第6話 着ぐるみメイドとタブーな話
◆
バタンッ
「巫女さまーっ、おはようございまーす」
「ふぇ!?」
「あら、巫女さま?朝から鏡とにらめっこです?それとも自分にウットリ?」
「んな訳あるかい!って、誰なの!?」
オレが鏡の前で悩んでいると、いきなりドアが開いてメイド姿のウサギ着ぐるみが入ってきた。
何でウサギ着ぐるみ?
意味わかんないんだけど!
それにノック無しで入ってきたぁ?
「あ、申し遅れました。巫女さま付きを命じられましたメイド、雪ウサギ二号です。あ、因みに雪ウサギは種族名なんで」
「雪ウサギ?ウサギの着ぐるみにしか見えないって、巫女さま付き?」
「はい。巫女さまのお世話は私、雪ウサギ二号が賜りました。私をお呼びになる時は2号さんとお呼び下さい」
「何か嫌な言い方だなぁ」
「気にしないで下さい」
メイド?メイドかあ。
巫女付きって事は、オレ専用メイドなんだよな?
ウサギのメイド?
異世界だからウサギ獣人って事なのか?
え、獣人って言ったら、耳だけケモ耳で身体人間のバニーちゃんじゃないの?
どう見てもどっかの遊園地キャラの着ぐるみか、イギリスの絵本ウサギにしか見えないんだけど。(ピーターなんちゃら?)
人間サイズの動物が日本足で服着てるだけなんだけど!
なんかガッカリなんだけど!
「此方こそっ、ええっと異世界から召喚されたから色々分からないから聞くけど?背中にチャックが有ったりする?」
「ちゃっく?ですか?」
「いや、ごめん、なんでもないわ」
「?」
やっぱ、着ぐるみじゃないわ。
ちゃんと口が動いてる。
何かリアル~っ。
「それじゃ、朝のお風呂とお着替えを用意しますね」
「お風呂……」
「はい、お風呂です」
風呂、お風呂かぁ。
そういや召喚されたのが昨日で、襲撃に結婚式でバタバタだったな。
それにキス…………。
「はい巫女さま、お着替えをしますよ?あら?耳が真っ赤ですね?昨日はお楽しみでしたものね」
「はあ、お楽しみって!?」
「ウフフ、昨日は初夜じゃないですかぁ。いっぱい愛されたんじゃないですかぁ?」
「あ、愛され!!?いやいや何も無かっ」
「ええっ、まさか何も無かったと?」
「!」
あ、今のは失言になるのか!?
不味いか。
「う、うん。いっぱい、ゴニョゴニョ」
「ウフフ、良かったですね。お世継ぎも早そうで国も安泰です」
「お世継ぎぃ!?」
「はい、お世継ぎ。赤ちゃんです」
ぐわあああ!?
あかちゃん?赤ちゃん!!
オレが赤ちゃん産むわけ?
考えたくねーっ!!
「ゼハーッゼハーッゼハーッ」
「あら、息切れですか?!そんなに激しく」
「な、わけないわ!」
「まさか、もう胎教の準備です?」
「………勘弁して」
「ふふ、冗談です。少しは緊張が取れましたか?」
「え?」
ウサギ着ぐるみが近づきオレの手を取った。
もふもふ肉球は手触り良かった。
しかし完全に着ぐるみだな。
オレよりずっとデカくて幅広だ。
いや、そのウサギ顔で迫られても表情が読めないって。
バッ
「なっ!?」
抱きつかれた?
抱きつかれる事多いな。
もふもふで気持ちいいが。
「こんなちっちゃいのに、一人だけで召喚されて結婚して初夜なんて、なんて可哀想」
「な、何、を?」
「でもしょうがないんです。王子を恨まないでやって下さい。これも魔王が悪いんです」
「魔王?」
何の事だ?
王子との結婚が魔王のせい??
意味わからん。
「ああ、余計な事を!私ったら。申し訳ありません」
「いやいや話し途中で止めないで」
「先ずはお風呂ですね」
「あの、聞いてます?っ、うわっ!?」
着ぐるみウサメイドは、オレを抱えあげると、そのままお風呂場に直行。
巫女服を奪われスッポンポン。
悲鳴をあげる間もなく泡泡されてツルッつる。
ピカピカに磨き上げられて、気づいたら新しい巫女服を着せられていた。
何なの、この着ぐるみ!?
めっちゃ出来るメイドじゃん。
「すっかり綺麗になりました。髪も艶やかでお美しい。まさに伝説の巫女さまです。これで王子も喜ばれる事でしょう」
「アリガトウゴザイマス」
手際のよさに、つい片言になってしまう。
うう、お風呂は一人で入りたかった。
落ち着かないわ!
しかし着替えも巫女服なのは驚いた。
何か元の服と同じで着替えた気がしない。
文化的にはナーロッパみたいだと思っていたけど、こっちの女性の普段着が巫女服とか?
普通はワンピースとか、ドレスとかじゃないの?
「違いますよ」
「え?顔に出ていた?」
「ウフフ、そうですね」
やべ、オレって昔から嘘が苦手なんだよ。
すぐに顔に出るからな。
「タコマリウス国の女性は私もそうですが、普段着はワンピースですね。貴族さまはドレスでしょうか」
「ああ、だいたいオレの考えで良かったんだな」
「そうですね」
「じゃじゃあ、何で着替えが巫女服なの?」
「巫女さまだからに決まってるじゃないですか」
「いやそれだと」
「おかしいですか?」
「いえ、もういいです……」
何だろう?
オレが巫女だから着替えが巫女服って、随分と安直な気が……まあ、いいか。
「巫女さまは異世界から来たのにタコマリウス語がお上手ですよね?」
「あ、そ、そうだね」
確かにそうだ。
不思議だけど、まったく知らない言語なのに違和感なく使えているし、ちゃんと理解出来てる?!
いわゆる転生特典というヤツか。
普通なら大変苦労して習得するところを、まったくフリーパスって、これだけでも結構なチートなんだろうなあ。
実感無いけど。
「ところで、ずっと気になってたんだけど、ええっと、雪ウサギ二号が名前?それとも《二号さん》?」
「違いますよ」
「違う、やっぱ偽名みないなもんか」
「お
「まんまじゃねーか!」
「………そう、ですね。今の質問は巫女さまが異世界から来たから、此方の常識に疎いせいですね」
異世界から来たから………王子にも言われたな。今のやり取りって、やっぱりタブーな事なのか?
「この世界の住民は幼い頃から学ぶ事があります。それは」
「それは?」
「《名を奪われない事》」
なんだそれ?
なんかの迷信みたいなもん??
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