ＴＳ転生巫女は今日もてんやわんや。それでも勇者を助けて世界を救います。

第2話 筋肉モリモリ？

◆タコマリウス王国

謁見の間

中世ヨーロッパ風の建造物。

中世衣服を身に付けた大勢の人々。

その大勢の人々が見守る中心。

数人の杖をもったローブの魔法使い達が魔方陣に魔力を注ぎつつ呪文を唱えている。

すると魔方陣が輝き、強烈な光が広間を包んだ。

「おお、ついに召喚に成功したか？！」

王冠を被った、王様と思われる長いヒゲの人物が立ち上がり事の成り行きを確認する。

人々が驚嘆して魔方陣を見つめる中、強烈な輝きが消えると、魔方陣の中央に座り込んでる小さな人影があった。

人影は起き上がると王を、周りをキョロキョロと見回してる。

王は一歩玉座から人影に歩みより、人影に手を差しのべ大きな声で言った。

「よくぞ参った、巫女どの。どうかこのタコマリウス王国を救う力となって下され！」

「巫女？」

人影は王の手を取り立ち上がったが、王の言葉に疑問を感じ頭を捻っているようだ。

ドサッ「ふげ！？」

そして人影は王の手を取ろうとして一歩、前に出たところ、自分の長い髪に足を取られ、見事につんのめった。

王様以下、皆の目が点になって人影を見ていると、突然人影は何かに気づいたように、自分の足元を見て固まった。

その後、自分の顔、胸、股、を触り、もう一度、股を触ってから、辺りを見回してガニ股に立ち上がって大きく叫んだ。

「なんじゃ、こりゃーっ？！！」

叫んだ言葉使いはガサツだったが、声は美しいソプラノだ。

そう、人影は日本の神社などの白赤の巫女装束を着た、床にまでつく長い黒髪、黒目、透き通るような白い肌の小さな美少女だった。

▩▩▩◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

◆敬 視点

「なんじゃ、こりゃーっ？！！」

なんで？なんで？！なんでなんだーっ！！

なんで巫女？！

なんでチンチクリン？！

なんでオッパイが無い？！(いいのか)

なんで《息子》が居ない？！

髪が長、巫女服、ソプラノ声！

オレは何になって召喚された？！

召喚されて、王さまに謁見して、王国を救ってくだされと言われた。

ここまでは予定通りだった。

予定通りだったんだ。

王さまが《巫女どの》と発言するまでは！

なんてこった、オレのハーレムライフが、オレのハーレムライフが消えていく。

こらーっ！

狭間の女神！

ちゃんと現地神に伝えるって、言ってたやないかい！

最初から性別間違ってるやん？！

ちゃんと仕事しろよーっ！

「こほん、それでは巫女どの。宰相のクラーケンです。まだ色々と混乱されてると思いますが、早速パーティーメンバーになる勇者達をご紹介します。どうか、そのお力をお授けください」

細身眼鏡インテリ風男がオレになんか言ってるが何だ？

力を授ける？

「勇者達？！」

おい、なんで勇者がいるんだ？

オレが勇者じゃないのか？

それに勇者達？

バターンッ

ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ

うお？！

後ろのでかいドアが開いて、運動会の入場の如く、２０人くらいのムサイ男どもが手足を揃えて入ってくる？！

うはーっ、男の汗臭い？！

何、コイツら？

皆、海水パンツみたいなのだけで筋肉モリモリボディービルダーみたい。

なんだけど、汗だくで全身がテカテカだ。

近寄りたくないーっ！

しかも顔不細工！

少年漫画のヤンキーものかよ。

○塾か！

「それでは巫女どの。お力をお授けください」

宰相クラーケンがなんか言ってるが、お力を授ける？

巫女って力を授けるのか？

どうやりゃいいんだ！

ん？！え？？

全員が口唇延ばしてタコ口唇になってる～っ！？

ま、まさか？！

「巫女どの、いかがいたした？勇者達は用意出来ていますが？」

「あの、つかぬことを聞きますが、力を授けるとは、どういう事でしょうか？」

うう、聞きたくないが念の為聞くしかない。

オレは宰相に確認した。

「成る程。巫女どのはまだ、ご自分の力の使い方をご存知ない？分かりました。私目がお伝えいたしましょう。代々の召喚巫女どのは歴代勇者に接吻によって力を授け、勇者を真の勇者に覚醒させる力があるのです。もちろん接吻により、巫女どのは真の勇者達の伴侶にも確定します。ですので巫女どのは、勇者を選定する義を行わなくてはなりません。もちろん全員を選んでも構いません。巫女どのは一妻多夫を許されております」

うわああ？！やっぱりか！

つまり勇者になりハーレムを築くハズが、巫女になって逆ハーレムを築く人生って事？

しかも接吻？

ヤンキー勇者、全員とのキス～？？？

ぎゃあああ、そんなの誰得だってーの！？

何の罰ゲームだぁ！

「ささっ、巫女どの。皆が待っておりますぞ！時間もありません。早く勇者の選定を」

どうする？

オレは、そろ～っと勇者達を見た。

ニカッ

(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)

(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)(^-^)

ぎゃあああ、皆、各々のポーズ作って、ほぼ同時にオレに振り向いたよ？！

しかも真っ白い歯を出して光らせてる～っ

ヤバい、ヤバい、ヤバい。

キモい、キモい、キモい。

しかもキスしたら伴侶？

ムキムキマッチョと結婚？

毎朝、プロテイン出して今日もこれからランニング３０キロね、早く帰ってね。

朝食出して待ってるわ。

って、オレが？

ランニング頑張ったわね。

直ぐに朝食にする？

それとも、ワ▪タ▪シ？

いやいやいやいや絶対ムリ！！！

オレはＢＬでもホモでもなく、あくまでＴＬ希望です！

あれ？

だけど今のオレの性別は女だから、このままでもＴＬ？？？

だとしてもハーレム作るはずが、筋肉逆ハーレムだと？

ぐああああ、何してくれてんだ、あの女神！

な、何か逃げる方法はないか？

「あ、あの、選定を先延ばしする事は？」

「出来ません。先ほど魔王に宣戦布告を受けました。魔王の軍勢が此方に向かっております。真の勇者が居なければ我々は終いです」

宰相、さらっと言ったよ。

これ、強制イベントじゃん！

うわああ、どうするオレ！

せ、せめて、優しそうな、オレの意見を尊重して、イエス▪ロリ▪ノータッチでいてくれそうな…………チラッ

ギラギラギラッ

ぎゃあああーっ、全員、目が血走ってる！！

無理無理無理ーっ！

キスした途端、背骨折られるって！

魔王の軍勢が来る前に軽く死ねる自信がある。

だ、誰か助け？！

あれは！！

「さ、宰相！」

「何でしょう？」

宰相がオレのところに歩いてくる。

オレは宰相の耳に小声で言う。

「姫様を選びたいんです」

そう言ってオレは玉座の右を指差した。

そこにはドレスを着た美人が座っている。

実は先ほど王の右隣に姫様が来たのだ。

遠目だが間違いなくドレスを着た美女に見える。

左隣はマッチョ王子か？

まあいい。

この際一か八かだ。

宰相、振り返って姫を見て、またオレを見てからニッコリした？

「さすが、お目が高い。よろしいですよ」

え？今、よろしいって言った？

言ったよね？

もう、取り消し不可だもんね！

ヨッシャーッ、オレは今日から百合ハーレムを目指す！

お？

宰相が何やら姫に話したら、姫がニッコリしてオレの方に駆けて来る。

しかも両手を広げて嬉しそうに走ってくる。

そんなに嬉しそうされたら何か小恥ずかしいじゃないか。

ういやつ、ういやつ。

オレも手を広げて出迎えてやろう。

うぶそうな可愛い子じゃん。

たっぷり可愛がってあげる。

おいでーっ！

ニッコリ。

ん？

なんだ？

近づいてくると結構背が高い？

ってオレ、背も低くなってんだな。

１５０センチ位か？

でも姫はもっと背が高くて、え？１８０はある？っていうか、そこの並んでる筋肉勇者とあまり変わらない？

ま、まあ、スレンダー美人って事だよな？

いいじゃないか、スレンダー美人。

姫さん、しゃがんでオレの背丈に合わせてくれたよ。

優しいじゃん。

さてキスをすればいいんだな、キス……

▪▪▪▪

いや、姫様でもそのタコ口唇で迫られるのはキツイんですが？

いや、いや、いや、姫様の顔で目もギラギラするんですか？？

なんか引くんですが。

ドカアアンッ

その時だった。

突然、後ろの扉が吹き飛んだのだ。