第21話 努力の結晶②

「だ、大丈夫ですか!?これを今すぐ飲んでください!」


 俺達はいま、近場の草原で毒を広範囲に降らしたあと、その影響を受けて泡を吹いている人にクレアが声をかけている

 クレアが持っていた薬を飲ませると、即効性があったのか、徐々に顔色を良くしていき……


「ありがとうございます、私の名前はシルフィーユと申します、あなたは命の恩人です!」


「いえいえ、命に別状がなくて良かったです」


 なんという酷いマッチポンプだ


「お礼と言ってはなんですが、良かったらこれ持っていってください」


 そう言うとシルフィーユは懐から財布を取りだし……


「いえいえ!そんなお礼なんて大丈夫ですので!お気になさらず」


 さすがにクレアは、ここでお礼を受け取るほど顔の皮は厚くないようだ


「いやぁ……にしても爆音が鳴り響いたかと思えば、いきなり空から毒が降ってくるなんて思いもよりませんでした、その時偶然にも、薬とガスマスクを着けていたあなたたちに会って助かりました」


 そう言ってシルフィーユさんは、ニコニコとした表情でこちらを見つめてくる


「にしても、よくガスマスクと薬を持っていましたね、偶然ですかね?」


 シルフィーユは俺らに疑問を聞いてじっと見つめてくる

 やばいこれ、さすがに気づかれたか??

 するとクレアも脂汗を流しながら


「いやーほんと、私達も偶然アカマルダケを採取して帰ろうとしていたところなのですよ!では私達はこれで!」


 そう言うとクレアはそそくさと逃げるように国の方に去っていった


「あっおい待て!すみません、では自分達もこれで!では!」


 そう言うと俺達もクレアの方に逃げていった



「よし、まずはこんな設計をした研究員さんに話を聞こうか」


 俺達は、研究室の隣にある休憩所みたいな所にきて、クレアを正座させ、隣にルナも座らせた

 するとクレアは焦った様子で答える


「はい、私は遠距離からモンスターを倒せるという話を聞き、和也さんの図も良かったのですが、どうせなら高く飛ばして毒を広範囲を巻き込めば効率的にレベル上げが出来ると思ったのです!」


 そんなことを早口でまくしたてるが


「人まで巻き込んでどうするんだよ!俺達危うく殺人鬼になるところじゃねぇか、なんだあのテロ兵器は!!」


「そこがおかしいのです!弾薬に使った毒は人には無害に作られた毒なのです!人に効くなんてありえないことで」


「人ぶっ倒れてんじゃねぇか!」


 こいつの作った毒は人に無害だと言っているが、じゃあなんでガスマスク着けさせたとか薬もってるとか色々気になるところではある


「いえ!本当に効かないのです!信じてください!きっとあれですよ、あの人は実は人ではなくモンスターが擬態した何かで……!」


「今とんでもなく失礼な事言ってるの自覚してるか?」


「すみません……」


 クレアが肩を落とし、顔を地面に伏せて反省している


「……次はもっと広範囲かつ人には無害な毒を」


「そっちじゃねぇ普通の武器作れって言ってんだ」


 この毒狂いのマッドサイエンティストはどうにかならんのか……


「だいたいルナもなんで止めなかったんだ?賢いお前なら分かってただろ」


「いやまぁ、自分も止めたは止めたんだ、だがこいつは意外と頑固なところがあるようで、『任せてください!この弾薬に毒を混ぜたらきっと強力な兵器になり、和也さんも褒めてくれるはずです!』とか言って聞かないんだ、それで、確かにあの毒は人間には無害だったから大丈夫かと思ってしまったんだ」


 ……まぁ、死者は出てないんだし、このくらいにしといてやるか……

 そう思い未だに地面に顔を伏せているクレアに許しを与え、立たせてやる


「しかし、撃発機構や火薬の代用として爆発するポーションが使えるのはでかいな、普通の弾薬を使えばこいつも使えるだろう……次は頼むぞ?」


「はい……」


 俺はクレアに念を押したあと俺は再度、二人をあとにして暇を潰すことにした


 俺らは翌日、リリスに誘われて昼から居酒屋にいた


「ぷはーっ!最近我慢していたけど、やっぱりアルコールはやめられないわね!」


 昼間っから飲んだくれているコイツはもうすっかり出来上がっているようだ


「あんたも飲みなさいよ、このアルコールの匂い、これを吸うだけでもう頭が気持ちよくなってきて全てがどうでも良くなる感覚、きっとハマるわよ!」


 ここは異世界の国、国が違えば法律も違う、なんと成人するのは十四歳以上で結婚も酒も飲めるらしい、やはりここは異世界のお決まりなのか

 ただやはり異世界で合法とはいえ、酒を飲むのはやはり抵抗が


「ほらお酒は私が奢るわ、まさか年上からもらったお酒を断るなんてしないわよね?」


 コイツ酔うといちばんめんどくさいタイプじゃねぇか


「やめてくれよ、俺の国では二十歳以上じゃないと呑めないお決まりがあるんだ」


「そんな国聞いたことないんだけど、一体どこにいたの?」


 リリスは首を傾げて俺に詰め寄ってくる、かなり呑んでるのか、マジで酒臭い


「まぁいいじゃない!今はもうルミナリア国の住民でしょう?呑んだってなんの問題もないんだからさ!ほら!」


「あーもう!わかったよ一杯だけな!今日だけ一杯呑むから俺の服引っ張んのやめろ!!」


 俺はかなりの罪悪感に苛まれながらも、シュワシュワした黄色の飲み物を飲む

 まっずい、なにこれ大人たちはこんなもん好きで呑んでんの?


「おーいい呑みっぷりだね!もう一杯欲しかったら私に言ってちょうだいな、今日は特別に奢ってあげるわ!」


 前のスライムリレーで懐が太くなったリリスが上機嫌でそんなことを言ってくるが、もう飲みたくない


「それで、どんな味だった?」


「シンプル不味い」


 俺は即答するとリリスは、まだまだあまちゃんねと言ってくる


 そんな時だった

 バンっと居酒屋の扉が開かれ、そいつらは俺ら目掛けて


「おい和也、やっと完成したぞ」


 そう言って居酒屋に入って来たのはルナとクレアだった

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