第22話 絶縁と脱退

何か危険な香りがする!

私はハッとしながら周りを見渡した。

だがそこには何も無かった。

私は「?」と思いながら周りを見渡してから溜息を吐く。


昨日の話だが私は彼から電話を貰った。

その内容は「大丈夫か」という内容。

私は彼に「うん」と言いながら事情を全て説明した。

すると彼は「そうだったんだな」と納得してくれたのだ。


それから私達は暫く電話対応で済ませる事にした。

私は考えながら表に出る。

近所のコンビニ。

成美さんが居る場所に向かう。

アイスでも買おうと思ったのだが。


「...貴方...」


目の前にとある女子が現れた。

女子の名前は...佐久間夕日だった。

私を見てから「こうして一対一で会うのは初めてですかね」と言ってくる。


ワンピースに鞄を持っており。

お出かけの服装だが。

というかそんな事はどうでも良いけどエレメンタル・ツリーのメンバーが何故ここに居るのだろうか。

そう思いながら佐久間夕日を見る。


「何の用事なの?」

「...簡単に言うと私、メンバーを抜けます」

「...メンバーっていうのはエレメンタル・ツリーのメンバーだよね。聞いたけど。...それで貴方はこの場所に来たの?」

「そうですね」


佐久間夕日はそう返事をしながら視線を逸らす。

私は「...佐久間陽菜とかは」と言う。

すると佐久間夕日は「...絶縁でした。...私は所詮は捨てられたんです」と肩をすくめてから苦笑した。

その言葉に私は「!」となる。

佐久間夕日は「その程度ですよ。...私は」と言う。


「...それでお願いがあります」

「...貴方が事務所を移転したい事は知っている」

「...はい」

「分かった。紀子さんに事情は話すから」

「...何でも下僕でも良いので雇ってほしいです。見返してやりたいです」

「分かった」


そして私は佐久間夕日を見る。

すると佐久間夕日は「...佐久間陽菜は...恐れています」と言葉を発した。

「...何故」と私は聞く。

佐久間夕日は「簡単です。持病を抱えています」と言葉を発した。

その言葉に「!?」となる私。


「初めて聞いたけど」

「...彼女の持病は発達障害です。...それで上手くいかないと破壊衝動、かんしゃくを起こす」

「...そうなんだね。でも何でそれを。言っても良いの」

「言ったでしょう。私は...エレメンタル・ツリーもそうですが全て捨てられました。だったらこの情報を暴露しても構わない」

「...そう」


私はその言葉に佐久間夕日に手を差し出す。

すると佐久間夕日はその手を握った。

そして笑みを浮かべる佐久間夕日。

それから「まだ好いているのですか。彼の事」と言ってくる。


「...うん。彼の事はずっと好きだよ」

「そうですか。ならば私は貴方が彼と結ばれる為に頑張ります」

「い、いや。そんな事はしなくても良いよ」

「いや。折角私は拾ってもらった。...私は応援します。貴方を」

「...」


彼女は真っ直ぐに私を見た。

そして笑顔になる。

私はその姿を見ながら「...貴方は何故、反逆しようと?」と聞いてみる。

すると「正義も悪も分からなくなったから、です」と答えた。


「...正義も悪も分からない?」

「そうです。...どっちでも良いんです。私。でもやり方が気に入らない。だから辞めたいって相談したらこの様ですもん」

「...そうだったんだね」


私はハッとしてから「そうだ」と言う。

それから結に電話する。

すぐに結は出た。


『幸奈さん』

「結。...佐久間夕日が居るの。この場所に。貴方に頼みたい事がある」

『はい。何でしょうか』

「...貴方は先輩として彼女を見てあげてくれない?」

『え?でも佐久間夕日ってメンバーですよね?その。有名アイドルですよね?』

「今は素人扱いだよ」


事情を説明する。

すると結は『分かりました。バッチこいです』と笑顔になる様な感じを見せる。

私は「お願い」と言いながら佐久間夕日を見る。

佐久間夕日は頭を下げた。


「...下僕として宜しくお願いします」

「下僕じゃ無いよ。...ようこそ」


そして私は休みの日だったけど佐久間夕日を事務所に案内した。

それから紀子さんと社長がビックリしていたが。

事情を説明して「成程」となっていた。



『それで?佐久間夕日がゆっちゃんに?』

「そう。接触して来た」

『ふーん...そうなんだ』

「...まだ完全には信頼出来無いけどね」

『そうだね。...でもこれから構築していけば良いんじゃないかな』

「様子見でね」


私は成美さんの勤めているコンビニの中からきいちゃんに事の成り行きを説明した。

するときいちゃんは私を心配してくれてそして佐久間夕日の事を真剣に考えてくれながら私にアドバイスをしてくれた。

私はその事に感謝しつつ話をしてみる。


「私、佐久間夕日は信頼出来無いけど。ここから先、信頼していけたらなって思う」

『そうだね。...私もそう思う。...でも無理はしないし判断を早めたりしない様にしないと...あくまでエレメンタル・ツリーのメンバーだったしね』

「...」


するときいちゃんは『それはそうと』と言い出す。

そして「電話デートしたら?」という感じでアドバイスをしてくる。

私は「?」となって「電話デートって?」と聞いてみる。

きいちゃんは『うん。彼と電話でデートするんだよ。例えば貴方のお風呂の様子を撮影するとか』と言ってく...は!?

真っ赤になる。


「き、きいちゃん!?」

『それぐらいしないと彼は他の女性に取られるんじゃない?』

「い、いやでも。早いよまだ」

『うーん。でも周りにさ。結も居る。友香も居る。だったらマズいんじゃ?』

「...」


私は考える。

確かにその通りかもしれない。

そもそも結もそうだが友香も彼が好きだ。

だったら危ないかもしれない。


「...考えておく」

『まあ私はサポートだけだから。成就するのは貴方達次第かな』

「...だよね。頑張る」


そうしていると成美さんがやって来た。

それから私の前に座る。

「幸奈さん」と言いながら、だ。

私は「うん?」と聞いてみる。


「彼が好きなんだよね?」

「...うん」

「...会えないなら家で会っちゃえば?」

「え?で、でも」

「うちは別に報道される様な場所じゃ無いし。密会だよ」


危ない事をみんな言う。

私は気持ちが揺らぐ。

そしてまた。

彼に会いたくなる。

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