第3話 猫に誘拐されました③

「おお、よく来てくれたな若い者よ、その喋る猫から聞いておると思うが、この国はとにかく魔王軍が来てヤバいんじゃ、どうか救ってはくれんか」


「普通に嫌なんすけど」


 ここは広い部屋の中、テーブルの上に本と紙が山盛りに積まれていて、高そうな赤いクッション付きの椅子に座った白髭の長いおっさんが、俺にそんなことを言ってきた

 多分この人が国王だろう


「俺そもそも勝手に連れて来られただけで、どこかもわからん国助ける人なんて居ないですよ」


 当たり前だ、どこかも分からん国に誘拐されて、その上助けてくれだなんて訳の分からないこと、聞くわけもない

 俺が言うと目の前のおっさんは


「そう言わず頼むよ、お前さんは見た感じ市民だろ、ほれ、宿は用意するし金も支援するからさ」


「俺なんの能力もないただの高校生なんだが?」


 なんでこいつはただの高校生に対して期待値が高いんだよ

 しかも随分あっさりしてるな、どうせあれだろ?最低限の金だけ渡されて魔王を倒してこいとかいうんだろ?ゲームみたいな世界に行きたいとは思ったことはあるがそんなところまで再現しないで頂きたい

 そんな事を考えていると考えていると


「うちはもう人手不足が深刻でな〜、異世界から来たからには私たちも知らぬ凄い能力とかあるんじゃろ?ワシは人を見抜く目を持っているんだ」


 と節穴な目を持つ国王がそんなことを言ってきた

 本当にただの高校生なんですけど

 俺がどう説得しようか考えているとルナが突然口を挟んできた


「問題ない、自分が付いてるから大丈夫だろう」


「おい何勝手に承諾してんだ」


 ルナがいきなりしゃしゃり出やがった


「良いだろ別に、大丈夫だ自分が付いてるから安心しろ、死にやしないさ」


「その自信はどっから来てんの?」


 この国はこんなんばっかなのかと頭を悩ませていると国王はそれを聞き


「いやはや!それは助かった、最近は攻撃が激化していてな、ほんとに助かるよ」


 と、俺に何か言われる前に紙にいそいそと何かを描き始めた

 こいつ……!!

 てか何で国王は俺に対してそんな信頼を寄せてんだよ、どういうこった

 俺はそう言われてそそくさと部屋から出て行かされると、どうにかしてこの国からクーリングオフできないか必死に考えていた



「では失礼します」


 宿のメイドがそういうと鍵を閉めた

 ここは城近くの宿一室、白色の無骨な壁に白いベッドや簡素な椅子と机などが置いてありここが俺の部屋になるらしい


「はぁー、どうしてこうなったんだ」


 あの後、おそらく金が入った袋だけ渡してきて城を後にした訳だが

 あまりに急展開過ぎて目眩がしてきた

 俺そもそも部活帰りでバスで寝落ちしただけなのになんでいきなり異世界転移しなきゃなんねぇんだよ、聞いたこともねぇよバス乗ってたら異世界行っちゃったとか

 心の中で愚痴っていると早々にベッドのうえで大の字になっているルナが


「まあ許してくれよ、もう食用のヘアリーピッグやご近所で可愛がられているリトルウルフまで前線にいるんだ、そうこれは仕方ないんだ」


「他の国に助けを呼ぶとか色々あるだろ」


 その疑問にルナは答えた


「他の国も支援してくれる状況じゃなくてな、うちの国はベルが無いんだ、だから申請もできない」


 その原因多分あの無能な国王のせいだぞ

 そういえば、俺はさっきから気になっていたことを質問する


「なぁ、そういえばお前って何者なの?なんで猫が喋るんだ?」


 そういうとルナはこう言った


「自分はお前の使い魔だ、正確には猫ではなく精霊だな、自然を司る精霊だ」


「精霊って妖精みたいなもんか?」


 その質問にルナは


「妖精とはまた違うな、確かにアイツらは精霊のジャンルには入ると思うが、あいつらは人間に近い姿をしていて、イタズラ好きな性格だ、そして我ら精霊と妖精は仲が悪い」


 ふーん、あまり精霊や妖精の違いなんて知らなかった

 同じようなもんだと思っていたが、仲悪いんだな


「んじゃ、お前はなんで猫の姿なんだ?」


「こりゃ、別にほかの姿でも良かったんだが、猫だと人間に好かれるだろ?だからこの姿なんだ」


 なるほど、確かに人間に好かれる見た目の方が便利だな


「にしても精霊ってあれだろ?魔法使いとかに仕えるものなんじゃないのか?なんで俺なんかに仕えてんだよ」


 そう言うとルナは


「いきなり連れ去ってあとは放置なんてさすがに可哀想という判断で国王達が自分にお願いしてきたんだ」


「連れ去られている事が何より可哀想だとか思わないの?」


 俺のツッコミを無視してルナは欠伸をしだす

 コ...コイツ!マジでシバいてやろうか

 そう思っているとふとある重要なことを思い出した


「そうだ忘れてた、魔法だよ魔法!どうやって使うんだよ魔法」


 とルナに迫るが


「うぉ、いきなりなんだよ、多分魔法は今のお前にはまだ無理だろ、その様子だとお前、戦闘すらしたことないだろ、レベル1じゃ何も出来るわけないだろ」


 えぇー……


「レベルって戦闘以外で上げ方ないのか?」

「ない、危険を犯してレベル1で戦うしかないな」


 となると最初は剣とか弓でモンスターを倒して行かないといけないのか…

 そう考えていると


 カーン...カーン...と鐘の音が鳴り響いた

 えっなに?なんか祭りでも始まんのか?

 何だ何だと慌てる俺に


「来たな、おいお前、出番だぞ」


 と、ルナが真剣な顔をして言ってくる

「なに?なんか始まんのか?」


「魔王軍だ、奴らまた来やがった、行くぞ!」


何が何だか分からない俺にルナがそんなことを言った

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