第4話 貞操の危機?!初夜の乗り越え方

◆敬 視点


「私の巫女、君の名前を教えてくれ」

「け、けい、と言います」

「ケイか。いい名前だ」

「………………」



ヤバいヤバいヤバいヤバい。

どうする、どうする、どうする!?

オレはどうすればこの危機を乗り切れる?


冷や汗たっぷりでベッドの上に座るオレ。

目の前には甘い言葉を紡ぐイケメン第一王子が迫ってくる。




一度は結婚式を逃げ出したオレだったが、結局は右も左も分からない城の中。

直ぐに袋小路にハマって大勢の人々に囲まれ、身動き出来ないところで王子にお持ち帰りと相成った次第。


そして再び始まった強制結婚式。

観念したオレが王子との強制接吻に応じたのは今更と云えよう。


だが、なし崩しに結婚式の進行に身を任せたわけではない。

当然ながらお約束。

神父を交えた《誓いの言葉》の義では其れなりに抵抗を試みた訳だ。



▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩


神父

「うぉほん、それではこれよりお互いに《誓いの言葉》を交わす義を執り行う事となります」


ヨッシャあ、この《誓いの言葉》で誓いを否定すれば、結婚式は成立せずに初夜を回避出来るハズ。

これが初夜回避の最後のチャンスだ!


「では先ずは王子から。王子、貴方は雨の日も風の日も巫女を守り、共にタコマリウス王国と世界の平和の為、かの魔王を討ち滅ぼしたあかつきには、巫女と未来永劫、添い遂げる事を誓いますか」

「はい、誓います」

「宜しい。では巫女よ………」

きたーっ

「はい。私は」

「以下同文」

ガタンッズッデンッ

「なあ!?」


あまりの理不尽さに、思わずズッコケて尻餅をついてしまった?!


省略?

誓いの言葉を省略だ、と?

そんなバカな!


「巫女、大丈夫か?」

「だ、大丈夫……」


ズッコケて座り込んだオレ。

そこに王子が手を差し出し、オレを引っ張り元の位置に立たせる。


は、は、は。

最早万策尽きて放心状態。

まじヤバい。

このままでは初夜まっしぐらではないか。


どうする、オレ!?


▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩



と、いうのが結婚式までのあらすじ。

はい、オレの回想終了。


その後トイレだなんだと、あの手この手で逃げだす算段を立てたものの、ガッシリと王子に掴まれた手を離す事が出来ずになし崩し。


それで現在、王子の部屋で絶賛貞操の危機を満喫中。

もはや万事休すと相成った状況。


マジで誰か助けて!



「巫女、震えておるのか?」

「………………………」


めっちゃ震えてるわ!

なんの罰ゲームだコレ?!

このまま王子が躊躇して初夜を取り止めにならない?


「大丈夫だ。飽くまで儀礼上の事。怖がる必要は何もない」


ヤる事はヤるんかい?!

やべぇ、王子のギラギラが加速中。


何てこった。

オレはこれから性格も名前も知らない相手、それも男に抱かれてウフン、アハンしなきゃあならないのかよ!

オレがウフン、アハンさせるはずだったのにシャレになんねーじゃん!?

そーいやあオレ、王子の名前も歳も性格も知らなかったわ。


歳?

アレ?歳か!

そうだ!ここは一か八か、初夜を回避する最後の一手!


「あ、あの、王子」

「どうした?巫女よ」

「じ、実はオレ、まだ成人してないんです」

「成人してない?巫女、君は今幾つなんだ?」


幾つ、幾つか。

ん~27はあり得んな。

そういやオレ、まともに自身の今の姿、見た事なかったわ。

転生してるし、背丈が縮んだから勝手に若いと判断したんだが、どっかに鏡でもないかな?


と、王子から目線ずらして部屋を見回すと、王子の背の壁側に何やらデッカイ鏡有り?

おい、ラブホか?

ベッド全体が映るほどの大きさじゃないか。

んん?

ベッド端にすわる二つの影。

手前一つは背が高いから直ぐに王子と分かる。

じゃあ、奥の背丈低い黒髪ロングがオレってわけか。


艶々の長い黒髪に目の大きな、未だ、あどけなさが残る背丈低い美少女。

あれがオレ??

いやいやヤバいくらいにロリータじゃん?

マジにあの美少女がオレ?!

どう見たって12から13じゃね?

中学生じゃん!

おいおい完全にアウトでしょ!!



「あの、たぶん13歳です。つまり成人前。だから結婚式上げても肉体的に無理で」

「そうか。幼いとは思っていたが成人年齢には達していたと思っていた。迂闊だったな。だからこんなに可愛いのだな」

「コチラの成人は何歳なんでしょう?」

「14歳だ」

「ぶっ!?」



やっべぇ、ギリギリセーフだったじゃん?!

だとしても14歳で成人とか、絶対に早過ぎでしょ!?

中世な世界では当たり前でもオレは絶対無理だから!



「ならば本当に儀礼的に過ごそう。肉体的関係が無くとも結婚式を行った男女が一つ部屋に朝まで過ごせば、それで初夜は成立する」

「ほ、本当ですか?!」

「ああ、愛する君に無理はさせられないからね。本来、未成年なら婚約を結ぶのだが、すでに我らは夫婦になってしまった。いまさらこの事実は変えられない。だから一年は肉体的関係が無くとも、今後も寝食は共にしなければならない。構わないかな?」

「は、はい。分かりました。それなら……」


やったあ!

ついに、ついに、初夜を乗り切った。

よく頑張ったな、オレ。

誰か褒めて欲しい!


カプッ

「!?」

「だけど私がかなり我慢してるのは、ちゃんと理解してほしい。一年は長いから」


ぐわぁ!?

王子がオレを背中抱きして、右耳の裏側から甘噛みされた?!

ゾワワワーッて、した、ゾワワワーッて!


いや分かるよ、分かる!

オレだって結婚式上げての初夜、スーパー美少女を前に上げ膳据え膳されたら、我慢出来るか分からんもん。

男ってそーゆーもんだからね。

いくら相手が成人前でも共にベッドに入ってたら躊躇なんかしないでしょ。

オレだったら後ろ指刺されてもヤることヤってからゴメンナサイするから。

(いや、駄目でしょ)


って、やべぇ。

もしかして王子、爆発寸前!?

と、思いつつ王子の股間に目を移すオレ。

▪▪▪▪▪▪▪▪

ぎゃあああ、パンパンじゃね!?

パンパンでしょ、パンパン。

パンパンに腫れてるから。

股間がパンパンに腫れてるから。

我慢も限界むかえるの直ぐでしょ?!

ヤバい、王子の目が据わってる。

シャレんなんねぇ。

何か話題を反らさないと。

何でもいい、早く話しかけるんだオレ。


さもないと取り返しがつかなくなる!!

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