第14話 無茶なクエストを受けてしまいました

 黄色草黄色草おうしょくそう

 それは山の奥にある洞窟から取れる希少植物

 その山は隣国にあるためかなり遠い

 それに加え


「そこはね!私のおばあちゃんが住んでるの!」


 リリスがそう興奮して言う

 その洞窟の別名が「悪魔の巣窟」

 もうどう考えてもやばい匂いしかしないじゃん、絶対無理じゃん

 この説明を先に聞いておけばこんなクエスト受けなかったのだが、金に目がくらんでしまった……

 それに


「なんでこの世界はクエストをキャンセル出来ないんだよ!」


「仕方ないだろ、受付の人にクエストを受注したその瞬間に依頼主に連絡が行くが、そしてキャンセル用の魔法伝達紙は無いからな、キャンセルしたけりゃ直接依頼主に会うしかない」


 そんな便利だが不便な方式を採用しているギルドに少しだけ怒りの感情が湧くが、元々なんの説明もなしに受注した俺が普通に悪い


 そして困ったことにもう1人、テンションの高いやつがいる


「ついに対悪魔用の毒ポーションが使う時が来ましたね!探知機と毒で私の活躍は約束されたようなもんです!」


 狂った科学者と悪魔がいるため、キャンセルしに行きづらい


「なぁ、やっぱり他のクエストにしねぇか?依頼主さんには申し訳ないが、もっと楽なヤツを」


「「いやです」」


 お前ら2人してハモリやがって


「しかし、その目的地ってのは隣国なんだろ?かなり遠いしまだ俺ら駆け出しだぜ?」


 そう言うとクレアが


「任せてください!私が行きつけの転送屋があるんですよ、そこからテレポートしてもらえば隣国に行けます」


 くそ、ことごとく退路を塞いできやがる


「ただそこは山の奥だろ?俺ら経験も無いしグッズも無いじゃないか」


「大丈夫よ、その隣国に行けばグッズなんか安価でいっぱいあるわ」


「……なぁルナ」


「お前が悪い、責任とってこい」


 泣きそう



「アスカラまでお願いします」


「三人と一匹で七千ベルだね、まいどあり!」


 俺は転送屋のおっさんに銀貨を7つ手渡した

 そしてアスカラとは隣国の事だ

 クレア曰く、アスカラはここよりも小さい国で、雰囲気がいいらしい

 白色のローブを被った人が杖で地面を叩く

 すると俺らを囲うような広さの魔法陣が現れ始める

 それは次第に輝き始める


「おお!すげぇこれ、俺こういう魔法が使いたいんだが!」


「確かこいつはスキルポイント20食うぞ、魔法使いとして学んだ場合は変わるかもだが」


 コストたっか!俺じゃ絶対無理じゃん

 そんなやり取りをしているうちに、やがて周りが光に包まれる

 そしてしばらくすると光が収まった

 そこは木に囲まれた自然溢れる地だった

 木々が葉を巡らし、そこからこぼれる日光が心地よい


「おお、まるでログハウスみたいな建物がズラリと並んでるぞ」


 見ると光源も松明を使っていて確かに雰囲気が出まくっている

 中世ヨーロッパ風の街もいいが、個人的にはこっちの方が好きだな

 周りを見ると人通りは少なく、露店の酒屋で少し人が集まっているくらい


「しかし、悪魔の巣窟だろ?俺ら生きて帰れるのかよ」


「大丈夫ですよ和也かずやさん、私が着いてますから」


 お前、毒がなくなったらただの一般人だろ


「大丈夫よ!私が着いてるんだもの!同胞に私たち仲間ですよアピールすればきっと見逃してくれるわ!」


 そうか、サキュバスのリリスに進行してもらえれば安心じゃん


「確かにそうかもしれないが、見てくれが人間と同じなんだが、しっぽや羽はどうしたんだ?」


「あ」


「えっ?なんだ?服の下に隠してあるとかじゃないのか?」


 何故かリリスがチャームについて言及された時と同じくらい日和っている


「その、人間界で生きていくことを決めたから、洞窟を出てったあと羽としっぽを消す魔法を掛けていて……」


「いいのかそれ、サキュバスの誇りだろ、そんなもん消したらサキュバスとして認識されないだろ」


 こいつ、便利そうだと思っていたが毎回痒いところに手が届かないな


「つまり顔パスじゃ無理なのか、やっぱ今のままだと無理そうだぞ、レベル上げてから行くか?」


「クエストには時間制限があるんだ、一般的には1週間ほどだ、イタズラ防止として、もしそれを破ると罰金が課せられる、だからレベル上げも程々じゃなきゃダメだな」


 んじゃなるべく早くやらないとか

 俺は砂利や小石が敷き詰められた地面を歩きながら質問する


「この辺はどんなモンスターがいるんだ?」


「多分動物関連のモンスターじゃないか?リトルウルフとか」


 どっかで聞いたことあるなそれ、なんだっけ


「リトルウルフって寒いところにいるんじゃないんですか?私あんまり知らないんですけど」


「それは俺も思った」


 たしか、狼って寒いところに生息してるんじゃないのか?


「最近技術の発展で空気の魔素濃度が高くなっているからか、温暖化が進んでいるんだ、それに適応したリトルウルフがここに住み着いたんだろ」


 どの世界にも温暖化ってのはあるんだな

 にしてもこの世界「魔素」がよく出てくるがどんなやつなんだろうか


「たしかかなり可愛いらしいんですよね、本で見た事はあるのですが、本物は見た事無いので私も会ってみたいですね」


「おいやめろよ、実験台にするのは」


「なッ!私をなんだと思ってるんですか!?」


 あれ?実験台にするんじゃなかったのか


「てっきり『対動物用の毒が作りたかったのですよ!』とか言い出して実験体にするのかなと思ってた」


「私そんな風に見られてたんですか!?そりゃまぁ実験や毒は私の命とは変え難い物ですが、さすがにそこまで無差別に実験体にはしませんよ!」


 こいつ、最初にルナに対して言った言葉もう忘れてるのか?


「今から何するの?」


「まぁとりあえずレベリングだな、時間制限があるから、なるべく早くしよう」


 いまの俺らが洞窟になんか突っ込んだら確実に死ぬだろう、だから山奥の森の中に行くことにした

 スライムに会いませんように……

 

 するとふと誰かが焚き火をしてるのか、森の奥から煙が立っていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る