第19話 何があった?

◆タコマリウス王城

第一王子寝室

ケイ(敬)視点



「巫女、顔色が悪いようだ。早く休んだ方がいい」

「あ、う、うん」



いや顔色悪いのはアンタが原因なんだが。

って、ベッドに誘われて顔色が良くなる気がしねーっ?!



「何もしない。前も言ったが、巫女の気持ちが一番だ。どうか安心して休んでほしい」

「………………」



って言われて王子、自身のベッド横をパンパン叩いて呼ばないでくれ!?

毎回王子と同じベッドってだけでもハードル高過ぎなんだよ!

とはいえ、このままでは埒が開かない。

オレはしぶしぶベッド端、出来るだけ王子から離れて床についた。



シーンッ



無駄に静かな室内。

寝れねーっ!?



「巫女、まだ起きているか?」

ドキンッ「え!?は、はい」



やべっ!

どっと冷や汗が出ちまった?!

寝たんじゃなかったんか~い!!



「あの時私を選らんでくれて嬉しかった。そして今後、巫女がどのように決めようと私は全てを受け入れるつもりだ。有り難う」

「………………………」



幼い頃から真の勇者になる為に努力と研鑽を積んできた第一王子。

そしてオレに選ばれて礼を言うほど嬉しかったのか。

何だか離婚が切り出しにくいんだが。


いや、離婚する気満々だよ?

だって第一王子たっての希望だもん。

それにオレのパートナーに男は無いから。


ん、無い。

断じて無い。

第二王子も無い無い。

まあ向こうは単なる遊び友達としか思ってないお子ちゃまだし?


けどなぁ、巫女に憧れて一生を勇者になる事に捧げて、しかも間違いでもオレが選んだんだよなぁ。

一応オレ、選んだ責任はある、のか。


それにあの時、第一王子にドーピングしなかったらオレは牛男に喰われてたし。


助けられたんだよな、オレ?

第一王子に。



「王子?…………………………」


「スースースースースー」



寝たんか~い?!




◆◇◇◇◇



チュンチュンチュン


「はい、朝ですよーっ。起きる時間です、巫女さま?」

「ふぁ~っ、朝ぁ?」

「そうですよ。ふふ、だいぶ昨日はお楽しみでしたね?」

「ほぇ?」

「気づいておりません?だいぶ乱れておいでですよ」



着ぐるみメイドが何か言ってるが何言ってんだ?

乱れてる?何が??



「乱れてって、何が……………!!!??」



な、何んじゃこりゃあ!?

オレ、巫女服乱れて完全に半裸じゃん!

ぐわああっ、何してんだオレ??!

お、王子は!?



「居ない?」

「ああ第一王子は辺境にモンスターが現れたとかで今朝方出ていきましたよ」



またこのパターン?!

オレ、また意識無くて王子に出ていかれた状況って、しかも巫女服乱れまくりって何だよ?!

んん?



「巫女服がいつものじゃない?」



ナニコレ?

巫女服なんだけど変にシースルーじゃね?

オレ、うっすらパンツ見えてんだけど???



「ああ、それは寝間着タイプの巫女服です。普段の巫女服のまま寝たら駄目じゃないですか。巫女さま専用に王子が用意させたものです」

「王子って、第一王子が?」

「他に誰がいます?」

「………………!」



おい、オレは確か、通常の巫女服を着たまま図書室からお持ち帰りされたよな?

で、そのまんまベッドに入った記憶しかないんだが??



「えーと?二号さん?この寝間着巫女服、二号さんが着せたんですよね??」

「着せてませんよ」

「じゃあ、誰が着せたんでしょう?」

「朝方、部屋には第一王子様しか居ませんでしたから、ご自分で着てないのなら第一王子様じゃないんですか?」

「…………………」



密室でオレが意識無い状況で一体何があった、第一王子?


ナニしてくれたん、第一王子ぃい!!!?




◆◇◇◇




「はい、朝食をお持ちしました、巫女さま」

「あのさ、二号さん?一言言っていい?」

「はい、何なりと」

「朝食持ってきてくれんの、有り難いんだけど、このメニューは何とかならない?」

「どのメニューですか?」

「この、青物一色と赤いの一色の半々、スッゴク健康的でいいんだけど」

「はい、健康第一ですね」

「………………」



取り敢えず起きたオレ。

いつもの巫女服に着替えてると、着ぐるみメイドが持ってきた朝食を見てフリーズ中。


ついでに朝の件は忘れよう。

オレは何もなかった。

何もなかったよ。

なかったんだ。

…………。




「巫女さま、固まってます」

「ソウダネ」

「今日は採り立てで新鮮ですよ」

「ソウダネ」

「とっても健康的です」

「………その、健康はいいけど、オレ結構痩せてると思うんだけど」

「はい。理想的な巫女さまですね」

「だから、その、ダイエット食はいらないんじゃないかなって」

「ダイエット食、ですか?」

「そう、ダイエット食」

「これはレタースとキャロットトですが」

「レタスを伸ばすと手紙みたいだな、じゃなく、ダイエット食だよね?」

「ご馳走ですよ?」

「………………」

「それにダイエット食は通常ゴボーですが」

「ウサギのダイエット食はゴボー?」

「コレです」

「ゴボウか?何で持ち歩いてんの?」

「時々噛ります」

「噛ってんのかーい!?」



頼む。

誰でもいい。

オレのメイドを変えてくれ。


出来れば普通のメイドにして━━━っ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る