第2話 猫に誘拐されました②

 しばらくバスに身を揺られていると、森を抜けて町の門をくぐり抜けた、その奥にはヨーロッパ風の建物がずらりと並んでいる

 白く綺麗な壁と窓があり、その前に花壇なんかが置かれていて、日本とは全く違う雰囲気だった

 通行人は普通に人が歩いてる感じだ、だが顔はアジア系では無い、髭ズラの良く似合う男性たちとしっかりした顔立ちの女性たちばかりで服装は白いシャツと短パンとかそんな、ラフな服装をしている

 異世界ならもっと猫耳生えた女の子とか、ドワーフとかそんなんを期待していたが、今の所は普通の人間しかいないな…

 俺はそう考えながらバスの外をボーッと眺めてると肩に何かが乗っかる感覚がした


「ほら、もうすぐで降りるぞ」


 ルナはそういうと俺の肩のうえに登ってきた


「……それされると爪がくい込んで痛いんだけど、降りてくんね?」


「やだ、歩くの面倒臭い」


 どう考えたって俺の方が誘拐されてめんどくさいんだが

 そんなやり取りをしていると「次はルミナリア国中央、ルミナリア国中央」とバスのアナウンスがなった


「そういえばお前の国にバスなんて通ってるのか?どう考えても場違いな気がするんだが?」


 俺がそう言うとルナが


「このバスはお前が知ってるようなバスじゃないぞ、魔素を原動力として動く乗り物だ」


 魔素ってなんだ

 もしかしたら未知のエネルギーなのか?意外と文明は進んでいるのかもしれない


「着いたな、ここがお前を誘拐しろと命じた国だ」


 すっかり誘拐したことを隠す気もないルナは肩に乗っかったままそんなことを言ってきた

 落としてやろうかと考えているとバスが到着した


「おぉ!すげぇ!!」


 バスから降りるとそこはかなり人混みは多く、石が敷きつめられた広場の真ん中にはクソでかい噴水、そしてさらに奥にクソでかい城があった

 青い尖った屋根と白い壁がそびえ立つヨーロッパ風のお城でいかにも貴族とか住んでそうな、そんな幻想的なお城だった


「おい、何ぼっとしてんだ、早く行くぞ」


 俺が白を見て呆然と立ち尽くしていると、ルナは俺に声をかけてきた


「んでどこに行けばいいんだ?」


 そういうとルナはある所に手を指した、そこは先程俺が見てた、でかい城


「えっまさか城に入るとか言わないよな?」


「自分が指した先に城以外何があるってんだ」


 そう言いながらルナは城に向かって歩き始め……


「おい待て待て、俺みたいな平凡高校生が立ち入っていいもんじゃない気がするんだが、本当に入るのか??」


 こんなでかい城に入るの経験もなければ現実でも見た事がない

 いやここは現実か……

 そんなことを脳にめぐらせているとルナが言う


「そもそもここに連れ出したのはあの城にいる人達だ、首が飛ぶことは無いし自分はお前をこの城に案内しろと言われている、だから安心しろ」


「そう言われても安心できるかって言われたら安心出来ねぇよ、だいたいお前みたいに無差別に誘拐してくるようなやつに対して安心できると思うか?」


 迫力満点でいかにも俺みたいなやつが近づいては行けないような雰囲気を醸し出す城、この流れは多分お偉いさんと話す流れになる

 ただの作法もなんもわからん高校生が入るなんて前代未聞だ、気も引ける


「しかし来いと言われている以上は行くしかないだろ、大丈夫だ、死にはしない」


「怖ぇよ!!死にはしないってなんだ!」



 石でできた頑丈そうな城壁にバカでかい、木でできた城の門があるのでそこに近づいていくと2人の門番がいることに気づいた

 これ話しかけていいんだよな?

 2人とも無骨な銀色の鎧を身につけて、顔は全体を覆う兜のため全く見えない

 かなり怖いが、勇気を振り絞って聞いてみる


「すみません、ここに呼ばれてきたものですけど」


 俺がそう話しかけると片方の門番が鎧をカチャつかせながら、怪しい人を見るかのような様子で俺を覗き込んだ


「すみませんが、あなたのことは聞いてないです、見たことも無い服装ですが、どちら様ですか?」


 あれ?俺が呼ばれたんだから門番は知ってるんじゃないのか?

 そう思っていると代わりにルナが言った


「こいつが試験的に異世界から召喚した1体目の実験体だ、黒髪黒目に、変な服装をしてるだろ?」


 変な服装って、さっきから街の人達が見てくるなと思っていたが俺はただ服装で目立っていたのか


「なるほど、では確認を取りますのでしばらくお待ちください」


 そういうと門番は門の隣にある扉に鍵を差し込み、その中に入って言った

 1体目って言ったか?もしかして他の人も誘拐する気なのか?

 そう思っていたら突如「ゴゴゴゴ...」という轟音とともに重い門が開かれ、門番が「こちらにどうぞ」と案内してくれた


「おおすげぇ、どうやってこれ開けてんの?人の力じゃ無理じゃね?」


 俺がルナに問いかけると


「人がこんなもの開けれるわけが無いだろ、魔法で開けてるんだ」


 とルナが不思議そうにこっちを...

 魔法!?


「魔法か?今魔法って言ったか!?」

「うぉ、いきなりなんだお前、魔法がどうかしたのか!?」


 おいおい嘘だろこの世界魔法あんのか?マジでファンタジー世界じゃねぇか!!


「まじかよこの世界魔法あんのかよ!それってどうやって使うんだ?」


 そういう俺にルナは


「魔法を使うには魔道具やスキルポイント、難しい魔法なら素質や制御するための杖とそれ相応のレベルが必要だな」


 スキルポイント!?レベル!?まるでRPGじゃないか!


 てかこの世界魔法使えんのか!そういえばバスも魔素で動いてるとか言ってたな!


「とりあえず進むぞ」


 未だ興奮する俺に対して若干引き気味なルナが俺にそんなことを言ってきた

 俺は進みながらも、暫く頭の中は魔法のことでいっぱいだった

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