第5話 猫に誘拐されました⑤

 俺は今、魔王軍にいる角の生えた人型の赤髪を怒らせてしまいました

 いかにもボスっぽい、つかボスだよなたぶん

 遠い為詳しくは見えないが、未だバチバチっと雷のオーラを纏っているあたり、コイツがライトニングを打ったらしい

 絶対強いだろコイツ!!

 やべぇこのままだとマジ殺される

 俺は慌てて木から降りて裏に隠れ、身を潜めることにした


「今の結構痛かったんだが、一体どんな魔法を使ったんだ!」


 そう角の生えた赤髪は苛立ちの感情を込めた声で言ってくる

 どうやら俺の投げたポーションが炸裂したらしい

 見つかったら絶対殺されるじゃねぇか!

 緊迫する空気の中、暫く俺は静かに隠れる位置を変えて、震えながら隠れることにした

 すると相手は痺れを切らしたのか


「ちっ、今日は引いてやるが次は覚悟しろよ!!!」


 そんな捨て台詞を吐いて魔王軍は撤退して言った

 助かったのか?

 やべえまだ心臓バクバクなんだけど

 そしてずっと木の影に潜んでいた俺に対して誰かが横から声をかける


「おい」


 ひぃ!

 俺は恐る恐る横を見ると


「奴らはもう引いて行ったぞ、もう大丈夫なはずだ」


 声の主はルナだった


「うあああああぁー!!!マジで怖かったんだけど!なんなのあれ!?マジなんなの!?俺下手したら雷に撃ち抜かれてたんですけど!」


「うわっ待てなんだ落ち着け、もう大丈夫だアイツらはいない」


 俺マジで助かったのか!?生きた心地がまるでしない


「つか、なんでお前来なかったんだよ!守ってやるとか言ってただろ!!」


「すまんな、少し冒険者たちの治療をしていてな」


主人ほっぽり出して他人の救助とか何してんだ!


「なんでもいきなり大爆発が怒ってな、それで怪我した人がいるから治療してたんだよ」


「ありがとうございます」


俺はルナに感謝して、ここを後にした



「あれは君がやったんだろう、ほかの者から聞いたぞ、お前さんは爆発魔法も使えるほど優秀なんじゃな!」


 国王は興奮した様子で言ってくる

 勘違いしているらしいがルナの反応を見る限り、褒められるのは悪くないので、手の内は明かさずにそのまま勘違いさせておくことにした

 ルナもその意図を汲み取ってくれたのか黙ってくれていた


「まさか初日からこんなに活躍してくれるとは、優秀な人を連れていくことが出来て良かったぞ」


「はぁ」


 べた褒めしてくれているが、実際には木に登って、攻撃の当たらないところからポーション投げただけなんですよ

 死にかけたけどな!

 そんな心の声は国王には伝わらなかったのか、明日はゆっくり休むといいと言って恐らくベルの入った小袋を渡してきて、去っていった


「にしても、お前の戦い方はかなり奇抜だったな、巻き込まれた人はいれど、よく魔王軍の進行を阻止してくれた、その調子で頑張ってくれ」


 ルナもそんなことを言ってきたが、俺もう戦いたくない……

 俺は城を出て、とりあえず宿に泊まりに行き、部屋に戻ってベッドに即ダイブした

 帰る途中、俺の事をみて街の人達がヒソヒソと話し合っていた気がしたが、もしかしたら俺の活躍が早速知れ渡り、有名人になったのかもしれない

 だが今日はもう疲れたので、夜飯食って寝よう

 俺はメイドが晩御飯を持ってきてくれるのを待つため、相変わらず狭い部屋のベットに即ダイブした

 ベッドにボフッ!っと入った瞬間ドッと疲れが押し寄せてきた、今日は色んなことがありすぎた

 この世界にいきなり連れてこられてどこかも知らん国がヤバいとか言われて、国襲われたから木に登って、バレずに爆発するポーション投げつける所が、バレてしまって魔法を打たれたりと...

 考えるとキリがないが、あの経験をしてから、なんか力が強くなった気がする

 強くなったというか、体力もついたような感じ

 やり遂げたことがやり遂げたことだからなのか、自信が湧いてくる

 するとドアがコンコンコンと3回ノックされ、扉が開いた


「晩御飯を持ってきました」


 宿のメイドさんだった


「今日はココナッツから取れた新鮮なクリーミーエビのフライとロックヤドカリの丸焼きです、ではごゆっくり」


 そんな意味のわからないメニュー名に俺が目を丸くしているとルナは「どうかしたのか?」と言わんばかりに見つめてくる


「なぁ、この世界はココナッツからエビが取れるのか?海から採れるもんじゃ無いのか?」


 そういうとルナは「はぁ?」と言い続ける


「何言ってんだ、エビは色んな木の実から取れる果実の副産物だ、ぷりぷりしていて美味しいんだぞ」


 ???

 ますます分からなくなったので、俺はもう考えるのをやめてさっさと飯食って寝ることにした

 明日は、何事もなく過ごせたらいいな、俺は切実な願いと共に意識が薄れ……


 ドォォォンッッッ!!!

 朝の5時くらいに、平穏を夢見る俺の耳に、無情にも外から盛大な爆発音が入り込んできた

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