第26話 地震と力

◆タコマリウス王国

王都外れラーラの孤児院

ケイ(敬)視点



「アナタ、何者?」

「オレは………」



ズズンッ

ビリビリビリッ



「きゃっ!?」

「な!?地震?」



突然の大きな揺れ。

孤児院全体が震えている。

デカイのか!?



「ミコ、ジシンって何なの!?」

「えっ?地震を知らない??」

「知らないわ。こんな揺れ、初めてよ!」



この地域はこれ迄、地震は起きてない?

なら、これは地震じゃないという事だ。




「ラーラさん、子供達の避難を!オレも手伝うから!」

「な、何が起こっているの?」

「詮索は後。先ずは子供の達の安全を確保する事が先だよ!」

「わ、分かった。みんな?!」


ズズンッ

ズズンッ

「「「「「きゃああああ!!」」」」」

「「「「「「うわあああん!?」」」」」」



バギッバキパキッ



オレは異音に天井を見上げた。

不味い!

天壁に亀裂が走り、このままでは建物が持たない!?



「みんな、家の中央に集まって!そして頭を押さえてしゃがむの。急いで!」

「「「「「ラーラおねぇちゃん!」」」」」

「ラーラさん、駄目だ!建物が持たない。屋外に避難しないと」

「!?」

「天壁に亀裂が!このままだと建物が崩れるよ!」

「ええっ!?」



バキッピシッ

「「「「「うわあああん!?」」」」」

「っ、みんな、急いで表に出るのよ!!」



やべぇ、家屋全体が斜めに傾きだした!?

もう余り猶予がない!




「ラーラおねぇちゃん、ドアがあかない。でられないよ!?」

「私がやるわ!ミーナ、退いて!!」

ガタガタッ

「開かない!?」

「くそっ、家屋が歪んでドアが開かないんだ!オレも手伝う!」



ぐっ

オレはラーラさんと二人、ドアノブをおもいっきり引いた。

だが、まったくビクともしない!?



「はあ、はあ、こなくそっ!」

「ちょっと、変な掛け声止めなさい?!」

「すみません」

「ふう、ミコ、子供達と一緒に退いてくれる?ちょっと本気だすわ」

「ラーラさん?」



突然、ラーラさんがオレを引かせると、腕をまくりあげた。

そして拳を握りしめると、ドアに向かって殴る体制?

一体何を?!



「ハアアアーっ!」


シュウウウーッ


「な?!」


ラーラさんから湯気!?

オレは慌てて手を広げ、不安で集まっている子供達をラーラさんから引き離す。

ラーラさん、真っ赤になって湯気が???



「やあああぁ━━っ!!」


ドカァアアーンッ



「うわっ?!」

「「「「「「きゃあああっ!」」」」」」

「「「「「「わああっ!!」」」」」」



す、凄い、ラーラさん!

ドアを直接殴って吹き飛ばしたぁ?!

物凄い怪力だ。

彼女は一体何者なんだ!?



「はあはあはあっ」

「ラ、ラーラ、さん?」

「大丈夫、ちょっと頑張っただけだから。とにかく早く外に出よう。みんな、付いて来て!」

バタバタバタバタバタッ

「「うえぇーん、ラーラおねぇちゃん!」」

「「「「「うわわぁーん!!」」」」」

「ほら、みんな怖くない。早く外に出ましょ。ミコ、手伝って」

「はい!」




◆◇◇◇




バキッ

バキバキバキバキッ

メキメキッドガガンッ


オレ達全員が孤児院を出た瞬間、孤児院は大きく音を立てて崩れ落ちた。

まさに間一髪だ。


ラーラさんは、子供達を孤児院の裏庭だった場所に誘導して避難した。

もちろんオレも引率したよ。


既に外は夕闇。

下手に遠方に避難するより、此方の方が安全だろうとの考えからだ。


孤児院の場所は王都外れのやや高台。

孤児院の裏庭からは下町が一望出来るハズだったが、夕闇と立ち上る粉塵がオレ達の視界を奪い状況把握が難しい。

助けを呼ぼうにも身動き出来ない状態だ。



ゴ━━━━━━━━━━━━━━━ッ

ワアアッ

きゃあああーっ



街は依然として轟音は鳴り止まなず、人々の悲鳴は途切れる事がない。

ここに居ても絶えず揺れが続き、幼い子達は顔がひきつったままだ。

地震を知らない民族が、初めて体験する大きな揺れ。

街中はほとんどパニック状態ではないか。



「さっきは子供達を避難してくれて有り難う。私たちが無事なのはアナタのお陰よ」

「そんな、ラーラさんがドアを打ち破ってくれたからですよ。子供達を救ったのはラーラさんです」

「子供達はパニックになっていた。アナタが手を広げて誘導したからスムーズに出られたの。謙遜する事はないわ」



いや、謙遜してるのはラーラさんですよね?

孤児院に閉じ込められたあの時に、物凄い力で入り口のドアを吹き飛ばしたのはラーラさんですから。


そういえばあの力。

ラーラさんの見た目からは想像も出来ない力だったな。

あの力は一体………?




ズズンッ

「「「「きゃあっ!」」」」

「皆、大丈夫。ここにいれば大丈夫だから」

「「「「ラーラおねぇちゃん、うわわぁーん」」」」



未だ収まらない地面の揺れ。

流石に上の子達は何とか落ち着いてきたけど、小さい下の子達は揺れに敏感で泣き出した。

ラーラさんから離れては泣いて、ラーラさんに抱きしめられては落ち着く。

その繰り返しだ。


それにしても揺れが続く。

例え地震だとしても、ちょっと長過ぎじゃないか?


ラーラさんと子供達。

それを眺めながら、ふと再び彼女の力の事が気になる。

だから聞いてみたくなった。



「………その、ラーラさん。あの時の力は、孤児院のドアを吹き飛ばした力は、アレは何だったんですか?」



オレの質問に子供達を抱えながらニコリと笑うラーラさん。

そしてオレの質問に口を開いた。



「…………私も孤児よ。つまり、勇者養成所で訓練を受けた元勇者候補」

「勇者候補?!」



勇者候補だってぇ!?

だけど、まったくそんな風に見えない。

えっ、本当に?



「これでもキンニクメリー称号を受けた事があるの。剥奪されたけど」

「剥奪?」

「私にはご覧の通り筋肉がないでしょ?だけど養成所にいた時はちゃんと立派な筋肉があったのよ」



だーっ、想像できねーっ!?

ラーラさんがあの、キンニクメリー王女と同じ姿だったなんて!

あれ?

でも今は何故に普通の美人女子なんだ?



「さらに高みを目指したら筋肉が消えちゃったの。不思議でしょう?」

「高みを目指した?」

「そう。私はキンニクメリーの称号では飽きたらず、さらにその先を目指しトレーニングを続けた。そして気がついたら元に戻っていたの」



そんな事あるかーい!?


いや、ここは異世界。

異世界アルアル。

《究極筋肉進化の果ては元のモクアミ》


って、分からんわ!

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