりゃならないのか。

電気代、浮かせるんでエアコン動かしてないんだよな。

ほっとくか。


『もしもーし?聞こえてますよね?』


ボイスAIか?ずいぶん、感情豊かだな。

まあ、どうでもいいか。

睡眠時間3時間、睡眠時間3時間、睡眠時間3時間、睡眠時間3時間、睡眠


『あのーっ、次があるんで、急ぐんですけど!ちょっと、聞こえてます?!』

ガバッ

「だーっ、うるさい。寝れねーっ!!明日、また仕事なん……誰?」


オレが布団から起き上がると、布団の横に頬っぺた膨らませた北欧系美少女が何故かチョコンと正座していた。


『やっと起きましたか!ほら、行きますよ』

「行く?何処へ?」


美少女がオレの手をとって引っ張っていく。

随分積極的だな?

流石、オレの夢の中だ。

夢?夢か。

じゃ、夢なら何してもいいよな。



『貴方は副賞で勇者が当たったんです。世界の狭間に行って勇者の準備をし、異世界を救ってって?きゃあ?!な、何をやって?!』

「何って抱きついただけ?夢なんだから《おさわり》合法だよね?現実世界じゃ許されないけど、ロリ美少女におさわりでも、ぜんぜんオーケー牧場じゃん」

『アホかーっ!そんなん何処でも犯罪よ。何がオーケー牧場か?!』

「ガーン。そんな、夢の中ですら上手くいかないなんて……もう、お終まいだぁ」

『え?だから、ええっ?!何でそこまで落ち込んでるの??!』


もう死のう。

今死のう。

ロリ美少女に抱きついて死のう。


『きゃあああ???!勝手に落ち込んで、自殺願望して、最後は私に抱きついた!?巻き込むのは止めなさーい!私は女神!神罰下すわよ!』

「柔らかであったけー。もう死んでもええ」

『ええいっ話聞かんか!?走れ雷撃!』


バリバリバリバリバリバリバリバリッ


「あだだだだだ、しびれれれれ!??」






◆◇◇◇



「そ、そうですか。神様でいらっしゃる。それは大変失礼しました。で?」


えーと?

寝起きドッキリでロリ美少女に雷撃受け、やっと落ち着いたと思ったら正座させられてるこの状況。

一体どーなってるの?



『だーかーらー、私は女神だって言ってるでしょ!貴方が望んだ事じゃない!』


目の前の北欧系美少女が腕組みしながら見下ろしつつ、何やら盛んに訴えてるがどうゆう状況だ?

三時間しか寝てないんだが?


女神?オレが望んだ?

えーともしかして、勇者召喚、チートにハーレムって事???


『そうです、勇者召喚です。異世界を救って下さいって何度も言ってるじゃないですか』



おお、ホントに来た。

夢にまで見た異世界召喚。

そして輝かしき勇者になり、魔王を倒してハーレム生活。



『はあ、何故に勇者召喚がハーレムに繋がるかは分かりませんが間違ってません。貴方は副賞で勇者が当たったんです。世界の狭間に行って勇者の準備をして下さい』



ん?

「副賞?」

『ほら、飛びます』

「え?」


とっ思ったら、足元に魔方陣?!


「おお、異世界召喚っ、勇者最高ーっ!」

『ああ?!転移中にそんな、はしゃいだら駄目です。転移が安定しなくて!』


オレがおもいっきり、万歳をしていると、美少女が慌てて、オレの手を取った。


『きゃあああああっ!』

「うお?!」


が、美少女が転けた。

オレの手を引いたままだから、オレも一緒に転けた。


「ふがあああ~っ!」


そして、そのまま意識を失ったのである。



◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



『起きて下さい。もしもし?』


ん?ここは何処だ?


『はあ、ここは世界と世界の狭間です』


ああ、転移するって言っていたところだな。

なんだ、ここは?

周りは真っ白で何にもないじゃないか。


『……ここは転生の間です。はぁ、なんでこんな面倒な事に……』


今、面倒とか言った?

なんなの?ワンピース着た美少女がガクッて頭落として、落ち込んで座り込んでる?


オレ、召喚されるんだよね?

神殿とか、城の謁見の間とかに召喚されて、勇者様、よくお出で下さいましたとか、美人のお姫様に言われて、皆に期待されて、ちやほやされるんだよね?



『敬さん。あなたは、副賞に当たって勇者として、とある異世界に召喚されるはずでした。それなのに貴方の身体は転移中の事故でバラバラになってしまったんです。ほんっとに申し訳ないです』



は?

今、理解不能ワードがあった様な??

バラバラ?何が?

オレの身体がバラバラ?

バラバラのパラパラでミンチになったって事?


『はい、ミンチになりました。今の貴方は、身体のない思念体、魂だけの存在です』


魂だけ?じゃ、オレは今、幽霊って事?なんで喋れてるの?

ん?いや、オレ、最初から喋ってんじゃなくて頭で考えてるだけ?

声が出てない?!


『その通りです。私が貴方の考えを読んで会話してるんです。はぁ』


はぁ、じゃねぇ!

ため息ついてる場合か?

オレの、栄光の、勇者ハーレムライフはどうなる?

オレの身体を返せーっ!


『ごめんなさい。もう、貴方の身体は時空間の狭間でバラけちゃったので、回収出来なかったんです』


はぁー?!

なら、オレはこれからどうなるんだ!


『あ、あの、新しい身体を再構築されて、その世界に送られます。生き返れます。ただ、まったくの別人になっちゃうんです。だから、元の世界に戻る時は、敬さんとしては戻れないんです』


元の世界?

戻れんの、元の世界?


『はい、魔王が倒されると、敬さんの前に一定時間、転移魔方陣が現れます。もちろん残るなら魔方陣に入らなければ、その世界に残れます』


成る程、なんかゲーム的なんだ。

まあ、またあのブラックな会社に戻るつもりはない。

オレは、魔王を倒してハーレムライフと悠々自適な生活を選ぶからな。

それでオレの新しい身体はイケメンなんだよな?

もちろんチート付きで。


『はい。転生勇者は、美男美女と決まってますから。もちろん、チート付きです』


ヨッシャーッ!勝ち組転生、薔薇色人生が待ってるぜ。

そうだ?!

オレの容姿は?前もって見れるのか?


『向かう世界の神が構築するので、見ることは出来ません。私は世界の狭間を管理する女神なんで』


ありゃ、貴女は女神様だったんですね。これは、失礼しました。


『はあ、何度も言って、いえ、大丈夫です。それでは、そろそろ転生されますが良いですか?』


はい、OKでーす。

あ、最後に聞きたい事があるんですが?


『はい、何なりと』


副賞ってなんの事?


『う、おほほ、なんの事でしょうね?』


なんで誤魔化すの?

副賞があるって事は1等もあるって事でしょう?どういう事?


『う、分かりました。もう、いろいろ変更になってるはずだから言っちゃいますね。1等勇者は文字通りイージーモードでチート盛り盛り。何でも欲しい物、やりたい事ができる、まさに主人公になれる勇者の事です』


おお、まさにオレにピッタリな、ん?

なら副賞勇者は?


『副賞勇者は、現地の勇者を主人公ヒーローとして、もり立てて影で支える勇者。まあ、ぶっちゃけ、ただの当て馬ですね。最後は、一人寂しく元の世界に帰っていく』


酷いな、おい?!


『まあ、敬さんは、私の不手際で今の状況になりましたから、現地では必ず主人公になれるはずです。ちゃんと現地の神にもお願いしておいたので安心してください』


ヨッシャーッ!

オレの時代の幕開けだぜ!!

ハーレムライフ、ハーレムライフ!


『それでは、そろそろ転生の時間です。グッドラックでーす』


はい、狭間の女神様。

ありがとうございました。

うお?!眩し。

おお、魔方陣だ。

それじゃこれで、敬、いっきまーす。




▩◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



━━━━━━狭間の女神━━━━━━



『ふう、とんだアクシデントでしたが、なんとか行きましたか。これで、あの世界を救ってくれれば。あら?やだ!敬さんが行った世界は勇者枠がもう一杯だったわ。敬さんは勇者になれない。じゃあ、何になるのかしら?もう、現地神に任せるしかないわね』

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