第20話 努力の結晶
俺は何とか森の中に駆け込むと、ヘアリーピッグはこちらを一瞥して逃げるように去っていった
どうやらヘアリーピッグは森の中に入ることが出来ないらしい
「はぁ、はぁ、今回も、助かったのか?」
俺は久しぶりに全速力で走ったため、息切れがすごい
「そうね、なんとか巻けたみたいね」
なんでこんなに周りのモンスターが強いんだ?こんなの初心者じゃ絶対レベル上げ無理だろ!
「ただ何とか経験値は得られたわね、ヘアリーピッグはここでは最弱の部類だけど経験値と換金で得られるお金はおいしいわ」
ここでは最弱って……これが最弱なのか?
「おかしいだろこれが最弱だって、他のみんなはどうやってレベル上げてんだよ」
俺はまだ息切れしているのに、リリスは平気顔で答える
「他の人は、この国に行くレベルになるとここの近場の洞窟でグレートスケルトンやジャイアントポイズンバッドを狩るわね」
この国に行くレベルになるとってどういうことだ?ここは冒険者のスタート地点じゃないのか?
「なぁ、聞きたいんだけどさ、ここの推奨レベルってどんな感じなんだ?」
するとリリスは
「たしかルミナリア国は推奨レベル四十、ベテラン冒険者が集う場所ね」
そんな、耳を疑うような衝撃的事実を淡々と行ってきた
そりゃ通りで!通りで戦うモンスター全員強いと思ったわ!だってそうじゃんよくよく考えてみたら、魔王軍が進軍してくるくらいだぞ、そりゃここの推奨レベル高いし、魔王軍進軍できるほど近いなら、敵も強いわ!
「まさか和也さんがまだ十三レベルだったなんて……バーストバナナにはちみつをかけると爆発しないって言われた時と同じくらい衝撃だったわ」
リリスが意味わかんないことを言っているが、そうと決まれば魔王軍から遠い国に行ってレベルを積んでいかなければ、そして右も左も分からない俺をここに連れてきやがったルナに一発蹴りを入れなければ
「まぁ……ただ効率がいいのは確かだわ、この戦闘をする前はまだ十レベルだったのに、もう十三レベルにもなったなんて、レベル差があると凄い成長スピードね」
確かに安定すれば効率はいいだろう、しかしレベル上げする度に死にかけるなら雑魚狩りして少しずつ溜めて言った方が絶対いい
「にしてもよく今まで生きてこれましたね……」
「運が極端に良かったんだろう、だけどこのまま行けば確実に死ぬから、ここに居続けるのは得策じゃないと思うんだ」
よく良く考えれば凄い運だ、この運がなければ死んでいただろう
「これが主人公補正って奴か……」
「主人公ならばゴブリンに殺されかけたりしないわよ」
……調子乗ってすみません
「和也さん!ついに完成しましたよ!」
翌日、いつもの宿で惰眠を貪っていると、クレアが鼻息荒く興奮した様子で話しかけて来た
「ついにできたか!どれ見せてくれ」
「はい!」
そう言うとクレアは単発のライフルを取り出す
「言われた通りのものは作れたと思います、ボルトを引き、弾をねじ込んで使う形式です!」
「おお!思ってたより再現度が高いな」
イメージ図通りに作られたそれは、バレルが少し太いと感じたが、ボルトアクション式の一発装填型で外見は完璧だった
「すごいな、ここまで再現出来るとは……!早速使ってみようぜ!」
「はい!」
そうして俺らは昨日の草原に来ていた
前の俺たちはレベルが足りなかったが、銃さえあればレベル差なんて怖くない!
「早速試してくれ」
俺がそう言うとクレアは待ってくださいと言ってガスマスクを渡してきた
「なんでこれをつけるんだ?」
「まぁ見ていてください!」
そう言うとクレアは銃を目の前のヘアリーピッグではなく、空に向かって照準を合わす
何してんだろと見ているとクレアは、みんながガスマスクを付けたことを確認すると、空に向かって銃を撃った
爆音とともに弾は上に打ち上げられ、ヘアリーピッグはその音に釣られてこちらに……!
「バカ!なんでアイツらに向けて撃たないんだよ!!逃げるぞ!」
そう言うが、クレアとルナは動く様子がない
何してんだと慌てていると突如上から爆音が鳴り響く
それは銃声ではなく、歯磨きの際に聞こえる爆音に似ている
なんだと上を見上げると……
「………???」
毒だろうか、緑色のスモークが空から広範囲に降ってくる、それが地面に届くとヘアリーピッグは瞬く間に泡を吹き、一瞬にして倒れる
その毒は広範囲に広がり、アリのような生き物から象のような巨大な生き物まで全てが泡を吹いて倒れた
「これヤバイだろ!どうすんだこれ!なんでこんな無差別に殺すようなやべぇ兵器ができてんだよ!」
思ってたんとちゃう!ほんとに思ってたんとちゃう!
これじゃあ武器じゃなくてテロ兵器だ!
「凄いですよ和也さん!これを使ったら一回の射撃でレベルが五も上がりましたよ!!」
クレアがそう興奮して言ってくる
「言ってる場合か!どう考えても違うだろ!!!」
なんでこのマッドサイエンティストは無差別に殺しまくることに抵抗が無いんだ、人間も殺っちまうのはやばいだろ!あと助手として働いていたルナも何やってんだ!
そう思いながらルナを見ると
「どうだ和也、自分達の努力の結晶だ、気に入ってくれたか?」
自信満々でルナが俺に聞いてくるが、周りをよく見ると通りかかった人も気絶して……
「何してんだお前らァァァァ!!!」
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