第17話 生きる価値


俺自身が彼女達と関わる中で。

彼女達に「好き」と言われ始めた。

その言葉に俺は笑みを浮かべながら彼女達を応援する。

だが決してその想いに応える事は出来ない。

俺はそんな人間には値しないのもあるが。


もう誰かを失いたくない。


それもあるのだ。

だからこそ俺は...申し訳無いと思いながら。

その心には応えれないだろうな、と思っている。

俺はそんな事を考えながら写真立てを見る。

そこには幼い頃に失った母親の写真があるのだが。


「...」


いつからだろうか。

弁護士とかそういうのになりたいとか思い始めたのは。

母親が死んだ理由が知りたい為に。


そんな夢をいつしか抱いたのだ。

それを考えながら俺は涙を浮かべる。

そして拭った。


「...アイツの夢を応援してあげないとな」


そう言いながら俺は顔を上げた。

それから俺は拳を握ってから決意する。

アイツを...義妹を。

大切なアイドルにする。

そして...周りに応えれる様な人間になる。


「...よし」


それから俺はそのまま立ち上がってからそのまま胸に手を添える。

それから心音を聞いてからそのままドアを開ける。

コンビニでも行こうと思ったのだ。

そうして結に「コンビニ行ってくる」と表に出た。



この前からあまり行ってないコンビニ。

というか一応、その場所で彼女に出会ったのだけど。

そう。幸奈に、だ。

成美のお陰でまた会う事が出来たのだ。

思いながら俺はコンビニに自転車を転がし向かう。


「成美」

「お?ひっさびさだね。一郎ちゃん...どうしたの?顔が結構成長しているね」

「?...そんな事、分かるのか?」

「分かるに決まっているじゃん。一緒になってから結構時間が経つんだから」


そう成美は言いながら俺に笑みを浮かべる。

俺はその言葉に何だか恥ずかしく後頭部を掻いた。

それから俺は成美を見る。

成美はニコニコしながら俺を見ていた。


「でもどうしたの?成長した理由は?」

「...彼女達の影響だろうな」

「彼女達?」

「実はな。この前来た女子は...霧島幸奈という女子だった」

「ほうほう。きりしまゆきな...はぁ!!!!?」


唖然として持っていた荷物を落とした成美。

そして「サインは!!!!?」と大慌てで聞いてくる。

俺はその言葉に「待て待て!サインは貰った事は無いけど知り合いになったから!」と大慌てになる。

すると成美は「信じられん」と唖然としていた。


「成長したわね。我が息子よ」

「...お前は何処の母親だ」

「だってそうでしょう。誰とも関わり合いを持たないかと思っていたのに」

「失礼だな!?」

「だってそうでしょう...」

「そうだけどな!」


俺は愕然としながら首を振る。

それから彼女を見る。

「まあでも冗談は置いて」と笑顔になる成美。

それから成美は「サイン、今度貰って。飾るから」と言う。

俺はそんな成美に立て続けに相談した。


「成美」

「...うん?」

「アイドルにお前が好かれた、となったらどうする」

「...ま、ま、まさか」

「そのまさかだ。...俺は幸奈に好きって告白された」

「ホァーェ!!!!!」


仰け反る成美。

そして荷物を投げ飛ばした。

俺はその姿にビックリしながら見ているといきなり掴みかかってきた。

それからがっくんがっくんと前後左右に揺さぶられる。


「はらませたんか!お前は!!!!!」

「お前ふざけんな!!!!!そんな事する訳無いだろ!!!!!全国の男に殺されるぞ俺が!!!!!」

「ふざけんなよぉ!!!!!」


客がビックリしていた。

そして成美と俺は成美の親父に頭を思いきりぶっ叩かれる。

そして(# ゚Д゚)という感じで「仕事中。客が居るんだから」と言ってから成美を引き摺って行く。

俺はその姿に頭の痛みを感じながら苦笑する。


「...それにしても」


喜んでくれる人も居るんだな。

こんな事実に、だ。

俺はそう思いながら外を見る。

それから俺は買い物をする為に買い物かごを持った。



「それにしてもアンタがねぇ」

「アンタがねぇってな。...まあ確かに珍しいけどな」

「そりゃ日本どころか世界中でも有名なアイドルだよ。そんな彼女に好かれるとかありえない」


会計をしながらぶつくさ文句を垂れる成美。

俺はその姿に苦笑いを浮かべながら「落ち着け。成美」と苦笑する。

それからぶつくさを止めてから俺を見る。

「まあでも」と言いながら俺の頭を撫でる。


「...私、アンタには幸せになってほしいしね」

「子供か。んでもってお前は母親か」

「私は...まあそうだね。だけどこれでもマジに心配はしている」

「...ったく」

「...あれだけ悲惨な目に遭っているしね」

「その話はしないって約束だったぞ」

「...分かる。一郎。だけど...」


「大丈夫だ」と言いながら俺は成美を見る。

成美の手が止まっている。

そして成美は少しだけ深刻な顔をしていた。

俺はその顔に笑みを浮かべる。

それから商品の入っているビニール袋を貰う。


「だけどお前がそう心配してくれるの。すげぇ嬉しいよ」

「...一郎。...彼女達にアンタのその事は話しているの」

「...話をした所で何になる?俺は無意味だと思うし...これ以上、迷惑は掛けたくないな」

「だけど一緒に考えてくれるかもよ」

「...大丈夫だ。この記憶の共有は主に俺だけで十分だ」


そして心配げな顔をしている成美に水を手渡す。

彼女に元からあげるつもりだったから。

それから彼女を見る。

「有難うな」とニコッとして手を振ってから自転車を立たせる。

すると成美が駆け出して来る。


「何かあったら私に相談して」

「...成美」

「私は何時でもこの場所に居るから。アンタの味方だから」

「...分かった。有難うな。成美」


俺は胸をスッキリさせた様な感じで自転車のギアを漕ぐ。

それから手を振ってから成美に挨拶をした。

そして俺は駆け出す。


昔と違って...今の方が悩みは多い。

非情な事も多いかもだが。

だけど何だろうな。

この胸の違う感触は...?

まるで晴れやかな感じだ。

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