第20話 佐久間夕日(さくまゆうひ)
☆
俺は彼女達の事情を知った。
友香に全てを託した。
託したっていうのはクッキーだ。
家で彼女達によく出しているおからクッキー。
「...頑張れ。幸奈」
そう言いながら俺は窓から外を見る。
すると...誰かから電話が掛かってきた。
その電話番号の履歴を見る。
そして電話に出た。
「またお前か」
すると相手は『また?ですか』と言葉を発した。
また?ですか、とは何だ。
お前は佐久間陽菜だろう。
そう思いながら俺は「お前は佐久間陽菜だろ」と言う。
だが相手は予想外の事を言った。
『確かに私は佐久間ですが佐久間陽菜。お姉ちゃんでは無いです。この回線は尾根ちゃんと一緒に使っています。もしかしてお姉ちゃんに会ったんですか』
「...佐久間夕日っていうのは妹か。...何の用事だ」
『はい。端的に言いますとエレメンタル・ツリーを抜けたいのです。...それで協力を求めに貴方に電話しました』
「は?メンバーから抜けたい?どういうこった」
『...エレメンタル・ツリーのやり方。そしてマネージャーのやり方。それから社長やみんなのやり方が気に入らないです。だから抜けたいんです』
「...すまないがお前がそう言っても信頼できない」
そう言いながら俺は「お前の提案に乗れない」と断った。
すると佐久間夕日は『私が抜けた場合。貴方に全ての情報を渡そうと思います』とまさかの言葉を放った。
俺は「!」となりながら「どういう意味だ」と言う。
佐久間夕日は『簡単です。...トレードです』と言い出した。
『...私が抜ける手伝いをしてくれたらエレメンタル・ツリーの秘密とか全部教えます。私にとってはそれぐらい抜けるぐらいなら容易い』
「...」
『どうしますか』
「...1つ質問しても良いか。何故それは俺なんだ」
『貴方は業界の中でも相当デカい存在になりつつあります。だってそうでしょう。霧島幸奈が惚れたぐらいです。...世界中で有名なアイドルが貴方に。何故全てが貴方なのか分かりませんが間違いなく芸能界では有名です。貴方を探していますよみんな』
「ただの一般人の弱い男だぞ俺は」
『後藤のせいとかですね。何かあの人が色々と調べた結果です』
「...」
俺はその言葉に「...」となる。
それから俺は「...分かった」と言った。
そして「俺は何の知識も無いが。先ず何をしてほしいんだ」と聞いてみる。
すると『事務処理とかは私の出番ですが。他の説得は貴方に任せます。...例えばお姉ちゃんに接触するとか』と言う。
「...俺アイツに会いたく無いんだが」
『それは分かります。ですが私じゃどうしようもないですので出来れば助けて頂きたい』
「...しかし...」
『お願いです。私はこんな腐った場所に居たくない。見捨てないで下さい』
「...分かった。じゃあ何とかする」
『有難う御座います』と言ってくる佐久間夕日。
俺はその言葉に「...だがほぼ全部お前がやらないといけないと思うんだが」と言う。
すると『1つ1つかやっていきます。...私はどうせモブアイドルですから抜けても問題は無いです』と話す佐久間夕日。
そんな言葉に考え込んだ。
『私は正義も悪も通用しないこの場所が嫌いだ』
「...」
『アイドルの本質を忘れています。だから嫌いです』
「...」
『素直にやれないですかね?幸奈さんが恋をしているのを応援するとか』
「まあ...アイドルの業界の話は分からん。だけど お前が言うならそうなのかもな」と俺は返事をする。
それから目の前のカーテンの奥を見る。
曇り空だ。
何というか何か起こりそうなでは天候ではある。
「...なあ」
『はい』
「...お前の姉ちゃんはなんでそんなに狂っているのか分かるのか」
『...嫉妬でしょうね。多分ですけど。上手くいかないでイライラしているのもあるでしょうけど』
「...あー。成程な」
『だけどそれで八つ当たりするのはおかしいですしね。絶対に』
姉がまともじゃ無くてコイツがまともとは。
いかにもアイドルの大変さが分かるな。
そう思いながら俺は佐久間陽菜の事を思い出す。
アイツは結構いかれていた様な感じだ。
「...お前は姉が嫌いなのか」
『嫌いとは言えませんよね。家族なので。...ですがやり方は嫌いです』
「...アイドルの業界は大変なのか」
『死に物狂いですよ。...一部ですが迷惑なエロ活動とかそういうのに行く人も居たりしますし』
「...」
俺は考え込みながらスマホを置く。
それからスピーカーにした。
持っているのが何となく苦痛に感じたから、だ。
そして「...お前も大変だな」と言う。
『まあ大変ですけど全てが全てが全て呪われている訳じゃ無いです。だから楽しい部分もあります。...輝プロダクションと違ってこっちは規則で恋愛禁止だったりしますが』
「そうか」
『すいません。話が脱線しましたが。...という事で頼みます。貴方しかこういう事を頼める人、居ないので』
そして佐久間夕日は『では』と電話を切った。
それから俺は盛大に溜息を吐き外をまた見てみる。
そうしてから俺は電話をした。
相手は...幸奈だ。
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