第24話 ドブ人間はお仕舞い

話しは少し遡る。

数時間前

◆タコマリウス王城

地下

ケイ(敬)視点



「うわっ、くっさ!?何だ、ここ??」



飛び散るを調味料にキャベツの千切りを歌いながらしてる筋肉マッチョ変態コック集団。

奴らの真実を聞いて吐き気が止まらず、口を押さえながら、ひたすらその場から逃げ走ったオレ。

辿り着いた先は、薄暗い異臭がするレンガ作りの坑道?!

何なんだ、ここは?

オレはいつの間に異世界地獄沼にハマッタんだ!?

訳分かんネー!!



「うっぷ!?」

オロオロオロッ(虹)



やべぇっ、変態筋肉コック共の入り野菜コースを喰わされてた事が知れて、只でさえ吐き気が止まらないのに駄目押しでのこの悪臭。

うおおーい、完全に罰ゲームじゃんかぁ?!

元に戻せよ、狭間の女神ぃ!




「おえぇっ!もう駄目だ。胃袋に何にも無い。目が回るっ、ふらふらだ、あ!?」


ドボンッ

「あ、がっ!?川?に落ちた!ガボッガボ」


ゴウッ

うっぷっ、汚い泥水が纏わり付いて、上手く泳げない?!

だ、誰かっ



ゴゥ━━━━━━━━━━━━ッ








◆◇◇◇




チュン、チュン、チュン



「はっ!?」



目を開けると真っ青な青空?

ゆっくり流れ往くのは真っ白な雲か。

少し目を横にやれば、木々が繁る若葉が眩しい。


オレ、生きてる???

はあ、良かったぁ!

あんなドブ水で溺れたら死んでも死に切れないよ。

助かったぁ。




「で?ココは何処??」



ザーザーザーザーザーザーッ


見ると、直ぐ側にオレが流されてきたと思われる地下から排出される下水口?

どうやらココからオレは出てきたみたいだ。


それでココは城を含む大きな町?都市かな?

じゃあ、オレはあの地下から流されてきたって事なのか?



「ふう、よく生きてたもんだ。魔王軍と戦う以前に巫女がドブで溺死なんて恥ずかし過ぎるだろ」



ぐぅうーっ


「うう、めちゃくちゃ腹がへった。今にも腹と背中がくっつきそうだ」



よく見たら巫女服が灰色で、時代劇の浪人が着てる服みたいになってる。

まあ、逆に目立たなくていいか。

それより



「鼻が馬鹿んなってて臭いが分からん。オレってどうなってんだ?」



手も顔も泥まみれ。

だけど綺麗な水や泉は近くになさそう。



「とにかく、このままじゃの垂れ死にだ。先ずは町で何か喰わないと」



すっかり乾いた泥水は、そのまま皮膚や衣服に張り付いたまま。

だけど幸い気温は低くなく身体も五体満足。

これなら歩いて街中に出れるか。



ぐぅうー

「はあ、腹へったよう」




◆◇◇◇




「でぇええっ!近よるんじゃねぇ!?店が臭くなっちまうじゃねぇか!!」



それで川から上がって歩き出したら、その先に出店の集まる路地を見つける。

煙が上がり明らかに旨い物の気配!

おお!って、引き寄せられるように近寄ったら、最初の店舗のオヤジがオレに叫び出した次第。


何だよ、失礼なオヤジだな!

人を汚物みたいに臭がりやがって。

一応オレ、この国に救世主として呼ばれたんだが?

って、もう身体が腹が減って限界だぁ。

もう言い返すどころか一歩も歩けない。

ふああぁっ。


ドサッ


「お、おい!?何だよおい!こんなところで行き倒れかよ。勘弁してくれ!」



くそっ、好きで行き倒れんじゃねーよ。

だけど身体が動かないんだっ。

ああっ意識が朦朧としてきた……。

もう、駄目だぁ。

………。








◆◇◇◇




ザバンッ

ザザーッ



「ふげっ!?冷た!!」


「気がついた?あなた、女の子だったのね。あまりに汚いから全然分からなかったわ」

「おおっ!???」



て、天使っ?

目の前に天使がいる。

これは夢か?!



「て、天使?」

「テンシ?変な事言う子ね」



奇跡か?

赤茶の髪に淡い茶目で顔の輪郭は卵型。

目元にそばかすがあるも意外と整った顔立ち。

ウサギ獣人でなくキンニクメリーでもない、人間の美少女が目の前にいる!

異世界キタ━━━━━━━━━━━ッ!



「お、お嬢さん、オレにお名前を!」

「お嬢さんはアナタでしょ?それに第一声に名前聞くなんてアナタ、タコマリウス王国人じゃないわね?」



あ、そうだった。

魔王のせいで、他人の名前を聞くのはタブーなんだった。

特に勇者国のタコマリウスでは!



「ご、ごめんなさい。お嬢さんがあんまり美人だったから、つい」

「美人って、はあ、それって嫌み?」

「はいっ?」

「まあいいわ。これからは私はお姉さんと呼びなさい。どう見てもアナタの方が年下でしょ」




お姉さん、か。

オレは今は年若い女だったんだ。

くそぅ、口説くチャンスなのに何の因果でこんなっ。


ぐぅうーっ

「うっ!?」

「まあ、やっぱりお腹空いてたのね」

「………は、はい」



くうぅ、めっちゃ恥ずかしいっ。

けど、どうにもならないくらい腹が減ってる。



「って、オレ?」

「だけど少しだけ辛抱して。今アナタを洗ってるから」ザバンッ

「う?!」

「本当に酷い汚れ!申し訳ないけど、服は処分させてもらったわ。どうにもならないくらい臭かったから、って、アナタ、黒髪だったの?濃い茶色かと思ってたけどっ!?」



あうっ

オレは今大きめの桶の中。

井戸の側で直接に水をかけられてる状態だった。

気づかなかったけど、そんなに汚れていたのか。露店のオヤジが叫ぶ訳だ。



ゴシッゴシッゴシッ

「ふう、色々聞きたいけど、今は洗わないとね。チビ達にも会わせらんないし」

「ふぐっ、チビ達?」

「後で紹介するわよ。まずは人間になって貰います。ドブ人間はお仕舞いね」

「はい………」



とにかく彼女の指示にしたがおう。

オレは彼女に助けられたのだから。


ぐぅうー


腹減ったなぁ。

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