第17話 折角なので、観光します②
「あああああああああ!!!ありえないです!過去のデータを参照し、計算した上で絶対に勝てると踏んだのにー!!!」
レースが終わるとクレアは悲壮感漂う叫びを上げていた
ゲートが開いた瞬間は確かに6番は好調な滑り出しだった
だが途中でコース内の小石が体にめり込んでコケた結果、二番が一位、一番が二位、六番が三位という結果になった
一人が絶望に打ちひしがれてるなか、ルナとリリスは二番に賭けていたので当たっていた
「お、やっぱり当たったな、換金してくるか」
「当たったわ!やっぱり私は見る目があるのね」
ルナとリリスがそんなことを言うが、やっぱり当たったってなんだ?
「なぁお前ら、結果わかってたのか?」
俺がそう言うと二人は口を揃えて
「「顔がイケメンだったから」」
変わんねぇだろ
「次は温泉にでも行きましょうか……」
賭けに大敗したスラカスが肩を落としてとぼとぼと歩く
あの後クレアに「和也さん、お金貸してくれませんか?次は倍にして返しますから!」とかパチカスな事を言ってきたが、もちろん貸すわけない
百万とかどうやって払ってんだと思っていたが、どうやらこの世界にも銀行っぽいところがあり、そこに預けていた金を突っ込んでいたらしい
今頃クレアが預けている口座から百万が差し引かれているだろう
可哀想だがどう考えても自業自得ではある
「温泉いいわね!ここの温泉はたしか傷が癒える効能があったはずよ、そしていい景色が見れると聞いた事があるわ、きっとあがったあとの牛乳は格別よ」
「ここ温泉あるのか!死にかけたぶん湯治するのも悪くないな」
この世界にも温泉があるのか!日本人としてはかなり嬉しい
というかかなり今更だが、この世界も日本語を使ってるけどなんでなんだろうか
「温泉か、それ自分も入れるのか?」
確かに、猫って温泉入れるのかな
「確かここはペットOKだった気がするわ」
「そりゃよかった」
猫入れるんだ、さすが異世界だな
てかこいつの性別ってなんなんだろ
「なぁルナ、お前性別ってなんなんだ?」
「精霊だから自分には性別なんてもんないぞ」
んじゃどっちも行けるってこと?最強じゃん
「着きました、ここです」
見ると木造で作られた小屋で、玄関前にでかく「ゆ」と書かれた布が垂らされている
こういう所もなんか日本臭いんだが、日本人の俺が誘拐されたのとなんか関係があるんだろうか
俺はそう考えながらスライド式の扉を開ける
ガラガラと開けると真ん中に受付、右に男湯で左に女湯があった
「お一人五百ベルです、3名とペットが一匹なので二千ベルですね」
俺は銀貨を二つ取り出して早速男湯に入る
中に入るといきなり温泉が現れた
「……服を置いとくロッカーとかないのか?入った瞬間でかい温泉があるだけなんだが」
「服はそこら辺に置いとけ、自分はもう先に入るぞ」
ルナは温泉の仕切りの端に手を指したあと、温泉の浅い所に身体をつけた
なんでここまで似ていて大事なところはこんなに大雑把なんだよ!濡れるだろ!
ここまできてやっぱり異世界ギャップを感じさせられた俺は、とりあえず服を脱ぎ、バスタオルで体を巻いてから温泉に浸かった
「あ〜癒されるわ〜、浸かるだけで何故か不思議と疲れが取れる……」
「露天は普通の風呂より気持ちいいよな、自分はあがった時は寒くて仕方ないんだが」
俺は上を見上げ、日がすっかり落ち、星満天の夜空を眺める
今頃、地球のみんなは何してるんだろうか……
俺がいなくなってみんな寂しがってくれているだろうか
「家族や友達は今頃どうしてるんだろうか……」
「お前の故郷の話か?」
ルナが俺のつぶやきに反応する
「そうだよ、お前がなんの前触れもなしにここに連れてきやがったせいで身内が心配してないか気になってな」
「確かにそりゃ悪かったな、一言いってから連れてってやるべきだったか」
「連れて行くことがまずダメだろ」
こいつやっぱバケモンだろ、この国は人を連れ込むことが普通なのか?
「まぁ悪いとは思ってるし反省もしてる、国の命令と言えど連れ出したのは自分だからな、その分責任はとるさ」
……まぁ来てしまったからには仕方ないか、その分存分に楽させてもらうか
「そういえばなんでルナは俺の精霊として仕えてくれるんだ?確か契約するんだろ?」
そう言うとルナはこう言った
「契約はもう済んだぞ、お前がここに来る代わりに仕えるという契約だ」
「それ不当契約って言うんだぞ、いきなりこんなところ連れていきやがって、おかげでいい迷惑だ」
俺がそう言うとルナは、普段はそんな顔見せないのに、少し悲しげな表情で
「……なぁ、やっぱ自分じゃ嫌か?ズボラで適当な性格だから嫌なのか??」
と心配そうにこちらを見上げながら言ってくる
こいつのこんな顔初めて見たな
「誰がお前に嫌なんか言った?心配しなくてもいいんだぞ、助けて貰ったりもしたしな」
まぁ
そう俺が安心させるように言うとルナは安心してくれたようで
「そうか……ありがとうな」
とうつ伏せのまま満足げに体を伸ばして気持ちよさそうに浸かった
はぁ、ずっとこのまま浸かってたいんだが、クエストの件があるからなぁ……また明日同じ
今思えばレベル上げで成功したことないな、他の人はどんなレベル上げをしているんだろうか
この街の人に聞いてみるのもいいな
「そろそろ自分は上がるが、和也はどうするんだ?」
「ああ、俺もそろそろ上がるよ、帰りに牛乳でも買ってそこら辺の宿に泊まるか」
俺はそう言うとタオルで体を拭き、服を着て扉を開ける、するとクレアとリリスはもう上がっていた
「待たせたな、帰りになんか買って宿に行こうぜ」
「いいですね!私はもうお金が無いのでクリムゾンベリーのジュース奢ってくれませんか?」
一文無しが、俺にジュースをねだって来る
「まぁ百ベルだし奢ってやるよ、リリスもなんかいるか?」
「えっ?ああ、じゃあ私も同じものお願いしていいかしら」
リリスが少し遅れて反応した
「何だ?何かあったのか?」
「いやね、あの人どっかで見たことあるな〜って」
俺がそう言うとリリスは街を歩いているある人物を指した
指された人物はどこかで見たような、赤髪で角の生えた女で……!
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